このページの本文へ

今秋登場のCortana Analytics SuiteやAzure IoT Suiteについて聞く

CortanaやIoTをスイート化するマイクロソフトのねらい

2015年07月21日 11時00分更新

文● 大河原克行

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

米マイクロソフトは「Cortana Analytics Suite」を、今秋にも市場投入することを発表した。米マイクロソフト クラウド&エンタープライズ マーケティングの沼本健コーポレートバイスプレジデントと、米マイクロソフト データプラットフォーム&IoTプロダクトマネージメントのバーブ・エドソン(Barb Edson)ゼネラルマネージャーに、Cortana Analytics Suiteの狙いとともに、IoT市場向けスイート製品であるAzure IoT Suiteについて聞いた。

Cortanaの機械学習を活用したスイート製品

 Cortana Analytics Suiteは機械学習、ビッグデータのストレージと大規模処理などの先進的テクノロジー基盤と、画像認識、顔認識、音声分析などの認知技術とを組み合わせ、分析能力を拡張することができる新たなサービスだ。マイクロソフトのデジタルパーソナルアシスタントであるCortanaが持つ機械学習機能を活用し、音声による対話でデータをもとにした分析や洞察が行なえる新たなスイート製品である。日本での投入時期は現時点では未定となっている。

Cortanaの機械学習機能を活用し、音声データの分析が行なえるCortana Analytics Suite

 Cortana Analytics SuiteではPower BIやSQL Data WherehouseなどのAzureで提供される機能を統合。デジタルパーソナルアシスタントであるCortanaの機能によって、音声での操作を可能にしている。また、マイクロソフトが今年1月に買収したレボリーションアナリティクスのR言語ベースにした分析ソリューション技術も、Cortana Analytics Suiteのなかでも活用されているという。

 Cortana Analytics Suiteに、デジタルパーソナルアシスタントであるCortanaの名称を冠したのには理由があると、沼本コーポレートバイスパレジデントは語る。

 「ひとつは、Cortanaの特徴である音声認識などの技術を、サードパーティーが自由に使えるようになるという点。これは、マイクロソフトが長年研究してきた成果として実現したものである。もうひとつは、Cortana Analytics Suiteで作ったアプリが、Cortanaのユーザーエクスペリエンスに統合しやすくなっているという点。Cortanaを利用して、Power BIによる分析を行なうこともできる」という。

 米マイクロソフト データプラットフォーム&IoTプロダクトマネージメントのバーブ・エドソン ゼネラルマネージャーは、「Cortana Analytics Suiteは、Hadoopへの対応をはじめ、柔軟性とオープン性を兼ね備えたスイート製品だ。これ1つを導入すれば、あとはオプションを選択するだけで、必要な機能を活用できるようになるといった特徴がある。機械学習や高度なストリーミング解析も可能であること、マイクロソフトの技術以外にも活用できる環境であることが特徴。ハイブリッドにも対応した業界唯一のアナリティクスツールともいえる。ビッグデータの利活用の際には、利用現場では混乱が起きやすいが、そうした問題も解決できる」としている。

米マイクロソフト データプラットフォーム&IoTプロダクトマネージメントのバーブ・エドソン ゼネラルマネージャー

 契約更改をしないような顧客の分析、不正トランザクションの検出といった業務を、Cortana Analytics Suiteというパッケージのなかで実現できるという。さらに、「Visonも、Faceも同じインターフェースのなかで使ってもらうことができる。今後、アナリティスクのアプリケーションにおいては、いかに簡単に対話ができるか、ということが大切になる。そこに、Cortana Analytics Suiteの価値が発揮されることになる」(沼本コーポレートバイスプレジデント)とする。

 現時点では、パブリックベータとして、SQL Data Wherehouseなどを提供しているほか、米Dartmouth-Hitchcock Health Systemsでは、Cortana Analytics Suiteを先行導入。ヘルスケアサービスに活用して、24時間365日体制でのバイタルデータの収集とともに、看護体制を実現。感情や情緒といった反応についても、マイクロソフトリサーチの研究成果を活用して、収集しているという。データ収集などには、Microsoft Bandなどを使用する。

 「米国の医療はすべての患者に対して、平均的な看護、治療を行うが、解析機能を活用することで、患者に最適化したパーソナライズな看護、治療ができる。IoTおよびビッグデータに対応した高度な解析の実例となる」(エドソン氏)。今後は、さまざまな業界向けのシナリオ展開を進め、適用領域を広げていくという。なお、Cortana Analytics Suiteは、月額サブスクリプションとして利用が可能になる。

IoTに必要な機能をパッケージ化した「Azure IoT Suite」

 一方、Azure IoT Suiteも今年秋のリリースを予定している。こちらはIoTにおける必要な機能をパッケージ化したもので、センサーをはじめとする各種デバイスからのデータを取り込み、処理および分析を行なうAzure Event Hubや、Ubuntsu、Linux、iOSなどの様々なIoTデバイスのデータ収集機能などを実装。さらには、ストリーミングデータの解析や、機械学習機能なども提供する。

IoTにおける必要な機能をパッケージ化したAzure IoT Suite

 「Azure IoT Suiteは、コンポーネントの統合により、サービスのプロビジョンニングを一度するだけで済む。また、プリコンフィギュアモジュールとして、車両の管理、エネルギー管理といった具体的な用途に対して、それに向けた提案がやりやすくなる」(エドソン氏)。

 ある調査では、3万箇所からのデータを収集している企業でも、実際に使っているデータは全体の1%に留まっており、収集しているデータが活用してきれていないという問題が指摘されている。接続の問題を取り払い、デバイスを接続したのちに、データを収集し、そのデータを使いやすいように変換することで、遠隔監視、資産管理、予測可能な保守、維持が可能になる。「デバイスメーカーは、デバイスを売るのではなく、デバイスをサービスとして販売することが可能になり、パートナーにとっても、利益率が高いビジネスを実現できるきっかけとなる」(エドソン氏)。

 あるエレベータメーカーでは、400箇所にセンサーが設置されており、Azure IoT Suiteの一部を利用することで、センサーから発信されるデータを活用。メンテナンスの必要性などを予測し、コスト削減と効率性向上、経営の変革につなげているという。また、プリコンフィギュアの仕組みとすることで、さまざまなシナリオに展開。2~6週間での実装が可能だという。

 「経営層は、経営効率を向上させたいとつねに考えているが、それがIoTによって、どれだけ貢献するのかがわからないというジレンマを持っている。Azure IoT Suiteによって、そうした課題も解決できる」(エドソン氏)とする。

定額制の料金体系導入でより使いやすく

 7月29日から提供を開始するWindows 10では、IoTにおいても重要な製品だと位置づけており、Azure IoT Suiteの連携提案も行なっていくことになりそうだ。

 また、Azure IoT Suiteは、料金体系の簡素化も図っているという。一般的にIoTの実装においては、料金設定が複雑になる傾向がある。だが、Azure IoT Suiteでは、デバイス数、メッセージの送信頻度、データ量などによって分類される3種類の月額の料金設定とし、定額制としているのが特徴だ。

 「IoTを実行する場合には、経営層はコストの予測をしたい、あるいは月額の費用を固定したいと考えている。Azure IoT Suiteの具体的な料金は、現時点では決定していないが、3つの定額料金設定で展開していくことになる」という。使用量に準じない新たな料金体系の導入も注目されることになりそうだ。

 Cortana Analytics SuiteおよびAzure IoT Suiteに共通しているのは、Azureのサービスをよりわかりやすく提案するという狙いがあるという点だ。沼本氏は「これらのSuite製品は、Azureとして水平展開で売るのではなく、ユーザーにわかりやすい形で、パッケージ化するという狙いがある」と語る。

 現在、Azureには約60種類のサービスがあるという。沼本氏は「パートナーを通じた販売では、60種類のサービスをどう組み合わせたらいいのかわからないという課題が発生しやすい。EMS(Enterprise Mobility Suite)やCortana Analytics Suite、Azure IoT Suite、OMS(Operations Management Suite)といったスイート製品は、価値を伝えることができるソリューションとして、パッケージ化。こうした課題を解決することができる」とアピールする。

モバイルデバイスの管理を容易にするEMMもパッケージ化

■関連サイト

カテゴリートップへ