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仮想化の最先端を追う!VMworld 2015レポート 第3回

コンシューマーのシンプルさとエンタープライズのセキュリティを両立

Windows 10を取り込むヴイエムウェアのデスクトップ戦略

2015年09月02日 10時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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サンフランシスコで開催されている「VMworld 2015」2日目の基調講演は、EUC(End User Computing)分野の戦略と製品の紹介が行なわれ、Windows 10への対応を発表。コンシューマーのシンプルさとエンタープライズのセキュリティを両立をアピールした。

EUCとSDDC・クラウドをつないだ一気通貫の環境

 EUC部門のエグゼクティブバイスプレジデントのサンジェイ・プーネン氏の講演は、2020年には世界の人口の80%がスーパーコンピューターと同じ処理能力のデバイスを持つという「Economist」の特集の紹介からスタート。コンシューマ分野では、すでに生活のためのリモートコントロールがスマホから行なわれており、今後は仕事のやり方も大きく変わってくると指摘した。こうした中、コンシューマレベルのシンプルさとエンタープライズレベルのセキュリティを両立するのがヴイエムウェアの役割だという。

米ヴイエムウェア EUC部門 エグゼクティブバイスプレジデントのサンジェイ・プーネン氏

 ヴイエムウェアでは「VMware Workspace Suite」と呼ばれる統合型デスクトップ製品で、「Any Application,Any Device」という同社のコンセプトを実現している。「Horizon」ブランドのデスクトップの仮想化やエンタープライズ アプリケーション ストアを含む「Workspace Portal」、モバイルデバイス管理を行なう「AirWatch Enterprise Mobile Management(EMM)」、そしてコンテンツ管理とコラボレーションを提供する「AirWatch Content Locker」などを統合しつつ、「Identity Manager」でセキュリティとシンプルな使い勝手を提供する。「7年前、当時CEOだったポール・マリッツがWorkspace Suiteの概念を発表した。現在、それが実を結び、デスクトップ、モバイル、コンテンツ、コラボレーションを統合したスイートとなっている」(プーネン氏)。

Any Application,Any Deviceを実現する「VMware Workspace Suite」

 また、モバイル管理の分野でAirWatch EMMでデバイスやアプリケーション、コンテンツ、ID、メールなどを一元的に管理する。ここではデバイス管理にとどまらず、アプリケーションレベルまで、きめ細かなセキュリティポリシーを設定できるのが売り。そして、これらEUCの環境は仮想化されたインフラであるSDDCやクラウドと接続され、一気通貫のコンピューティング環境を実現している。これがヴイエムウェアの提供するEUCの全体像だ。

Windows 10もモバイルデバイスと同じ管理が可能に

 現在、同社が取り組んでいるのが、対応プラットフォームの拡大だ。最近では、競合であるシトリックスのXenAppでの利用とヴイエムウェアとの利用も可能になっているが、今回はマイクロソフトのWindows 10との連携がアピールされた。さまざまな分野で競合しているマイクロソフトだが、基調講演ではマイクロソフト Windows And Enterprise Security部門のバイスプレジデントであるジム・アルコーブ氏が登壇し、聴衆を驚かせた。「ベルリンの壁が壊れたときのレーガンとゴルバチョフのようだ」とプーネン氏はアピールする。

マイクロソフト Windows And Enterprise Security部門 バイスプレジデント ジム・アルコーブ氏

 アルコーブ氏はWindows 10に関して、「コストを抑えたい、イノベーションについていきたいといったCIOの声を受け、ITをシンプルにするのが価値」と説明。また、セキュリティを確保したいというニーズから、Windows 10ではIDやデータ、デバイスの保護に取り組んだという。今回、AirWatch Enterpirse Mobile Management(EMM)ではWindows 10に対応し、モバイルデバイスと同じような運用・管理が可能になった。プーネン氏は、「Windows 10に最適な世界を提供していくのがわれわれの役割」と語る。

Windows 10とVMwareの相思相愛ぶりをアピール

 EUC部門 CTO兼バイスプレジデント、プロダクトマネージャーのノア・ワスマー氏は、EMMでWindows 10のデバイスをiOSやAndroidのデバイスと同じように管理するデモを披露。また、AirWatchと「App Volumes」の組み合わせにより、物理マシンへのアプリケーションプロビジョニングを可能にする「Project A2」のデモも行なった。レガシーのWindowsアプリケーションをスタック化し、SystemCenterのアプリケーションリポジトリに登録。物理マシンに対しても、これらをデプロイすることも可能になった。「家にあるマシンでもコンプライアンスに従ったアプリケーションがすぐにデプロイできるようになった」(ワスマー氏)。

物理マシンにおいてもモバイルデバイスと同じプロビジョニングを実現

Project A2は現在テックプレビューの段階

 ワスマー氏は、サムスンのエントリ向けスマートフォンにビジネスアプリケーションをデプロイしたり、3DグラフィックをSurfaceから操作するといったデモも披露。最新のVMware Horizon 6.2においては「Skype for Business」や「NVIDIA GRID vGPU」に対応することも発表された。

レガシーのWindowsアプリケーションにおいても、vGPUによるレンダリングでなめらかな描画を可能にした

 これら多種多様なデバイス、さまざまなアプリケーションのIDはSaaS型のIdentity Managerから一元的に管理できる。サインインすれば、ポリシーにあわせてアプリケーションを利用できる環境が迅速に提供できるという。

 さらにワスマー氏は、NSXと連携したEUCのセキュリティ強化にも言及。NSXでセキュリティポリシーを割り当てたマイクロセグメンテーションを設定することで、ユーザーごとに異なるアクセス権限を適用できるデモを披露した。「コンプライアンスに合わない、ファイアウォールの外に行ってしまった場合など、特定のデータやサイトにアクセスできなくなる。まさにコンシューマーのシンプルさとエンタープライズのセキュリティを実現している」(ワスマー氏)。

 EUC分野での新しい取り組みをデモを踏まえて紹介したプーネン氏。「ユーザーに素晴らしい体験を提供したい。シンプルなエキスペリエンスを、信頼できるインフラで実現する」と語り、壇上から去った。

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