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4K、8K、HDR……謎の用語が続々出てくる薄型テレビの基礎知識 第1回

VAとIPSの違いって何? 液晶テレビの基本動作を知る!

2015年07月13日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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液晶テレビにはVA方式とIPS方式の2種類がある

 現在の液晶テレビに採用されている液晶パネルは、大まかに「VA」方式と「IPS」方式の2種類がある。両者はどっちが良くてどっちが劣る、ということではなく、それぞれの動作原理に起因する一長一短の部分がある。まずは視野角。液晶パネルを通った光は直進性が強くなり、正面からは十分な光が見ている人の目に到達するが、斜め方向には光が弱まってしまう。

 つまり、斜めから見ると画面の明るさが落ちてしまったり、色が浅くなってしまうのだ。これはバックライトの光で映像を投射する液晶テレビでは原理的に避けられない問題だ。

VA方式は画面が“暗”(左)の時、液晶分子が垂直になる。“明”(右)になるごとに水平となる

VA方式は画面が“暗”(左)の時、液晶分子が垂直になる。“明”(右)になるごとに水平となる

IPS方式は画面が“暗”(左)の時でも液晶分子は水平で、“明”の時は向きが変わる

IPS方式は画面が“暗”(左)の時でも液晶分子は水平で、“明”の時は向きが変わる

 こうした液晶の視野角の制限が顕著に表れてしまうのがVA方式。そして、同じ液晶でも視野角の制限が少ない方式もある。それがIPS方式だ。これは液晶分子の回転する方向が垂直(VA方式)か水平(IPS方式)かという違いなのだが、これによって液晶パネルを透過した光の拡散の具合に違いが出る。

 これらのパネルは画素を拡大してみると、サブピクセルの形状自体も異なっていることがわかる。肉眼では確認しにくいが、それぞれの方式による違いを目で見分けるならば、もっと簡単な方法がある。

VA方式のパネルを使用した液晶テレビ(東芝 58Z10X)の画素を接写で撮影。ひとつひとつの画素がRGBに別れているのがわかる

VA方式のパネルを使用した液晶テレビ(東芝 58Z10X)の画素を接写で撮影。ひとつひとつの画素がRGBに別れているのがわかる

IPS方式のパネルを使用した液晶テレビ(東芝 49G20X)の画素を接写で撮影。RGBのサブピクセルの形状が>のような形に斜めになっていることがわかる

IPS方式のパネルを使用した液晶テレビ(東芝 49G20X)の画素を接写で撮影。RGBのサブピクセルの形状が>のような形に斜めになっていることがわかる

 ここまでの説明だと、視野角の広いIPS方式の方が良さそうに思えるが、VA方式の方が優れた面もある。それがコントラスト比。VA方式パネルのコントラスト比が3000~5000:1であるのに対し、IPS方式は1200~2000:1ほどのコントラスト比となる。

 このため、正面から見た場合に限れば、VA方式の方が黒が締まった力強い映像に感じる。ただし、テレビの正面を外れるとその持ち味(高コントラスト)が失われ、IPSよりもコントラスト感の少ないひ弱な映像になる。

 このあたりは、実際に自分の目で確かめて、VA方式かIPS方式かを選ぶといい。特に部屋のコーナーに薄型テレビを置く場合、斜めの位置から見る機会が増えるので、斜めからの画面の見え方は重要だ。

 液晶テレビがVA方式のパネルか、IPS方式のパネルを採用しているかは、メーカーやモデルによってもまちまちで、ホームページやカタログなどのスペック表で確認する必要がある。

 ちなみに、4Kテレビの場合では、ソニーはほとんどがVA方式、東芝はVA方式とIPS方式をモデルごとに使い分け、パナソニックはIPS方式、三菱電機がVA方式、LGエレクトロニクスはIPS方式を採用している(ただし例外もある)。

(次ページに続く、「実際にVA方式とIPS方式では暗所と斜め見で画質が違う!

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