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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第131回

Nokiaがスマホに再参入……はあり得るのか? 否定はせず

2015年07月22日 17時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII.jp

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 昨年春にデバイス事業部をMicrosoftに売却したNokia。Microsoftがこの買収を“失敗”と認める評価損の計上を行う一方で、フィンランドに残ったNokiaは端末事業に再参入するという憶測が絶えない。

 実際、Nokiaに残る3事業のうちの先進技術を受け持つNokia TechnologiesはすでにAndroidタブレットをリリースしており、広報担当にスマートフォンの可能性について聞いてみたところ、否定しなかった。

Nokiaのオフィスに行くと、創業150周年を記念するポスターやマットが置かれている。Nokiaは明治維新より前に製紙業でスタートしているのだ

ブランドライセンスで実現した
NokiaのAndroidタブレット「N1」

 Microsoftにデバイスとサービス事業を54億4000万ユーロ(約7350億円)で売却した後のNokiaは、おもしろい動きを見せている。その取引完了から1年も経たないうちに、NokiaはAndroidタブレット「N1」を発表、2015年1月末に中国で販売を開始した。主力のネットワークインフラでは、Alcatel-Lucentの買収を発表している。

 Nokiaのデバイス戦略はブランドライセンスだ。つまり、Nokiaが端末(ハードウェアとソフトウェア)の設計を行ない、製造とサプライチェーンは他社と組む。N1ではFoxconnと手を結んだ。2月末のMWCのブースにいたNokiaスタッフは、「市場のAndroidタブレットはどれも似たり寄ったり。タブレットがどうあるべきか、Nokiaの考えを示した」と説明してくれた。

 iPad Miniと同程度の7.9型の画面を持ち、「シンプルかつエレガント」なデザイン、そしてホームスクリーンでは「Z Launcher」が特徴となる。中でもZ Launcherは学習能力があり、サービスの最初の文字を画面に書くだけで(指でFと書くとFinancial Timesなどアプリやサービスの候補が表示される)、使いたいアプリにアクセスできる。

Nokia N1ではZ Launcherで「F」と書くとFがつくアプリやサービスを表示、素早くアクセスできる。

 N1については2つの疑問があった。なぜAndroidなのか、なぜWiFiオンリーなのか。この疑問をNokia Technologiesのトップを務めるSebastian Nystrom氏に聞くと、「自分たちがやりたいタブレットを実現できるのはAndroidだったから」といった答えが返ってきた。Androidの充実したエコシステムも無関係ではないだろう。

 Wi-Fiオンリーである点については、市場を見たところセルラー搭載タブレットのニーズは少ないと判断したとのこと。Microsoftとの契約が制限になっているわけではないという。N1は最初に中国で発売されたこともあり、約250ドルという価格も重要な差別化となる。価格を優先させてLTEを削ったとも考えられる。

スマートフォンの可能性は
……少なくとも否定はしなかった

 さて本題に入ろう。Nokiaからスマートフォンが登場する可能性はあるのか? Nystrom氏は否定しなかったが、それ以上は語らなかった。Nokia Technologiesの広報担当Robert Murlino氏に同じ質問をしてみると、Microsoftにデバイス事業を売却した際の契約から、Nokiaはスマートフォンを2016年末までは提供できないと前置きしながら、「2016年末になれば、その選択(Nokiaがスマートフォンをブランドライセンス形式で提供する)を考慮できるようになり、この可能性を模索するだろう」と語った。

Nokia Technologiesの広報担当Robert Murlino氏(左)。Google出身だ

 いずれにせよ、まだ1年以上先のことであり、この間に市場がどのように動いているのかにもよるが、否定しないところをみると、その可能性はありそうに見えた(なお、同じ質問をネットワーク部門の幹部にすると否定的な回答だった)。

 Murlino氏によると、デバイスとサービス事業はMicrosoftに売却したが、MeeGoを搭載した「N9」スマートフォン開発に関わった開発者(メインのチームはJollaを立ち上げている)や、CTOオフィスとして先進技術を担当していたチームはいまでもNokiaに在留しているとのことだ。Nokiaはフィンランド・エスポーに本社を構えるが、Nokia Technologiesの本拠地はシリコンバレーにある。


(次ページでは、「150年の歴史の中ではデバイス事業売却も歴史の1コマにすぎない!?」)

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