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僕らが知らないGoogle マップ 第4回

「その時に最適なもの」を見せる世界へ

Google マップが目指す「近未来」とは?

2015年08月05日 09時00分更新

文● 西田宗千佳 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

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地図サービスの開発を担当している、グーグル シニア エンジニアリング マネージャーの後藤正徳さん

 短期集中でお届けした本連載も最終回。最後のテーマは「未来」。スマートフォンも定着し、地図サービスとしてのGoogle マップも、そろそろ次の段階にさしかかろうとしている。スマートウォッチや車など、搭載される機器も広がろうとしているし、地図そのものの役割も広がっている。

 Google マップが目指す「先」とは、どんなものになるのだろうか? 現在の動きなどについて、グーグル シニア エンジニアリング マネージャーの後藤正徳さんに聞いた。

快適な情報のためには「地図の形」すら捨てる

 Google マップの近未来、ということですぐに思い浮かぶのは「新しいデバイスへの対応」だ。

 Android Wearに代表されるスマートウォッチは、スマートフォンと連携するため、位置情報・地図情報が重要になる。歩行ナビゲーションの際、スマホではなくスマートウォッチ側が通知を出したり、ちょっとした地図をスマートウォッチ側に出したりすることで、「歩きスマホ」の危険性が減る。自動車向けの「Android Auto」では、カーナビ的な要素との関連が考えられる。その辺りはどうなのだろう?

カレンダー上の次の予定や、次の訪問場所にあわせて出発時間や交通情報を表示する、Google Now

 例えば、Google Now。グーグルの各種サービスを連携し、利用者に情報を通知してくれる機能だ。Google カレンダーに次の予定とその場所を入れておくと、現在いる位置から逆算し、「予定に間に合うように出るべき時間」を通知してくれる。スマートウォッチをつけて入れば、「間に合うように出るには、あと15分後に出発すべきです」的な通知を、腕に送ってきてくれる。

 一見地図と関係ないもののように思えるが、冷静に考えると、これは「地図からの派生サービス」そのものである。Google マップの備えているナビゲーション機能でわかる「移動時間と経路」の情報から逆引きし、人に「いつ出るべきか」を伝えているからだ。

 後藤さんは、明確な次のビジネスに対する回答は避けたものの、Google マップ開発部隊が考えていることを、次のように説明した。

後藤さん(以下、敬称略) 「おっしゃる通り、Google Nowの使い方は、新しいマップ情報の活かし方そのものです。ウェアラブルだと画面が小さいですから、情報の活かし方が変わってきます。そういうものに向けてどのようなデザインにすべきか、ということは、ケースごとに検討を進めている最中です。

 アメリカでは自動車向けの『Android Auto』がありますが、こちらも使い方が全く異なります。自動車に乗りながら使いますから、今までと違ってボタンは大きくなければいけないです。そういうところから始まっていますが、その先では、グーグルが持っている膨大なデータ、地図情報だけでなく地域情報もありますが、そうしたものを『どう見せるか』が重要になります。

 例えば、車を運転している時と、単に地図を見ている時とでは、欲しい情報が異なっています。データの部分から見せ方まで、エンド to エンドで考えて、世の中の使われ方に合わせていく必要があります。迷ったら簡単に探せるようにしなければいけません。探さなくても教えてくれるのがベストですよね? なかなかそこまでうまくはいきませんが。

 究極は、人と場所をどう簡単につなぐか、ということです。デバイスが変わったら、それに合わせた追求をしていきたいです。デバイスの進化とそこへの最適化は、サービスにとってジャンプの機会でもあります。しかし、すべてにひとつひとつ対応していくのは難しい。いかに集約し、それを各デバイスに最適化して出すか、ということを考えています」

 第一回の記事「最初のGoogle マップの世界はアメリカとイギリスだけだった!?」で説明したように、現在はグーグルで検索される情報のうち、5分の1にはなんらかの形で場所の情報が含まれており、モバイル機器からのトラフィックとなると、30%が場所に紐付いたものになっている。例えば「駐車場」というキーワードで検索した場合でも、人は「駐車場」という言葉の定義を知りたいわけではない。自分の近くにある駐車場の情報を知りたいのだ。自動車に乗っていれば、止めるべき駐車場を知りたいのだろうし、駐車場内を歩いているなら、駐車場からの出口を知りたいのかもしれない。そうした人間の求めているものを、使う機器や人間の振る舞いから判断し、より適切な情報を出すのが、グーグルが目指す方向性と言える。

 「地図は、普段見るマップ形式のビューだけを指すものではない。位置に紐付いた情報は、Google マップがなければわからない」と後藤さんはいう。

 すなわち、グーグルはGoogle マップを「地図を見るもの」ではなく「位置情報を司るサービス」と考えており、各機器やサービスでの活かし方も、決まったものは存在しない、ということなのである。考えてみれば、カーナビの、いわゆる「ターン・バイ・ターン」ナビで行き先を指定される時には、「次にどこで曲がるか」だけが表示される。矢印のついた直線で示されているわけで、この場合、二次元だったナビ地図が「一次元の線になってしまった」ということもできる。

 グーグルが行いたいのは、地図やローカル情報を溜め込むだけでなく、それを処理し、その時々に応じて適切な形で見せる「処理の過程」なのだろう。そうすることによってグーグルは、彼らの目的通り、あらゆる情報を整理するための存在になりうる。

 「みなさん今はいろいろなデバイスを持っていますから、その時に応じて、ユーザーに近しくて便利なものにしていけるか、というルールの元に開発を進めています」と後藤さんは説明する。


(次ページ「過去情報の価値を教えてくれた「未来へのキオク」」へ続く)

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