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AWS Summit 2015 New Yorkの内容をフィードバック

AWS、API Gatewayや機械学習など新サービスをお披露目

2015年07月14日 16時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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7月14日、Amazon Data Services Japan(ADSJ)はAWSの最新アップデートを披露するプレス向けイベントを開催。ADSJの大谷晋平氏が、AWSの最新動向や新サービスの「Amazon API Gateway」や「Amazon Machine Learning」について説明した。

グローバルで100万を超えるユーザーが利用

 登壇したADSJ ストラテジックソリューション部 部長の大谷晋平氏は、冒頭AWSの現状や日本でのAWSの動向について説明した。AWSは現在、世界190カ国、11箇所のリージョンにおいてサービスを展開しており、100万以上の顧客がユーザーとして利用しているという。2014年には516の機能拡張や改善を施し、値下げも累計で49回行ない、利益を顧客に還元しているとアピールした。

ADSJ ストラテジックソリューション部 部長 大谷晋平氏

 日本でのビジネスも堅調で、スタートアップやエンタープライズまで数万の顧客を有しているという。日本で開催された「AWS Summit Tokyo 2015」も6月2日・3日の2日間で1万名以上の参加者を動員。「昨年はエンタープライズにフォーカスしていたが、今年はアプリケーション開発者向けのDeveloper Conferenceも開催した」(大谷氏)とのことで、開発者に対するアピールも進めた。また、会場では320ページにおよぶ「EPS(Ecosystem Solution Pattern)」を配布し、AWS対応のソフトウェアやSaaSを紹介したという。

 サービスとしては、クラウド時代に向けてRDBMSを作り直した「Amazon RDS for Aurora」やイベントトリガーによってコードを実行する「AWS Lambda」などを新たに追加。Lambdaに関しては、東京リージョンでもサービスがスタートし、Node.jsに加え、Javaもサポートした。また、最近ではAmazonの音声アシスタント端末である「Amazon Echo」の音声サービスである「Alexa」の音声認識ツールキットも提供を開始し、Lambdaと連携することも可能になった。

音声認識ツールキットにより、Amazon EchoがLambdaと連携

AWSが新たに繰り出す4つのマネージドサービス

 大谷氏は、先頃開催されたばかりの「AWS Summit 2015 New York」で発表されたAmazon API Gateway、Amazon Machine Learning、Amazon Elastic File System、そしてAmazon Device Farmなどについても説明を行なった。なお、価格は税抜となる。

APIの管理をシンプルにする「Amazon API Gateway」

 Amazon API Gatewayは、複数のバージョンやステージングを用いる場合のAPI管理やAPIキーのデベロッパーへの配布、AWS Sig v4によるAPIのオーサライズなどを提供するマネージド方のAPI管理サービス。Lambdaを呼び出すことで、サーバーレスで実行することが可能となっている。また、ユーザーのバックエンドを守るためのAPIのスロットリングやモニタリング、レスポンスのキャッシング、CloudFrontを用いたレイテンシの削減やDDoS保護なども完備。さらに定義されたREST APIや認証フローなどをパッケージ化し、iOSやAndroid、JavaScript用のクライアントSDKを作成することも可能だ。

Amazon API Gatewayの概要

 Amazon API Gatewayは9年間のクラウド運用において得た知見や顧客のフィードバックが取り入れられているという。「AWS流のやりかたで、APIにまつわる課題をどう解決するか?ということでできたのが、APIを管理できるAmazon API Gatewayになる」(大谷氏)。とのことだ。価格は100万APIリクエストで3.5ドルとなっている。

アルゴリズムがパッケージ化されている「Amazon Machine Learning」

 Amazon Machine Learningは、Amazonで利用されてきた技術やノウハウをパッケージングした機械学習サービス。過去のデータの遡及的分析を行なうRedshiftやRDS、S3、EMRや、リアルタイム処理とダッシュボードを提供するkinesis、EC2、Lambdaなどに対して、Amazon Machine Learningは予測をベースにしたスマートアプリケーションを作成可能にするサービスとして位置づけられる。

Amazon Machine Learningの概要

 提供される予測モデルとアルゴリズムとしては、スパムの判断などに使える「二項分類(ロジスティック回帰)」、製品分類に使える「多クラス分類(多項式ロジスティック回帰)」、売り上げや在庫予測に利用できる「回帰分析(線形回帰)」などが用意されている。予測手法としては、Amazon S3などにアップされたデータに対してまとめて予測を実施する「バッチ予測」のほか、データ1件ずつをAPIで予測する「リアルタイム予測」が使える。

バッチ型とリアルタイム予測の2つが用意

 従来からAmazonではスパムメールの判断や商品の分類、売り上げ予想などさまざまな場面で機械学習が用いられているが、ユーザーの利用を考えると、機械学習の専門家が少なく、仕組みを作っても、スケールさせることが困難だったという。これに対してAmazon Machine Learningでは、アルゴリズムやワークフローがあらかじめパッケージされており、初心者でも使いやすいという特徴を持つ。また、Amazon S3やRedshiftなど複数のソースからデータを取り込めるのも大きな売り。

 支払いは従量課金となっており、データ分析やモデルトレーニング、評価など0.42ドル/インスタンス、バッチ予測が0.1ドル/1000処理、リアルタイム処理が0.1ドル/1000処理+1時間ごとのキャパシティリザーベーションチャージとなっている。

NFSでアクセスできるAmazon Elastic File System(Amazon EFS)

 Amazon Elastic File System(Amazon EFS)はNFSv4でのNASとして動作するストレージサービス。ブロック単位のEBSに対して、Amazon EFSではファイル単位でアクセスする。

Amazon EFSにはマウントターゲットを介してアクセスする

 Amazon EFSにはAmazon VPC内にあるマウントターゲットからアクセス。各EC2インスタンスからは、AZ(Availabirity Zone)にあるマウントターゲットに接続することで、複数のAZから同時に読み書きできるという。容量は、自動的に拡張・縮小でき、スループットも容量に合わせて向上し、数千のNFS同時接続をサポートするという。課金は保存した合計容量のみ発生。ユーザーがアップロードしたデータを全サーバーで共有するためのコンテンツレポジトリや、ビッグデータにおける分析データの共有に利用できるという。

デバイステストを簡素化する「AWS Device Farm」

 「AWS Device Farm」は、AWSのデータセンターにある200種類ものAndroid/FireOSデバイスでアプリをテストできる。ユーザー側でデバイスを用意し、手動でテストを行なわなくとも、さまざまなデバイスで機能を検証できる。現状はオレゴンのみだが、今後日本でも利用可能になる予定。課金は、テストした時間にかかる従量課金のモデルのほか、AndroidやFireOSのデバイスを1ヶ月利用できる非従量課金のモデルが用意されている。

月間予算を設定した利用も可能に

 大谷氏は、今までNAT経由での利用が必要だったAmazon S3の利用に際して、VPCエンドポイントが利用できるようになったことや、VPC内のネットワークログが採取できるようになったことなど、重要なアップデートについても言及。AWS利用料金をあらかじめ月ごとに予算化しておく機能や、機械学習により来月いくらかかるかを予想するコスト予測などが導入されることも明らかにした。

AWS利用料金の予算化と予測が可能に

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