神戸大学らの研究グループは8月4日、ムラサキシジミの幼虫が分泌物を使ってアリを使役、護衛として利用しているとの研究結果を発表した。
ムラサキシジミチョウの幼虫は身体から甘い物質を分泌し、分泌物を食べたアリは巣に戻らず幼虫の周囲にとどまり、これらのアリが他の虫を攻撃することで幼虫は天敵に捕食されにくくなる。
このような共生関係は他の昆虫(アリマキなど)でも見られるが、蜜による報酬と護衛という形で相互利益のある相利共生と思われていた。しかしアリは他の餌を探すことができるのに、ムラサキシジミの幼虫はアリがいないと無防備になり、不自然なまでに利益が偏っている。
神戸大学大学院理学研究科の北條賢特命助教と琉球大学、ハーバード大学の共同研究グループは、幼虫がアリを引き止めるためのなんらかのメカニズムを持つと考えて研究を行った。その結果、分泌物を摂取したアリは歩行活動が減少して幼虫の近くに長くとどまり、しかもより攻撃的になることが分かったという。さらにアリの脳内物質を調べたところ、さまざまな活動を調整するドーパミン量が減少していることが判明した。
また、ムラサキシジミ幼虫には触手状の突起を持ち、突起を伸ばすとアリはより攻撃的に動きまわるといった行動も観察されており、幼虫が化学的・視覚的な刺激で積極的にアリを操っているとも考えられるという。
本研究は論文誌「Current Biology」に発表され、これまで相利共生と考えられてきた関係を覆す発見に大きな反響が上がっている。研究者からは「蜜の栄養が十分であればアリにとっても利益があるはず」といった声も寄せられているという(アリにとっては巣の利益が100%だと思うのだが)。