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コモディティハードウェアのみならずクラウドにも対応

ハードウェアからデータを開放するIBMのSDS戦略

2015年05月19日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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5月18日、日本IBMはSoftware Defined Storageの取り組みを説明するプレスイベントを開催した。ストレージ仮想化やデータ保護、運用・監視を実現する「IBM Spectrum Storageファミリー」がハイブリッドクラウドの構築に最適であるとアピールされた。

ストレージ仮想化製品を含む「IBM Spectrum Storageファミリー」

 イベントの冒頭に登壇したIBMシステムズ ハードウェア ストレージセールス事業部長の波多野 敦氏は、IBMのストレージ分野における研究・開発の歴史を概観。1914年に同社が投入したパンチカードをはじめとし、1952年の磁気テープ記録媒体、1956年のランダムアクセスに対応したハードディスクドライブなどを引き合いに出し、時代の要請に応じて技術の開発を続けてきたことをアピールした。そして、現在では高速なフラッシュが台頭すると共に、Software Defined Storage(SDS)の流れが加速しているという。

パンチカードからスタートするIBMのストレージの技術革新

 振り返って現在の顧客のニーズを見てみると、ビジネス環境の変化、新時代のアプリケーションの登場、データの増加、ハイブリッドクラウドの需要の拡大などが顕在化。特に非構造化データやクラウド上のコンテンツが圧倒的に増大し、消費の仕方が大きく変わってきているのが現状だ。

 こうした課題に対応するのが、IBMのSDSソリューションである「IBM Spectrum Storageファミリー」になる。

IBMのSDSソリューション「IBM Spectrum Storageファミリー」

 2015年2月に発表されたIBM Spectrum Storageファミリーは、同社のストレージ仮想化製品群をリブランディングし、コントロールとデータアクセスという形にレイヤー化したもの。コントロールレイヤーは、運用監視や自動化を提供する「Spectrum Control」やデータ保護を実現する「Spectrum Protect」などの製品で構成される。同日付でストレージ基盤の管理をクラウド型で提供する「IBM Spectrum Control Storage Insights」が発表。使用度の低いストレージを再利用することで、ストレージのコストをGBあたり最大50%削減するという。

 また、データアクセスのレイヤーでは、SANストレージ、サーバー内蔵ディスク、テープドライブなど、さまざまなハードウェアを仮想化を実現する。具体的には、ストレージ仮想化製品の「Spectrum Virtualize」、IBM XIVをソフトウェアとして提供する「Spectrum Accelerate」、グローバルなファイル共有を実現する「Spectrum Scale」、アーカイブ機能を提供する「Spectrum Archive」などの製品が提供されている。幅広いハードウェアに対応した仮想化レイヤーを提供することで「ハードウェアからデータを開放する」(波多野氏)ことが可能になっている。

 発表会では、XIVをソフトウェア化したIBM Spectrum Accelerateの解説とデモが披露。最小3ノードから15ノードまでに対応し、データが自動的に分散配置。ノードの追加でディスク容量を平準化されるIBM Spectrum Accelerateの機能がアピールされた。

IBMのXIVをソフトウェア化した「IBM Spectrum Accelerate」の概要

クラウドやアプライアンスでもSDSを展開

 IBMのSDSの優位点は、ハイブリッドクラウドを前提に、コモディティハードウェアのみならず、アプライアンスやクラウドなどさまざまな選択肢を提供するのが特徴だ。

 まずクラウドに関しては、IBM SoftLayerでの利用にも対応するほか、複数のクラウドで機密性を確保しながら動的にデータを移動させる新製品「Multi-Cloud Storage Gateway」もα版として提供するという。

IBMシステムズ ハードウェア ストレージセールス事業部長 波多野 敦氏

 また、「まだまだハードウェアの特徴は必要だろうと考えている」(波多野氏)とのことで、専用ハードウェアに対する製品開発や投資は今後も継続。コモディティハードウェアに関しては、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズやシスコシステムズ、ネットワールドなどのパートナーと協業。x86サーバー上にSDSのソフトウェアを提供するベンダーとして販売ルートを拡大するという。

 新興のSDSベンダーに対しては、IBM Spectrum Storageファミリーの実績をアピールする。波多野氏は、「私たちのSDSでは、これまでも本番環境で使われたテクノロジーを取り込んでいる」とのことで、既存製品が高いシェアや実績を持っている点をアピール。さらに、SDS分野においては、700件におよぶ特許を持っており、高い付加価値を提供するという。

 今後はデータアクセスレイヤーの仮想化を構築済みの顧客に対し、コントロールレイヤーのSpectrum ControlやSpectrum Protectを検証用に無償提供。さらにSDS専任のコンサルタントや技術部隊を構成し、市場拡大に尽力するという。

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