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社内実践を通じて、2015年度内に製品化へ

NTTデータ、自社IT基盤の保守運用業務にスマートグラス活用

2015年09月01日 09時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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 社内IT基盤の保守運用業務にウェアラブルデバイスを活用する――NTTデータが8月31日、発表した。スマートグラスを用いる「遠隔作業支援システム」を開発・検証し、その実用性が認められたという。今後、社内での実運用を通じて、2015年度中のソリューション提供をめざす。

 データセンターなどでの保守運用作業は、一般的に現場作業者と作業確認者の複数名で行われる。複数人で「ダブルチェック」することで、作業の的確さを担保しているのだ。ただ、その場合も確認者が現場に赴いて作業結果を確認しなければならない。また、現場作業者は両手がふさがることも多く、マニュアルなどを確認するために、一度作業を中断しなければならないなど、効率性に問題があるという。

 NTTデータが開発したのは、スマートグラスを用いてこれらの課題を解決する「遠隔作業支援システム」だ。現場作業者がスマートグラスを装着し、画面に表示されるタスクやマニュアルをみながら、ハンズフリーでの作業を実現する。音声で本部とコミュニケーションを取りながら、カメラで撮影した写真や映像を共有することで、リアルタイムに作業指示を受けられる。本部からは映像にマーキングして具体的な作業箇所をリアルタイムに指示するなど、現場作業が劇的に効率化される。

タスク管理。スマートグラスのタスクが順番に表示される。「タスク完了」と発声すると完了通知が本部に届く

スマートグラスのカメラで撮影した証跡写真を確認者へ共有可能

電子マニュアルをハンズフリーで閲覧可能

共有している映像に本部からマーカーで具体的な指示が送れる

 現場作業ではハンズフリーの要望が強い。そのため、同様のシステムは他社からも提供され、市場でその価値が認められつつある。そんな中、NTTデータのシステムは「直感的なUI」「マルチデバイス対応」「多対多の作業者・確認者の紐付け」などが特長になるという。

 「直感的なUI」としては、スマートグラス内で「音声」「ジェスチャー」「ジャイロマウス」という3種類の方法でメニューを操作できる。「音声」はメニュー内容を発声することで操作可能。「ジェスチャー」では首の横振りでマニュアルのページ送りなどができ、「ジャイロマウス」では首を上下左右に動かすことで、マウスポインタを操作できる。

 「マルチデバイス対応」では、ウェアラブルデバイスだけでなく、スマートデバイスもサポート。作業内容によっては入力しやすいタブレットを利用できるという。

直感的なUIを搭載

利用シーンに応じたマルチデバイス対応

 「多対多の作業者・確認者の紐付け」については、「作業開始から完了までのすべてのタスクをカバーできるのが、このシステムの特長」(同社)と説明し、「作業完了後に確認者が現地に赴く必要がなくなる。確認者一人で複数の現場作業者を指示・誘導できため、、現場作業者は初心者でも構わず、確認者となるべき有識者の人員確保が容易になる」としている。

 こうした現場作業では技術伝承も課題となっているが、ベテランの作業を動画にしてスマートグラスで再生すれば、初心者の教育もスムーズに行えるという。

機能概要

 NTTデータでは8月上旬から、社内実践を通じて同システムの効果を検証してきた。主にハードウェア交換作業で活用し、「現場と本部でダブルチェックができるか」「初心者でも現場作業ができるか」の2点について、機能的な検証を行った。その結果、「目的をすべて満たした」(同社)ため、社内IT基盤の保守運用業務で正式採用を決めた。

 今後は適用領域を拡大し、検証したハードウェア交換作業だけでなく、遠隔地における環境構築作業、新規導入機器の確認作業などにも利用を進める。また、オフショア開発拠点(中国・インドなど)、海外グループ会社向けシステムの開発・保守運用作業(インド・北米・欧州・中国)においても活用を検討するとしている。

 さらに、9月からユーザー企業に対しての実証実験提案も開始。対象はIT基盤の保守運用業務に加え、ビル・各種装置・社会インフラなどの保守・点検業務、ハンズフリー操作や遠隔支援のニーズが高い企業。その結果を反映し、2015年度内に正式サービスとして提供する予定だ。

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