このページの本文へ

4K、8K、HDR……謎の用語が続々出てくる薄型テレビの基礎知識 第2回

4K/8K放送から有機ELにIGZO……次世代テレビの技術を解説!

2015年07月14日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

いよいよ今年登場!?
4Kコンテンツを収録した「ULTRA HD Blu-Ray」

2015 International CESでパナソニックが参考展示していた4K BDのデモンストレーション

2015 International CESでパナソニックが参考展示していた4K BDのデモンストレーション

 テレビ放送、およびCATVや動画配信サービス(IPTV)だけでなく、4Kコンテンツを今のBDソフトのようにパッケージ化して販売する準備も進んでいる。

 それが「ULTRA HD Blu-Ray」だ。もともとは「4K Blu-Ray」の名称だったが、世界的には4KではなくULTRA HDの名称が認知されているので、このような名称になった。

 基本的に4Kコンテンツの映像ソフトと考えていいが、将来的には8Kコンテンツ収録の可能性も期待できるかもと思ってしまう。

 ULTRA HD Blu-Rayは、今春に規格が正式に決定。早ければ年内にはソフトの発売と再生を行なうプレーヤーの発売がされる見通しだ。解像度は最大4K(3840×2160)で、最大12ビット(4:4:4)の4K/60pのフルスペック規格で収録される。

 これに加えて、映像信号の広色域化、高輝度表示などが行なえるように、映像規格も最新のものが採用される。

テレビ放送とULTRA HD Blu-Rayは画質に差がある?
広色域規格の「BT.2020」

「BT.2020」の色範囲のイメージ

「BT.2020」の色範囲のイメージ

 今のところ、放送されている4Kコンテンツのほとんどは、現行放送をベースに映像の解像度だけを4Kとしたものとなっている。だが、来年からの試験放送では、放送規格自体も大きく変わる。

 詳しい内容は現在も検討中で、今後正式なものとして規定されることになるが、映像の解像度は4Kまたは8K、色域などのスタジオ規格は現行の「ITU-R BT.709」(HDTVスタジオ規格)ではなく、最新の「ITU-R BT.2020」となる。

 ここで規定されている色再現範囲は、BT.709はもちろん、デジタルシネマ規格やデジタル静止画での規格であるAdobeRGBなどよりも広く、事実上すべての物質の色をカバーできるとされているもの。

 規格としては表現力の幅が格段に広くなるが、映像信号としてみると、4K/60p(4:2:0 8ビット)であることは変わらないようだ。これは、放送信号の帯域にも関わるので情報量をいたづらに増やせないという面もある。

 映像信号の圧縮方式は「HEVC/H.265」となる。音声信号は「MPEG2 AAC」だけでなく、「MPEG2 ALC」(ロスレス圧縮)も加わるようだ。このあたりが、ほぼ確定している内容で、CATVや動画配信サービスも同等になると考えていい。

さまざまな映像系イベントでスーパーハイビジョンをアピールするNHK(写真はカメラ総合イベントの「CP+ 2015」)

さまざまな映像系イベントでスーパーハイビジョンをアピールするNHK(写真はカメラ総合イベントの「CP+ 2015」)

 この先は、検討中の部分もあり、すべてが採用されるとは限らないが、いくつか紹介しておこう。8KはNHKが主導で開発していた「SHV」(スーパーハイビジョン)をベースとしているので、そこで規定されていた技術仕様も盛り込まれるように検討されている。

 映像のフレームレートは120p(毎秒120コマ)、音声は最大22.2chのサラウンド音声など、なかなかヘビーなスペックである。このあたりが採用されるかどうかが不透明な理由は、現行の4Kテレビなどのスペックを超えているため。つまり、テレビの買い換えが必要になるのが悩ましいのだ。

 今度はULTRA HD Blu-Rayの技術仕様だ。ITU-R BT.2020を採用するのは放送と同じだが、映像信号は4K/60p(4:4:4 12ビット)のフルスペック規格となる。転送レートも放送に比べれば高いものになるようで、画質的にはパッケージ版がもっとも優れることになるだろう。サラウンド音声については、最新鋭のドルビー・アトモスやDTS:Xが継続して採用される。

ダイナミックレンジが広がる「HDR」

東芝「REGZA G20X」はHDR対応をうたう。左が従来、右がHDRに対応したモデル。画面が明るいだけでなく、解像感が高いように見える

東芝「REGZA G20X」はHDR対応をうたう。左が従来、右がHDRに対応したモデル。画面が明るいだけでなく、解像感が高いように見える

 新規に追加されるのが、「HDR」(High Dynamic Range)という技術。これは、撮影用カメラでは捉えきれない強い光の情報を記録し、ディスプレー側の表示技術との組み合わせで再現するのだ。

 自然界の光というのは、太陽の光のように肉眼でも直視すると危険なレベルの強い光まで存在するが、当然カメラはそんな強い光は撮影できず、飽和してただの白い光になってしまう「白飛び」となる。

 そのため、あらかじめフィルターで減光して撮影しているわけだ。このときに使用したフィルターの特性を記録しておけば、テレビ側での表示時にその強い光をフィルターの特性に合わせて再現することも可能ということになる(もちろん、サングラスが必要になるような危険なレベルの強い光は出ない)。

 ちなみに、HDRという技術自体は、すでに発売されている各社の4Kテレビでも採用が進んでおり、メーカーによっては後日のアップデートでHDRに対応可能としているところもある。これについては次回で詳しく紹介するが、(元の映像信号には記録されていないが)信号処理の力で本来あるべき強い光の再現や、従来ならば白飛び状態になってしまうような明度の高いシーンでの階調の表現を可能にしている。

 4K映像としては最高の品質を誇るULTRA HD Blu-Rayだが、基本的には現行の4Kテレビの多くがその技術仕様を満たしているため、高画質を気にする人でも買い控えをする必要はない(ULTRA HD Blu-Rayの対応プレーヤーは新規購入が必要)。むしろ、今すぐ買えば、HDR技術を先取りできるなど、一足早く次世代BDに近い映像を楽しめるとも言える。

(次ページに続く、「黒の再現がスゴイ! 大型化が進む有機ELテレビ

カテゴリートップへ

この連載の記事

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中