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パートナーのクラウドシフトを強く後押しする姿勢を示した“Partner Day”

変革するマイクロソフト、年次イベント「FEST 2015」開幕

2015年09月03日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 9月2日、日本マイクロソフトのプライベートイベント「FEST 2015」が東京で開幕した。4日まで開催される。パートナー企業を対象とした初日のキーノートでは、平野拓也社長がクラウドビジネスへのシフトを訴え、マイクロソフトとしての支援策も説明した。

日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野拓也氏。初日キーノートでは、来場したパートナー企業に対しクラウドシフトを呼びかけ、マイクロソフトとしての支援策を語った

 FESTは、同社が従来開催してきた「The Microsoft Conference」「マイクロソフト ジャパン パートナー コンファレンス」「Microsoft Dynamics Forum」を統合/発展させた、新しい年次イベントである。開催日により「Day1|Partner Day」「Day2|Business Day」「Day3|Technology Day」と、対象来場者が異なる(関連記事)

「変革するマイクロソフト」をあらためてアピール

 初日(Partner Day)のキーノートに登壇した日本マイクロソフト社長の平野拓也氏は、まず昨年度(2014年7月~2015年6月期)の同社ビジネスと市場の動きを振り返った。

 前年のWindows XPサポート終了に伴う“PC特需”のような動きこそなかったものの、2015年度は「クラウドビジネスの加速」「Windowsデバイスへの高い関心」「顧客からマイクロソフトへの評価、期待の高まり」という変化があったという。

 そして今年度(2016年度)は、日本マイクロソフトとして「プロダクティビティとビジネスプロセス」「Windows 10+デバイス」「インテリジェントクラウド」という3つのポイントにフォーカスし、注力していきたいと平野氏は述べた。

 特に、プロダクティビティへの取り組みについて平野氏は、少子高齢化と労働人口減少が大きな課題である日本社会にとって重要な取り組みであると指摘。「『ワークスタイル変革のリーディングカンパニー』として、徹底的に進めていきたい」と語り、「テレワーク週間」における同社の取り組み(関連記事)にも触れた。

日本マイクロソフトが2016年度に注力する3つのポイント。なお「インテリジェントクラウド」は、IoTデバイスと連携するクラウドを意味している

キーノートの中では、同社執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏による最新テクノロジーのデモも披露された。84インチ、4K画質の「Surface Hub」(国内未発表)を使った共同作業、Azure Machine LearningとPowerBIによる店舗売上予測の容易な可視化、Windows 10の日本語対応Cortanaなど

パートナーの「クラウドシフト」を精力的にサポートしていく

 マイクロソフトは、今年7月に米国で開催した「Worldwide Partner Conference 2015」において、パートナー企業のクラウドビジネスへのシフトをサポートする新たな施策群を発表している(関連記事)。アマゾン(AWS)やグーグルといった競合の動きとは逆に、パートナー経由での販売をより強化していくのがクラウド市場における同社の戦略だ。

 平野氏は、クラウドシフトに成功したパートナー企業の売上や利益が、そうでない企業よりも早く、大きく増加しているというIDCの調査データなどを示し、パートナーに対してクラウドビジネスへの移行の重要性を訴えた。

 「クラウドは、皆さん(パートナー)にとってもそのビジネスモデルが課題である一方、顧客が皆さんに解を求めるシーンも多くなる」「マイクロソフトとしても、収益性が高く、インパクトのあるビジネスモデルをパートナーの皆さんに提供し、共に変革を推進していかなければならない」(平野氏)

クラウドビジネスの売上が過半を占めるパートナーは、売上増加率がより高く、利益の増加スピードも早い(IDCデータ、グローバル統計)。また、マージンの高いマネージドサービス、パッケージソフトのクラウド化も、推進のために支援していく方針

 昨年度、マイクロソフトでは1年間で新たなクラウドパートナーを1000社増やした。平野氏は「今年度もそのくらい(1000社)増えるのではないかと見ている」と述べ、合計で3500社という目標達成のために「パートナーのクラウドビジネス立ち上げ支援」「販売重視から利用価値重視へ」「アプリケーションのクラウドサービス化による差別化」という3つの施策に注力していくと語った。

2016年度のパートナー向け注力施策。パートナーのクラウドシフトを強力に推進していく

競合他社とは逆に、パートナーエコシステムを拡充していく

 キーノート終了後に開催されたプレス向けラウンドテーブルでは、パートナービジネスを統括する同社 執行役常務 ゼネラルビジネス担当の高橋明宏氏が、クラウドシフトに向けた新たなパートナー施策の詳細について説明した。

日本マイクロソフト 執行役常務 ゼネラルビジネス担当の高橋明宏氏

 高橋氏は、マイクロソフトではパートナーと共にクラウドビジネスのエコシステムを作り上げていく戦略をとっており、そこが競合のAWSやグーグルとの大きな違いであると説明した。前述したとおり、今年の目標は新規クラウドパートナー1000社の獲得だ。

 「コンペティターはむしろわれわれとは逆に、ダイレクトビジネスへと進んでいる。だが、一時的にはそうした“ブーム”を作ることはできるかもしれないが、一社がすべてのエンドの顧客を管理できるとは思わない。そこで、パートナーと共にエコシステムを作り上げていく戦略をとっている」(高橋氏)

 そうしたエコシステムを構築するためには、既存のパートナーだけでなく「Cloud Readyな」新しいパートナーも獲得していく必要があると高橋氏は語る。

 特に、マネージドサービスとして提供が可能なホスティング事業者や、パッケージソフトのクラウドサービス化が可能なISVの獲得に注力しているという。「欧米と比較して、日本ではISVパートナーがクラウド転換していない。マイクロソフトのクラウドパートナーとしても、ISVの比率はまだ少ない」(高橋氏)。そのために、CSPプログラムの拡充など新たな施策もスタートしている。

 「(CSPプログラムを)簡単に言うと『クラウド時代のOEMライセンス』。パートナーが持つソリューションに、マイクロソフトのサービス、たとえばOffice 365などを組み合わせて、1つのサービスとしてパッケージ化し、顧客に提供できる」(高橋氏)

 さらに、これまで競合のクラウドサービスを扱ってきた企業へのアプローチも強化している。今年のFESTには、そうしたパートナーも含め、昨年の4倍強となる120社の新たなパートナーが来場していると、高橋氏は説明した。

 「もちろん、これまでオンプレミスや再販をビジネスの中心としてきたパートナーは、利益のバランスを取りながらクラウドシフトを進めていかなければならない。マイクロソフト自身も、同じようなチャレンジを強いられている。ただ、ここで立ち止まれば取り残されてしまうという危機感は、どのパートナーにもある」

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