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地方創生の切り札?LOCAL Community Summit講演レポート

北海道出身の2人が語る「こんなリモートワークどうでしょう」

2015年06月05日 14時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ベンチャー時代にリモートワークの試行錯誤

 後半登壇したのは、同じく北海道札幌出身のパクえさんこと吉田雄哉氏。もともと受託開発の会社からスタートし、製造業の情シス、パッケージベンダーを経て、クラウドサービスの会社を起業。今年からは日本マイクロソフトに勤務している。

ベンチャーやマイクロソフトでのリモートワークについて語る吉田雄哉氏(パクえさん)

 「製造業の情シスからパッケージベンダーに移る時がちょうど結婚して、子供が生まれたとき。パッケージベンダーには北海道のオフィスがあったので、これは帰れるチャンスだと思って転職したけど、3ヶ月でなくなってしまった。完全に帰る道を絶たれたので、東京在住を覚悟した」と語る。

 さて、パクえさんはIT業界での地方での仕事について、技術的には可能だが、仕事をとってくるというところに課題があると指摘した。「転籍のときに何社かで言われたのは、勤めるのは結局東京だよということ。東京でお仕事を作って、開発チームが必要になったら、仕事を持って帰ってこいと言われた」とパクえさんは語る。

 国や地方自治体もテレワークによる地方創生を進めようとしているが、パクえさんは「そもそも東京で毎日会社に通わないでも済むような状況を作らないと、その距離をさらに遠くするのは無理」と語る。地方で仕事しつつ、東京で仕事をとってくるにはどうしたらよいか。その議論を進めるため、パクえさんは自身のリモートワーク経験について話を進める。

 1社目は自身もメンバーとして立ち上げたco-meetingというベンチャー。リアルタイムコラボレーションツールなどを展開しているSaaSベンダーだ。パクえさん曰く、4人のメンバーは前職で9-17時の会社勤めをしていたが、起業当初はとにかくお金がなかったため、オフィスが借りられなかった。そこで各自が自宅で仕事をやり、Skypeで12時間に1回ミーティングするという方法にトライした。「なんでこの方法が採用されたのか、いまだになぞ(笑)。だけどやる方は大まじめだった」(パクえさん)とのこと。実際に1ヶ月チャレンジしたが、各メンバーの生活リズムが均一化しただけで、あまり意味がなかったという。

co-meeting時代のリモートワークの試行錯誤

 そこで次に試したのが、当時増え始めていたコワーキングスペースの採用。PC、無線LAN、スマホの基本装備で、コミュニケーションは自社製のco-meeting、GoogleDrive、FacebookなどSaaSでカバーした。そして生存確認も含め、1ヶ月に1度オフラインでミーティングし、呑み会でプライベートを語り合うという感じで進めた。「よかったのはメンバーのリテラシが揃っていたこと。誰かが高すぎる、誰かが低すぎるではなく、揃っているというのは、リモートワークするのにあたってこれはすごく重要」とパクえさんは指摘する。

一般社員として見たマイクロソフトのワーク環境

 さて、co-meetingでの仕事に一区切り付けたパクえさんが、日本マイクロソフトにジョインしたのは2015年1月。「Linuxしか使ったことないし、Active Directoryを最後にいじったのは2000 Serverのとき。上司はVisual Studio使いまくっているけど、僕Ruby使い(笑)」というパクえさんだが、現在はクラウドソリューションアーキテクトという肩書きで、マルチプラットフォームに邁進するマイクロソフトで活躍している。

 パクえさんが社員としてジョインして渡されたのは、Windows Phone、ルーター、PC、そしてヘッドセット。「長時間利用可能なプロ仕様のヘッドセット。どんだけSkype使わなければいけないのか不安になった」とパクえさんは振り返る。

マイクロソフトでのワーク環境

 システムに関してはVPN経由でログインするオンプレミスのシステムのほか、Office 365のようなクラウドサービスが混在している状況。「普通、Excel使いというと経理の人ですけど、うちは部長クラスだとさらにすごいレベルです。社内システムではかなりExcelが駆使されているので、Excelがなくなったら、マイクロソフトという会社が困ります(笑)」と聴衆を沸かす。

 社内はロケーションフリーになっており、タップとLANケーブルが出ていて、“基本的には”どこに座ってもよいという。そして、デフォルトなので、社外での仕事もまったく問題ない。「言われたのは、とにかくSkype for Business(旧Lync)は常時立ち上げておいてくれということ。居場所を聞くメッセージが跳んできたら、そこに移動して打ち合わせという感じです」(パクえさん)とのことだ。ただし、コミュニケーション手段のメインはやはりメール。グローバルでメールが行き交うので、すさまじい数になるという。

マイクロソフトの会議室、会議のお作法、コミュニケーション手段

 また、各会議室には必ずカメラがついており、Web会議がいつでもできる。「どこの会議室でも同じ製品が置いてあるので、操作も戸惑わないし、保守面でもよい。ファシリティコントロールが行き届いている」(パクえさん)。とはいえ、会議にもきちんとお作法があり、まずOutlookで相手のスケジュールを確認し、会議の予定を送る。そして、来られない場合を想定し、Skypeのリンクを付けておくという。「移動中の人はSkypeのリンクをたどって、会議の音声だけを聞くんです。だから移動中の電車で、会議が招集されて、イヤホン突っ込んで、テキストで返すといったことは普通にある」(パクえさん)。

ツールだけではなく、働く人の気持ちや制度面、改善も重要

 マイクロソフトのオフィス環境についてひととおり話したパクえさんは、リモートワークを進めるには、単にツールを用意するだけではなく働く人の気持ちや制度面での工夫、さらに利用に際しての継続的な改善など、さまざまな要素が重要になると指摘する。

パクえさんが考えたリモートワーク成功の鍵

 「あいつさぼってるんじゃないか?という疑問を持つとリモートワークはできない。そこを管理するのは、オーバーヘッドかかるし、そもそもあほくさい。だから、結果にコミットするという方法しかない」とまとめる。4人のメンバーだけでビジネスを止められなかったco-meeting時代、結果に対する誓約ベースで業務にコミットするマイクロソフト。両者とも働き方がまったく変わらなかったというのがパクえさんの感想だ。

 ツールに関しては、対面、動画、音声、文字のそれぞれのよさを理解して、即時性が必要か、タイムラグがあっても許容されるかを条件に使い分けると良いという。また、オフラインとオンラインをからめつつ、オフラインのイベントを後から確認できるといった連携があると、スムースにプロジェクトが進められると説明した。

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