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de:code 2015の基調講演で聞いた珠玉の講演

トヨタのCIOが語るConnected CarとAzure、これからのIT屋

2015年05月27日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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5月26日、マイクロソフトのエンジニア向けde:code 2015の基調講演にゲストとして登壇したのがトヨタ自動車 専務役員である友山茂樹氏。事業開発本部やIT部門のトップを務める友山氏は、トヨタが進めてきたConnected Carの取り組みやMicrosoft Azureの導入について説明すると共に、これからの“IT屋”の役割についても聴衆に語りかけた。

de:code 2015の基調講演に登壇したトヨタ自動車 専務役員 友山茂樹氏

今の車は50%が電子部品で、40%がソフトウェア

 基調講演に登壇した友山氏は、まず17年前の車両をリストアした愛車の「スープラ80」を紹介。直列6気筒エンジンにマニュアルの強化クラッチ、そしてビッグタービンと「まさに前時代のメカそのもの」(友山氏)だが、ナビだけはトヨタが誇る「T-Connectナビ」を装備。「Microsoft Azureに常時接続し、センター型の音声認識を始め、最先端のテレマティックサービスが受けられる。これこそ鍛治屋のトヨタとITのマイクロソフトの今世紀最大の合作だ」とアピールした。

スープラに載せられたトヨタの誇る「T-Connectナビ」

 続いて、友山氏は自動車業界のIT化について言及。「車両の価格比で50%は電子部品。その40%はソフトウェアとなっており、この比率はどんどん高まっていく」(友山氏)。そしてこのITカーはクラウドと接続され、「Connected Car」として新しい価値を提供しているという。単なる交通サービスにとどまらず、たとえば自動車からの情報を活用したビッグデータサービス、あるいは自動車のソフトウェアをオンラインで更新するカスタマイズサービスなど、新たな可能性を秘めたものになっている。「車が単なる移動のためのハードウェアではなく、クラウド配下の情報端末になる。そして将来、自動車ビジネスの付加価値はハードウェアから上位レイヤーのクラウドに移行していく。この変化を誰が予期していたでしょうか?」と友山氏は問いかける。

価格比で見ると、自動車の50%は電子部品、40%はソフトウェアITカーがネットワーク化され新しいサービスの基盤へ

 15年前、当時課長だった友山氏はネットワークにつながる車とそれとつながるデータセンターが必要だと訴えたが、社内は冷ややかだった。「なぜ製造業のトヨタがそんなシステム会社のようなことをやらなければならないのか?これが社内での普通の意見だった」(友山氏)という。

Connected Carの構想に社内は冷ややかな反応だった

 しかし、この友山氏の構想を強く後押ししたのが、現社長の豊田章男氏、そしてパートナーとなったマイクロソフトだったという。その後、トヨタは2002年に国内初の通信機能を持った自動車を投入。現在では、レクサスブランドに標準搭載され、北米や中国にも展開されているという。

Azure導入で加速したConnected Car構想

 そして、こうしたConnected Carの取り組みを一気に加速させたのが、2011年のWindows Azure(当時)の採用だ。この背景にはConnected Car構想のグローバル展開、ビッグデータ基盤の整備、そしてインフラ運用の負荷などの課題があったという。

Windows Azure導入の背景にある3つの要素

 トヨタはオンプレミスのインフラをWindows Azure上に再構築し、新プラットフォーム「TOYOTA Smart Center」を構築。「アジア・中近東へのサービス展開がスピーディに行なえた。また、超小型EVによるシェアリングサービスも実現した」(友山氏)という。さらにビッグデータサービスもいち早く商用化。友山氏は現在走っているConnected Carをプロットした地図を披露し、各自動車の走行時間から交通情報を割り出すことまでやってのけた。友山氏は、「400万台のConnected Carがリアルタイムにカバーされています。いかがでしょうか?」とTOYOTA Smart CenterとAzureのパワーをアピールする。

Connected Carをリアルタイムに地図にプロット

 ではユーザーとしてMicrosoft Azureはどうだったか? 同社では導入前に比べ、29%のコスト削減を実現。インフラ運用にかかっていた人員をサービス開発に振り向けることが可能になったという。また、リードタイムもインフラ構築が1/10になったことで大幅短縮。スモールスタートが可能になったことで、リスクの低減も可能になった。機能面では、ビッグデータ解析にAzure Machine Learningを活用しており、「IT業界の最先端技術を本業にいち早く取り入れられるメリットは計り知れない」とアピールした。

29%のコスト削減を実現リードタイムはインフラ構築が1/10に

 今後はTOYOTA Smart Centerを中心に、自動車、ユーザー、ディーラー、メーカーを有機的につなぎ、異業種・社会インフラとつないだ「Connected TOYOTA」を実現したいという。友山氏は、「私は個人的に自動車ビジネスに変革をもたらすのは、クラウドとビッグデータだと思っています。車は単なるトランスポーターではなく、顧客との接点となってくる。つまりトヨタ自動車は年間1000万台の車を作って、売る会社ではなく、1000万人の接点を世界的に創出している会社である。こう考えると自動車ビジネスの可能性は無限大に拡がります」と語る。

ビッグデータとクラウドを軸に1000万人の接点を作る

 そして、トヨタ自動車が2020年の東京オリンピックでトップスポンサーになったことをアピール。友山氏は「東京オリンピックでは心ときめく次世代モビリティ世界を世界中の人々に、この日本でご覧に入れたいと思っています」と語り、「2020年、五輪はトヨタ。もちろん四輪もトヨタ」と講演を締めた。

五輪はトヨタ、もちろん四輪もトヨタ

これからの“IT屋”に捧げる熱いメッセージ

 クラウドを駆使してビジネスを大きく変革してきたトヨタ自動車。この背景には友山氏の強いリーダシップとテクノロジーに対する強い信頼感があったようだ。講演中、友山氏は、聴衆となるエンジニアに対して、力強いメッセージを送った。以下、全文を掲出する。

聴衆のエンジニアに対してメッセージを送る友山氏

「日本を代表する技術者の皆様がお集まりということで、大変恐縮ではありながら、私がTOYOTAのCIOとして普段心がけていることをお話ししたいと思います」

「特に製造業では、ITという部門は、ともすれば技術・営業・管理部門からの依頼仕事をこなす下請的な組織になってしまいがちです。IT屋としての夢やビジョンにも乏しくなってしまいます」

「私はCIOに就任してから、俺たちが会社を変えるんだと、うちのスタッフにITドリブン、ITイニシアティブを訴え続けて参りました。なぜならば、これからのビジネスにおいて、ITなしでイノベーションは起こりえないからです」

「IT屋が知識や技術をちらつかせる時代は終わりました。これからのIT屋は経営変革のイニシアティブをとらなければならない。IT屋一人一人が自らの手で、ビジネスを、そして商品を変革する。そういう情熱を抱き続けることこそ、これからのIT屋の出発点であるべき。私はそう思います。それでこそITはInnovation Technologyと呼べるのではないでしょうか」

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