このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第129回

元Nokia CEOのElop氏が退任 Nokiaの凋落は彼のせいなのか?

2015年06月24日 15時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本でもようやくWindows Phone 8.1端末が登場したが、世界的にみるとWindows Phoneを取り巻く環境は実に厳しい。Android、iOSに次ぐ3つ目のエコシステムをと、Nokia時代にWindows Phoneの採用を決定し、その後のMicrosoftによるNokiaデバイス事業の買収という流れを作った張本人、Stephan Elop氏がとうとうMicrosoftから去ることになった。Nokia側からこの4年を振り返ってみたい。

Microsoftを去ることになった、元Nokia CEOのElop氏。一時はMicrosoftの新CEO候補というウワサもあったのだが……

Microsoft→Nokia→Microsoft→そして……

 元MicrosoftのStephan Elop氏は2010年9月、初のフィンランド人以外のCEOとしてNokiaのトップに就任した。そして6ヵ月もしない2011年2月、Microsoftとの戦略的提携に至る――その流れを振り返ってみよう。

 Nokiaは当時、直前にCEOを務めていた”OPK”ことOlli-Pekka Kallasvuo氏のもとで、ハイエンドではIntelと推進していたMeeGo、ミッドレンジはオープンソース化したSymbian、ローエンドは独自のS40という3つのプラットフォーム戦略を打ち出していた。

2007年、MWCの前身となるイベントに登壇した当時のカラスブオCEO。「Nokia E90 Communicator」など、S60端末を発表した。iPhone登場前夜だが、スマートフォンが爆発的に普及するという当時の予言については的中している。

 Elop氏は就任後、”Burning Platform”(燃えている土台、つまり土台の上に立っていられなくなるという危機的状況)メモを出し、Nokiaの危機とそれに対応するための大胆な策を従業員に予告した。

 そうして当時MicrosoftのCEOであり、Elop氏にとっては元上司であるSteve Ballmer氏と握手を交わし、Nokiaの戦略的プラットフォームをWindows Phoneとすることを発表した。これが引き金となり、2013年9月の買収発表にまで至る。

 その結果、Elop氏はデバイスとサービス事業部の執行バイスプレジデントとしてMicrosoftに返り咲くことに。かつて世界最大の携帯電話メーカーとして世界に君臨したNokiaのデバイス事業部のお値段は54億4000万ユーロ(約62億ドル)。この金額、実はSkypeの85億ドルよりも安いのである。この買収は2014年4月に完了している。

 一方で、Microsoft側もさまざまな変化があった。最大の変化はBallmer氏の引退とSatya Nadella氏へCEO交替。Nadella氏は基本的にはBallmer氏の”デバイスとサービス”路線を踏襲しつつ、”モバイルファースト、クラウドファースト”を大きく打ち出した。

 そのNadella氏が6月17日、事業の再編と幹部の人事入れ替えを発表した。Elop氏のデバイス事業部はオペレーティングシステム事業部と合体して”Windowsとデバイスグループ”となり、オペレーティングシステム事業部を率いていたTerry Myerson氏が統括する。Elop氏とは「Microsoftを辞めるタイミングがきた」ことで同意した、とNadella氏は従業員向けのメールで記している。

Microsoftになってからの1年で
Windows Phoneのシェアは低下している

 Elop氏のカットは、Nadella氏の穏やかな、着実な改革の一環といえるのだろうか? Windows Phoneの現状を見るに、現時点でNokiaの買収は成功とはほど遠い状況だ。Windows Phoneのシェアは2014年Q1の2.7%から2015年Q1は2.5%に低下。買収完了から1年が経過したところで、シェアはほとんど変わりがない(正確に言えば微減)しているのだ。

 世界的に見れば、Windows Phone端末はMicrosoft/Nokiaぐらいしか機種が出ておらず、Nokia買収により、HTCやSamsungなどわずかではあるがWindows Phone機種を出していた主要OEMとの関係にヒビが入ったかのようにみえる。

 なお、Microsoftは2014年のMWCでWindows Phoneのハードウェア要件を下げたほか、ライセンスを実質無償化している。Windows Phoneのブランドを「Nokia Lumia」から「Lumia」とするなどブランド面での策も講じているが、販売台数などの数字には現れていない。それどころか、強みだったローエンドでのシェアも失っており、フィーチャーフォンを含む携帯電話全体のシェアは11.1%から7.2%に縮小している(それでもMicrosoftはいまだに世界第3位の携帯電話メーカーではある)。

 Nadella氏によると、新組織では「Windowsエコシステムを前進させるためのブレークスルーに向けて開発面での取り組みを結集する」とのことだ。OS側と合体させることでデバイスとの連携を強めるという狙いとみえ、Windows Phoneのほか、Surface、HoloLens、Surface Hub、Band、Xboxなどのデバイスが含まれる。Elop氏に合わせて、2003年からNokiaに勤務し、Microsoftではコーポレートバイスプレジデントを務めたJo Harlow氏もMicrosoftを去る。

 なお、Elop氏はBallmer氏の引退発表後、CEO候補としてウワサされていたという点も付け加えておく。


(次ページでは、「Elop氏にすべての責任を負わせるのには無理がある」)

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン