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クラウド界隈を揺るがした青森県のコミュニティとはなんだったのか?

クラウドコミュニティと一心同体だった青森県庁の杉山さんの3年

2015年05月21日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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「思いこみ」を外せば、役所と民間はもっといろいろやれる

 コミュニティに深く根ざした青森県のIT振興。しかし、行政サイドがここまで踏み込んだ施策を手がけるのは、全国の中でも珍しい例だ。竹下さんは先日経験した某省のヒアリングで出た質問で、行政側の立場を理解したという。「われわれ行政がどう関与するのか? なにができるんだという質問が出た。おそらく参加者の多くもそういう意識で、みんなピンと来てなかった。まさか行政が役立てると思ってない」と竹下さんは語る。

 こうしたピンと来ない人たち、もしくは既得権益に縛られた抵抗勢力をどのように巻き込んでいくのか? これに対して、杉山さんは「たぶん『思いこみ』を外すことだと思う」と答える。「コミュニティは民間のものだ、役所が入ってもうまくいかない、役所の仕事はこうでないといけないという固定した考えを持っていると、たぶんうまくいかない。話を聞いたら、役所の方がやりやすいことがいっぱいある」(杉山さん)。

「たぶん『思いこみ』を外すこと。固定した考えを持っているとうまくいかない」

 セミナーと言えば、大学の偉い先生を呼んでやるものという主催者側の思いこみ、役所に活動への支援をお願いして良いのかというコミュニティ側の思いこみ、地元だけに利益誘導しなければという官公庁側の思いこみ。さまざまな立場の人が持つ思いこみが外れ、和気藹々とした真のコミュニティが青森では醸成されつつある。「中の人からするとわからない。でも、参加している人たちもすごく変わってきているようだ」(杉山さん)。

春はお別れの季節!ITから外れる杉山さんの次は?

 こうして3年間、ITとクラウドに尽力してきた杉山さん。最近ではJAWS Festa 2014やCROSS、CivicTechをはじめ、さまざまなイベントに青森県の取り組みを紹介している。そして、次年度以降の取り組みも、すでに2月のイベントで明らかにされている。

 杉山さんは「最初の2年は土作りのフェーズだったが、2015年度以降は事務局を実行委員会形式に変えて、企画も最初からコミュニティといっしょに作って、民間からの自主的な動きを増やしていく」と語る。その他、仕事につながるネタをネットワーキングに力を注ぎつつ、学生と企業を連携させたようなイベントを進めていくとのことで、6月10日のキックオフ総会を機に、次の2年はいよいよ実業に役立つ実りのフェーズに入る。

 しかし、杉山さん自体は2014年度をもってIT振興の担当から離れる。公務員の性として致し方ないが、活動がユニークだっただけに、惜しまれるのも事実だ。しかし、杉山さんは、「言いたいことは言ったし、やりたいことはやった。あとは次の担当者が好きにしてほしい」と言い切る。

 異動を何度も経験し、引き継ぎを続けてきた杉山さんはつねに引き際を意識していたという。「仕事が自分に属するのはよくないので、枠や仕事の仕組みは作ってきた。前任者が細かく見るのはよくないので、次の担当者に渡して、冷たいくらいに突き放す。コミュニティの裏方として暗躍するようなことはないですよ(笑)」と語る。交流会の3次会あたりで、また杉山さんに会いたい。

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