世界シェア8割を謳歌するAndroid。先日開催された「Google I/O」でも、次期バージョンの「Android M」、それに「Android Pay」が発表されるなど、AndroidがGoogleの将来に大きなウェイトを占めることをうかがわせた。
その一方で、Androidの課題は山積している。Google I/0のタイミングでGoogleのAndroid戦略の難所を突く記事がNew York Timesに掲載された(関連リンク)。Googleにとって難しい舵取りが続きそうな気配だ。
端末ベンダーにとってのAndroidスマホ事業とは?
台数は増えても収益性は縮小
Androidは不思議なプラットフォームだ。(異論はあれど)オープンソースであり、自由度が高い。なんといってもAndroidそのものは無料であり、アプリのエコシステムもできあがっているので、端末ベンダーにとっては現状で実質的に唯一に近いモバイルプラットフォームだ。独占状態という点ではPCにおけるWindowsと同じだが、MicrosoftがWindowsのライセンスで収益を得ているのに対し、GoogleはAndroidそのものには直接課金していない。
Androidの最新の市場シェアをみてみよう。Gartnerの2015年第1四半期のシェアをみると、Androidのシェアは78.9%。世界で出荷される約10台に8台のスマートフォンでAndroidは動いていることになる。
だが、Androidスマートフォンをビジネスとしてみると、台数の成長と比例していない事実が浮き上がる。New York Timesが紹介する業界アナリストChetan Sharma氏の分析によると、Androidスマートフォン事業で得られる利益は2014年には44%も縮小したという。
Androidベンダーの生存競争の激しさはあらためて指摘するまでもない。最大手のSamsungのほかは、巨大な地元市場に支えられているHuawei Technologies、Xiaomi、ZTE、Lenovoなどの中国勢が上位を占め、それ以外は苦戦。中でもHTC、ソニーと早期にAndroidをハイエンドで成功させた功績者は市場の変化についていけず、決定的な策がないままシェアを落としている。
Googleが強調する自由度やカスタマイズ性とは裏腹に、Androidでの差別化は難しい。今後端末ベンダーの統合が進むことは必至と見てよいだろう。
Google自身もAndroidよりiOSでより多くの広告を得ている
同記事は、ビジネスとして見たときのGoogleにとってのAndroidにもスポットを当てている。Googleの収益源は広告だが、広告プラットフォームとしてみたとき、当人のGoogleですらAndroidよりもiOSの方が魅力的というのだ。Goldman Sachsの分析によると、2014年のGoogleのモバイル検索広告売上のうち75%がiOSだったという。
では、Googleはどうやって膨大な資金を費やしてのAndroid開発を正当化するのだろうか? Googleの工夫が身を結びつつあるのが、アプリストアの「Google Play」だという。すでにGoogle Playの売上高は2014年に100億ドルに達した。7対3の収益シェアの法則に基づくとGoogleが得た金額は30億ドルとなる。Googleは今年に入り、Google Playで公開するアプリの年齢別レーティングの導入とともに審査や管理基準を厳しくすることを発表している。
このようなGoogle側の取り組みの背景には中国市場の状況がある。中国ではGoogleサービスが遮断されており、Xiaomiら中国ベンダーはAndroidスマホの収益化にあたってアプリやサービスにフォーカスしている。つまり、GoogleアプリのないAndroid市場が拡大しているためだ。
(次ページでは、「Android Wear、Android Oneの取り組みは?」)
この連載の記事
-
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? -
第331回
スマホ
2023年は世界で5Gが主役になった年 世界の5G契約数は16億に -
第330回
スマホ
iMessageが使えるAndroidアプリが作られ、すぐ遮断 そしてRCS対応 吹き出しの色を巡る攻防 -
第329回
スマホ
10月の世界でのスマホ市場は前年同月比5%増 なんと27ヵ月ぶりで暗黒時代を脱出したかもしれない -
第328回
スマホ
一時はウェアラブルの代名詞だった「Fitbit」が一部の国で販売停止 Pixelにブランド統一か -
第327回
スマホ
腕に巻き付けるスマホを米国で見た! モトローラは新しい形のウェアラブルを生み出せるか? -
第326回
スマホ
iPhone登場の衝撃から16年、栄光と凋落が映画になったBlackBerry - この連載の一覧へ