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世界初、THX認証取得HDMIケーブルをリリース

HDMI専業のKordzが追求する、実直なケーブル作り

2015年06月26日 09時00分更新

文● ASCII.jp

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4K映像を正確に伝送できているかの基準が存在しなかった

 まずはHDMIケーブルにおける、THX認証とは何かから。

 AV機器ではHDMI経由で4K映像を伝送できる製品が増えている。4K映像はフルハイビジョンの4倍、つまり3840×2160ピクセル(2160p)の情報を持つため、ケーブルにもより多くのデータを安定して伝送する能力が求められる。

 HDMI 1.4では最大1.485GHz、HDMI 2.0では2GHzを超える帯域が確保されているが、ひとくちに4K解像度と言っても、フレームレート(24p/60p)、色深度(8/10/12/16bit)、クロマサンプリング(4:2:0/4:2:2/4:4:4)などが異なる様々な仕様が存在する。合計すると実に11種類に上る。

Kordzの資料から

 このうちHDMI 1.4で伝送可能な4Kフォーマットは4種類。残りの7種類がHDMI 2.0がサポートするものとなる。しかし、これまで市場に出回っているケーブルではこのすべてが伝送できると保証されているわけではなかった。THX認証は、これを検証する業界初のテストであり、そしてこれをいち早くパスしたのがKordz製のケーブルなのだそうだ。

なぜデジタル伝送なのに画質に影響が出るのか

 ではなぜこうしたテストがHDMIケーブルでも重要になるのだろうか。

 ひとつはプレーヤーから映像機器に正確な色情報を伝えるために必要だからだという。「ケーブルで画質が変わる」と書くと首をひねる読者も出てきそうだが、理屈としては以下のとおり。

 まず、HDMIはデジタル伝送だが、実はやりとりするデータのうち、HDMI 1.4では50%、HDMI 2.0では実に70%が、エラー訂正のためのビットだという。つまり、HDMI 2.0が伝送する情報のうち実際のデータは30%しかないそうだ。

 デジタル信号といっても、伝送の途中で信号が減衰して情報が欠落する場合はある。エラー訂正はそのために使われる仕組みで、特定のビットが抜け落ちても演算によって正しい情報を補完できる。テレビなどの映像機器では、エラー訂正用のビットを使い、常にデータを復元する処理が走っている。

 しかし、伝送ロスの度合いが強くなると、エラー訂正のための処理が追いつかなくなるケースも発生する。この際、映像機器の側では、映像が途切れないようにすることを優先し、スムージング処理(つまり適当な値を当てはめて)を施して出画することになる(JPEGの圧縮をイメージすると分かりやすいかもしれない)。

 HDMIがデジタル伝送であるのに、ケーブルによって画質が変わる根拠はここにあるそうだ。つまり伝送のロスが生じなければ、より正確なデータが伝わり、ぼけのない緻密な映像表現が可能になるわけだ。

なぜデジタル伝送なのに画質に影響が出るのか

 THXのコンセプトは劇場の臨場感や鮮度を家庭でも楽しめるという点にある。そのためにTHXは薄型テレビやプロジェクター、あるいはその上流にあるAVアンプやBlu-ray Discプレーヤーといった機器をTHX認証あるいはTHX認定の機種として評価してきた。しかし、仮にTHXの基準を満たすAVアンプやテレビがあっても、その間にあるケーブルで情報が失われてしまっては意味がない。そこでケーブルもまたAV機器の重要なコンポーネントのひとつとして認識し、きちんと評価する。つまり経路を含め、一気通貫で家庭でもTHX認定劇場のクオリティーに近づこうと考えたのが、HDMIケーブルのTHX認証だ。

 テスト項目は公開されていないが、色味の再現性が失われない、あるいは音圧が変わらないといった内容を含んだ67項目以上に及ぶとのこと。テスト項目は電気的な特性や通信プロトコルに対する性能だけでなく、ケーブルやコネクターの物理的な完成度や相互接続性などが含まれる。特にHDMI 2.0で4K60p(帯域幅1.86Gbps以上の信号)を伝送するための定義はなかったため、THXで先行してその定義をつくり、公正な判断が下せるようにしたのだ。もちろんKordzのケーブルはすべての試験をパスしている。

EDIDの伝送に関しては特に苦労したという。

 THX認証を通る際にもっとも苦労したポイントとしては、データ転送速度と帯域の確保だったという。特にEDID(Extended Display Information Data)情報を欠落せずに届ける点には苦心したとのこと。EDIDには接続元のメーカーの名前や解像度、カラースペース、認証情報などが含まれているが、THXではこれに加えて、ダイナミックレンジやカラーがマット、カラースペース(色情報)などより多くの情報を載せており、機器間で情報をやり取りする際に重要となる。

 また製品化の際には、ケーブルの型番や種類だけではなく、長さを含めてすべての製品の試験を行う必要がある。ちなみに同じTHXのテストでもCertify(認証)とApprove(認定)の2種類があり、より厳格なTHX認証を取るためには市場投入するすべてのパッケージについてテストを通さなければならない。

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