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新たにUbuntsuやKVMをサポートし、開発クラウドも無償提供

フルOSSユーザーに最適なメインフレーム「IBM LinuxONE」

2015年08月24日 16時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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8月24日、日本IBMはLinux専用のメインフレーム「IBM LinuxONE」を発表した。ミッションクリティカルなアプリケーションのオールインワンシステムを謳い、OSSでの基幹システム開発を促進するという。

基幹システムでのOSS導入を促進する新パッケージ

 IBM LinuxONEは、ハードウェアに同社のzシリーズを採用した基幹システム向けLinuxエンタープライズサーバー。OSSがもたらすオープンイノベーションの価値と基幹システムを支えるテクノロジーを両立するメインフレームの新パッケージになる。発表会では、日本IBM 理事 IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ハイエンド・システム事業部長の朝海孝氏が製品概要とOSSに対する取り組みを説明した。

日本IBM 理事 IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ハイエンド・システム事業部長 朝海孝氏

 IBMは15年前にLinuxに対応し、エンタープライズでLinuxが使用しやすくするための知財や技術をコミュニティに対して提供してきたという。この結果として、IBMメインフレームのうち、すでに1/3以上がLinuxが動作しているという。IBM LinuxONEはこうした実績を元に、「Linux Your Way」「Linux Without Limits」「Linux Without Risk」という3つのキーワードを軸に開発されたという。

「Linux Your Way」「Linux Without Limits」「Linux Without Risk」を掲げるIBM LinuxONE

 「Linux Your Way」は、ユーザーのニーズに応じた幅広い選択肢を表わす。ディストリビューションとしてSuSE、Red Hatに加え、Ubuntsuをサポート。ハイパーバイザーとしてKVMを新たに対応することで、LPAR上でKVMを動作させてz/VMや他のOSと連携させることも可能になった。

 ディストリビューションやハイパーバイザーのみならず、各種言語やランタイム、ChefやPuppet、Dcokerなどの管理ツール・コンテナ、PostgreSQLやMongoDB、MariaDBなどのSQL/NoSQLデータベース、HadoopやApache Sparkなどの分析ツールなど幅広いOSSテクノロジーを自由に選択可能。DockerHubに公開されたLinuxONE用Dockerイメージを稼働させたり、マルチプラットフォーム環境を「IBM Cloud Manager with OpenStack」で統合管理することも可能になる。「1台の中で数万のDockerコンテナを動かすことができる。高度化しているお客様の要求に即座に対応できる」(北村氏)とのことで、仮想化されたインフラを高密度に集約できるのが大きな特徴となる。

さまざまなディストリビューション、ハイパーバイザー、言語、ラインタイム、ミドルウェアで利用可能

メインフレーム上でオープンなインフラ仮想化を実現

 LinuxONEのパッケージ開発においては、Linuxディストリビューターの公式リポジトリのみならず、オープンコミュニティのレポジトリを利用できる。IBMのオープンソース開発チームで開発・ポーティング・テストされたコードはGitHubで管理。テスト済みのパッケージはIBM DeveloperWorksを経て、コミュニティのレポジトリに登録されるため、公式リポジトリを待たずに、新しい技術を導入することが可能になるという。

LinuxONEにおけるパッケージ開発と管理

 2つ目のキーワードである「Linux without Limits」は拡張性の高さを表わす。「予期せぬピークが発生しやすい、複数の処理が連携し始めると、システムのどこかにボトルネックが生じる。期待したスループットが発生しない、ボトルネックに手を打たなければならず、人手を必要とする」(朝海氏)とのことで、LinuxONEではスケールアップだけではなく、スケールアウトも可能で、ボトルネックを解消するという。

 さらに「Linux without Risk」はおもにセキュリティや災害対策、障害検知などの特徴を表わす。従来比で最大28倍というハードウェアでの暗号化を実現するほか、本番・DRサイトとの瞬時の切り替え、システムの自動分析による障害の未然予防などが可能になるという。

ミックスワークロードを他に比べて2倍高速に処理できるLinux without Limits

セキュリティや災害対策、障害検知を実現するLinux without Risk

月額従量課金の制度で、より導入しやすく

 筐体のアクセントカラーをオレンジに変えたIBM LinuxONEのラインナップは2種類。大規模向けと中規模向けのIBM z13をベースとする「IBM LinuxONE Emperor」とIBM zBC12をベースとする「IBM LinuxONE Rockhopper」が提供される。Empererは最大8000台、Rockhopperは最大600台の仮想マシンをそれぞれサポートする。ちなみにEmperorはコウテイペンギン、Rockhopperがイワトビペンギンを意味するという。さらに今回は新たに月額従量課金の制度を導入し、エントリポイントを引き下げた。

IBM z13をベースとする「IBM LinuxONE Emperor」とIBM zBC12をベースとする「IBM LinuxONE Rockhopper」

 今回IBMでは、LinuxONEの展開とあわせて、パッケージを展開しているISVや、メインフレームでの開発に親近感を持たない開発者や学生、そして自社開発を手がける顧客などに対して、自由なアクセスを提供。新しいモバイルアプリケーションやハイブリッドクラウドの接続テストなどを可能にする研究開発環境をクラウドを介して提供することで、オープンコミュニティによるイノベーションを促進する。

 今後IBM LinuxONEを企業向けのクラウド基盤として推進し、既存のIBMメインフレームの顧客はもちろん、OSSがボトルネックになっていたユーザーに対してもアピールしていくという。

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