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4K、8K、HDR……謎の用語が続々出てくる薄型テレビの基礎知識 第1回

VAとIPSの違いって何? 液晶テレビの基本動作を知る!

2015年07月13日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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バックライトの色も画質に影響する

 光源となるバックライトの質も重要だ。バックライトの光は基本的に白色(RGBの波長の光を等しく備えた光は白になる)。これが青白かったり、黄色かったりすると、RGBのバランスが崩れ、映像が青っぽくなったり、黄色くなってしまう。

 また、Rの光の純度が低い(朱色やオレンジ色の波長が多く含まれ、濁った赤になる)と、赤色の再現性が劣ってしまうこともわかるだろう。

 かつては液晶テレビの光源は蛍光灯とほぼ同じ原理の「冷陰極管」が使われていた。これは、真空のガラス管の中に放出された電子が、管の内面に塗布された蛍光体を刺激して光を発する仕組みだ。蛍光体の材料を改良することで純度の高い白色が得られるようになってきたし、RGBの色の再現範囲も広がった。

東芝の液晶テレビのLEDバックライト。左が直下型で右がエッジ型(横置き式)

 そして、現在の液晶テレビはほとんどのモデルが光源としてLEDを使用している。いわゆる白色LEDと呼ばれるものだが、実はこれ、青色LEDに黄色(赤と緑の波長の光を取り出せる)のフィルターを追加して「白っぽい」光が得られるようにしたもの。緑は光の波長の中間にあり、比較的安定した波長なので十分な緑の成分を得られるが、赤の波長の光はやや弱く、初期のLEDバックライトを採用した液晶テレビは赤の再現が苦手だった。

 これも、現在では黄色のフィルターを工夫したり、半導体技術によるLEDの発光制御で純度の高い赤の波長を得られるようにしたりできるようになった。こうした技術を採り入れた液晶テレビがいわゆる「広色域化」をうたうモデルである。

 苦手だった赤色はもちろんのこと、青や緑の波長も純度を高めているので、色再現の範囲がさらに広がっている。だから、最新の薄型テレビの実力を確かめてみたい人は、量販店のテレビ売り場などへ行って、テレビの赤色に注目してみるといい。朱色や暗く沈んだ赤ではなく、真っ赤な色が再現できていることに気付くはずだ。  

最新の液晶テレビの実力に驚け!
直下型LEDバックライト+エリア駆動の威力

 液晶パネルは原理的にコントラスト比が高くない。先ほどはVA方式で3000~5000:1、IPS方式で1200~2000:1ほどのコントラスト比と書いたが、コントラスト比に優れるプラズマテレビは最終モデルでは20万~100万:1に近い値を実現していた(すべてメーカーが公表したデータに基づく、ネイティブコントラストの値)。有機ELは黒を表示する画素は完全に消灯するので、コントラスト比は測定不可能なレベルになる。

 液晶テレビはコントラスト比が低いため、暗部が発光する「黒浮き」が起きやすく、暗部の再現性が劣ると言われてきた。

 これはなぜか? その答えは液晶パネルがバックライトの光源で照らして映像を表示するからだ。窓からの外光をカーテンなどで遮る場合、よほど徹底しないと昼間の強い光が漏れてしまうように、液晶によるシャッターもバックライトの光を完全に遮ることができない。

 つまり、光が漏れるから本来ならば真っ黒になる部分が光ってしまうわけだ。

 ならば、映像の黒い部分はLEDを消してしまえばいいのでは? この発想で生まれたのが「エリア駆動」という技術。液晶パネルの後ろ側に配置されるバックライト用のLEDは、液晶の画素ほどではないがかなりの数が等間隔に配置され、パネルを均等に照らすようになっている。

下の写真を液晶パネルに表示する場合、直下型であれば上のようにLEDライトを点灯させることで、暗い部分は真っ黒に表示できる

下の写真を液晶パネルに表示する場合、直下型であれば上のようにLEDライトを点灯させることで、暗い部分は真っ黒に表示できる

 このLEDたちをグループごとに分け、液晶パネルが表示する映像の明るさに合わせて個別に画面を照らす明るさを調節すればいい。この効果はかなりのもので、夜空に浮かぶ花火の映像のように、明るい部分と暗い部分がはっきりと分かれている場合、液晶でもかなり引き締まった黒と色鮮やかな花火の輝きを再現できる。

エッジライトの場合、上下または左右のLEDを部分的にコントロールすることで、ある程度の明暗のメリハリを得られる

エッジライトの場合、上下または左右のLEDを部分的にコントロールすることで、ある程度の明暗のメリハリを得られる

 ただし、エリア駆動も万全ではない。液晶テレビのLEDバックライトは、画面の上下端(または両端)にだけLEDを配置し、導光板を使って画面全体を均一に照らすエッジライト型のものもある。これでは、エリア駆動をするにもグループ分けする数が少ないため、コントラスト感向上の効果はそれほど大きくはない。

 エリア駆動の効果が十分に得られるのは、液晶パネルの後ろ側にLEDを敷き詰めるイメージで配置する直下型LEDバックライトを備えたモデルのみ。ただし、LEDの数がかなり増えてしまうため、価格も高い。画質を優先する高級モデルのみの限られた装備とも言える。すべての液晶テレビが直下型LEDバックライト+エリア駆動採用となればいい話ではあるが、それは液晶テレビの価格が高価になることも意味するわけだ。

 ちなみに、薄型テレビにおいて高級テレビに位置づけられる4Kテレビでは、直下型LEDバックライトの採用率はかなり高い。逆に価格が重要になるフルHDテレビでの直下型LEDバックライトの採用率はかなり低いと覚えておこう。

まだまだある。最新の薄型テレビの要注目ポイント

 ディスプレーとしての液晶は、テレビとして採用されることがほとんどなかったブラウン管テレビの時代では、テレビ用の表示パネルではないとさえ言われていた。大画面化が難しい(解決済み)、視野角に制限がある(方式により解決済み)、コントラスト比が低い(コスト次第で解決可能)と、山のように抱えてきた弱点を技術の力で乗り越えてきた。言わば液晶の画質の進化は技術の進歩の証なのだ。

 その結果、高精細化がしやすい、画面輝度が圧倒的に高い(画面が明るい)、しかも低消費電力、長寿命といった数々のメリットが生き、現在の薄型テレビの主流の座を勝ち得たのだ。液晶テレビから液晶テレビへと買い換えて、その画質の良さにもしも驚いたら、それを実現したテレビメーカーのたゆまぬ努力の成果を賞賛してほしい。

 次回は、4K放送や8K放送など、これからのテレビの進化や、これから登場する新技術や新規格について紹介していく。期待の次世代テレビと呼ばれる有機ELテレビも詳しく解説していくのでお楽しみに。

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