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ユーザーコミュニティ「kintone Café」活動レポート 第2回

コミュニティ運営の苦労も赤裸々に

kintone×Bluemix対談、エバンジェリストがPaaSの可能性を語る!

2015年08月25日 09時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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 アプリ開発・実行環境をクラウドで提供するPaaSが盛り上がっている。その代表例であるサイボウズ「kintone」と、日本IBM「Bluemix」。両サービスのコミュニティを推進するエバンジェリストの対談が実現した。

 出自や規模の異なる両PaaSにも「コミュニティが活発」「基幹システムのフロントエンドとして利用されている」「API拡充により用途が広がり続けている」という共通点がある。両エバンジェリストはPaaSの可能性をどう思い描くのか。コミュニティ活動の苦労話から、製品への期待まで赤裸々に語ってもらった。

 

ラジカルブリッジ 代表
斎藤栄

 北海道を本拠地とするSI企業の代表で、kintone café 立ち上げの立役者。kintoneに関する小ネタや改善要望、APIのサンプル等を紹介する「kintone ブログ」を自社サイト内で運営。北海道から佐賀県の医療センターのシステムをオンラインのみで構築するなど、kintoneの特性を生かした遠隔での開発も得意としている。


 

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
クラウド・セキュリティ事業推進本部
クラウドイノベーションセンター
原田一樹

 クラウドや機械学習、IoTなどの新技術実証に従事。「PaaS」と「アジャイル開発」を組み合わせたDevOps手法を体系化し、革新的なサービスを企画・開発・運用したい顧客を支援している。Bluemixユーザー会「BMXUG」のコミュニティーマネージャーの1人で、2015年5月のBluemixハッカソンで最優秀賞を獲得した実績を持つ。


エバンジェリストが見据える“PaaSファースト”時代

――それぞれPaaSとの出会いは?

斎藤:NTTデータ、地元札幌のソフト販売会社のシステム開発を経て、3年半前に独立しました。当時はシステムを作ろうとすると何かとコストがかかるのが課題で、独立を機にクラウドを検討しました。名刺に「クラウドおじさん」と書いて、まずはインパクトで勝負したりして(笑)。実際に何をやろうと考えた時に、kintoneにピンときて、これなら課題を解決できると思ったのが出会いです。

原田:私は2010年にCTCに入社して、1年目からクラウドに携わっています。コンサルなどを担当し、当初はAWSを学んでいました。その後も多様なクラウドが登場する中、コミュニティを通じて技術情報が発信されていて。ベンダーの情報ではなく、ユーザー同士の交流から技術情報が磨かれていくのが面白く感じていました。

 そんな折に、IBM InterConnect 2015でBluemixに出会って、これは盛り上がるだろうと、Bluemixに大きくシフトした形です。

――Bluemixのどこに惹かれたのですか?

原田:AWSにしてもAzureにしても、IaaSとPaaSの融合が進んできていると感じていて。エンドユーザーはインフラの面倒を見ずにアプリに集中する、その選択肢としてPaaSが有効で、どうしても要件に合わない時にIaaSでカバーするような、「PaaSファースト」の考え方がくるだろうと思ったのです。

それぞれが描くコミュニティの基本方針

――それぞれコミュニティの基本方針はどういうものでしょうか?

斎藤:kintone Caféは私が札幌で始めました。基本的にkintone Caféという名称を自由に使ってもらってますが、基本理念だけ「初心者も技術者もみんなが参加してみんなで教えあう勉強会」と決めて。kintoneの基礎情報からカスタマイズ事例まで、セミナーとハンズオンを半々で行っています。

――運営はどのようにしているのでしょうか?

斎藤:現在2年目で、昨年は全体をまとめることもなく、理念に共感した人が好きに活動していました。ところが、その中で商売しようとする人が現れて……。そうなるとコミュニティが盛り上がらなくなるので、今年から札幌・東京・大阪の主要メンバーで運営事務局を設立しました。地方でも支部化してリーダーを決めて。ただ、あまりコントロールしてもつまらないので、ゆるく運営しています。

――一方で、Bluemixコミュニティの方針は?

原田:コミュニティ設立が2015年5月で、まだ3カ月ほどの活動ですが、IBMからの情報発信だけではわかりにくい、Bluemixの課題を浮き彫りにしていくのがポイントです。

 PaaSは便利なのに、なかなか導入が進まない。背景には「挫折ポイント」がいくつもあるんだろうなと考えていて。「よくわからない」といった声に対して、実際に触っている人たちが「課題」と「こんな風に解決した」という情報を発信できれば、もっと盛り上がるだろうと。

――具体的にはどんな活動をしていますか?

原田:BluemixにAPIを提供する企業やBluemixユーザーに有志を募って月次勉強会を開いています。9月2日に開催されるユーザー会主催のイベント「SoftLayer Bluemix Summit2015」の運営に携わっています。その基調講演では、先月応募を締め切ったアプリ開発コンテストの「IBM Bluemix Challenge 2015」の結果発表を行うほか、受賞者のデモや技術構成の説明会などを計画しています。

コミュニティをユーザーで主導する難しさ

――コミュニティ運営で苦労されることも多いのでは?

斎藤:先ほどのコミュニティでお金儲けしようとする話もそうですが、やっぱり色々な考え方の人がいるなあと感じます。どう運営するかという所からバラバラで、経験があれば空気感も分かりますが、未経験の人だと距離感がずれたりします。

――そういう意味では、Bluemixはいかがでしょう。IBMだとコミュニティ経験者も多そうですが?

原田:そうなんですけど、コミュニティの運営メンバーが多忙でフットワークが重い面もあるので、フットワーク軽くコミュニティを能動的に運営できるメンバーが不足しています。そのためイベント開催日や会場選定、集客などを含めたコミュニティ運営をIBMにもかなり支援してもらっています。本当は自分たちでやっていくべきなので、早く事務局だけで運営できるようにしていきたいです。

斎藤:そうですね。コミュニティはやっぱりユーザー主導が理想なので。kintone Caféも、サイボウズからの支援はありますが、あくまで必要なときだけお願いしますくらいの温度感です。事務局という形で組織化していくと、機能的にも足りないという意見がたくさん出るようになる。それがサイボウズ側にも伝わって、ちょっとした“圧力団体”のようになる。

一同:(笑)

――そういう関係が理想なんですね。

斎藤:やっぱり、口コミ的に、ファン側が「これはいいよ」と広める方がやりやすいですね。

斎藤氏

――そういった関係構築は、Bluemixではこれからですかね。

原田:そうですね。まだ事例が少なくて、本番環境のユーザー事例が増えれば、よりリアルな現場の話も出てくる。本当に盛り上がるのはそれからだと思います。

斎藤:ちなみに、(Bluemixコミュニティの)活動はまだ東京限定ですか?

原田:第2回・第3回は名古屋と大阪で開催しました。ただ、主催者が東京から訪れる形で、現地で支部が立ち上がるまでには至っていません。エバンジェリスト的な人が現地に行って、「ザビエルが日本に来たぞ」みたいな(笑)。

 なので斎藤さんにはぜひ、事務局運営のコツをお聞きしたいんです。ベンダーとの距離感や、運営はどんなメンバーなのかとか。開発者が多いですか?

斎藤:運営メンバーはこれで食べているので、プロの人たちですね。SIerやPCに詳しい人や。鹿児島支部にちょうどそんな感じの女性がいます。

原田:そういう方々はどうやって集めたんですか?

斎藤:最初はサイボウズ側でエバンジェリスト候補を集めて、東京で出会って、という流れです。例えば、私は札幌で活動していますが、東京在住の方の奥さんが釧路出身で、夏に帰省するので釧路で勉強会しませんかという話になったり。同じ北海道でも遠いので、「釧路まで行くのか?」と思ったり(笑)。そんな人との繋がりを大事にして、ツーカーの関係になっていった感じですね。

原田:そうした出会いから、自然と各支部が立ち上がっていった?

斎藤:事務局ができた時点でSNSで告知して、そこから支部を立ちあげたいという人が出てきました。そこは言ったモン勝ちなので、ぜひ立ちあげてくださいと。

――Bluemixでは各地域に広げていくのに手こずっている感じですか?

原田:そうですね。支部をどう立ち上げるかというのは課題としてあります。SoftLayerのコミュニティでもそこは苦労していて。

斎藤:我々の場合、全国各地でkintoneの情報を発信しているっぽい人を東京に集めて、「エバンジェリストになってください」なんてやりましたよ。

原田:なるほど。9月2日にBluemix Challengeの表彰があるので、そのタイミングで捕まえるとかですかね(笑)。

(→次ページ、各PaaSの第一印象と足りないところ

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