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後払い決済はスマホに最適?ネットプロテクションズが急成長する理由①

2015年04月13日 05時08分更新

記事提供:通販通信

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商品が届いてから代金を振り込む後払い決済は、消費者にとっては安心だが、ネットショップ運営会社にとっては代金未回収のリスクもある。こうした未回収リスクを保証する後払い決済サービス「NP後払い」が急速に普及している。同サービスの導入実績は2万店を超え、累計ユーザー数は5000万人を突破。後払い決済分野で急成長を遂げた(株)ネットプロテクションズの柴田紳社長に、成功の秘訣や今後の展望について話を聞いた。

苦節10年、大手企業の採用でブレイク

今では後払い決済のトップ企業として君臨する同社だが、成長するまでは厳しい道のりを歩んできた。同社は2000年に当時の創業者によって設立され、2001年にベンチャーキャピタルのITX(株)に買収された。当時ITXに在籍していた柴田氏は事業再生を託され、取締役として同社に出向。しかし、買収当時の後払い決済事業は名ばかりで、事業としてはまったく機能していない状態だった。

2000年当時、カタログ通販企業が自社通販の支払い手段として後払いを提供することはあったが、ネットショップ運営者の後払い決済の未回収リスクを100%保証するサービスは日本に存在しなかった。柴田氏は「当時はITやECのことをまったくわかっていない状態でした。ゼロベースから世の中に存在しないサービスを立ち上げるのは、筆舌に尽くしがたい苦労がありましたが、再建を任されて出向した以上、やるしかなかった」と振り返る。株主から将来性がないと批判され、営業先からは「こんな事業がうまくいくわけがない」と嘲笑され、さまざまな会社に提携を断られた。社内でも20代半ばの取締役に対する風当たりは強く、「外にも内にも賛同者がいない状態」だったという。

しかし、3年後にはなんとか黒字化の目途が立ち、柴田氏は04年に社長に就任。当時は楽天が楽天市場の事業規模を拡大させ、クレジットカード取引も伸び始めた頃だった。
「1つひとつの改善を積み重ねて、基盤を固めてきました」(柴田社長)。そしてオペレーションの構築や営業体制などの社内体制を確立させた10年、大手企業が相次いで同社の後払い決済を採用し、11年以降は売上が急伸している。11年度の売上は23億円で、12年度は35億円、13年度は47億円と急成長を続けている。利用者数は09年に1000万人を突破して以降、12年には2000万人を超え、13年にはその倍となる4000万人を突破した。柴田氏はブレイクのきっかけとして、「大手企業の案件に対応できる社内体制が整ったことが大きい。大手との取引で信用力が高まるなど、11年以降は色々なことが噛み合ってきました」と語る。

最近ではスマートフォンと後払い決済の相性がいいことも、同社の事業を後押ししている。スマホでのネット通販は、PCよりクレジットカード番号の入力が面倒で、後払い決済が選択されやすい。スマホサイトの新規購入では、後払い決済による注文率が、クレジットカード決済に比べて4.7倍だったというデータもある。

グラフ

「オペレーション構築」で事業を拡大

柴田社長は成長の秘訣に「事業規模に合ったオペレーションの構築」を挙げた。「後払い決済は、事業を拡大させようとすると大きな壁が立ちはだかります。膨大な件数を安いコストでさばくオペレーションを構築することが最大の難関で、このシステムを作り上げることは一朝一夕ではできません。事業規模が小さい段階では柔軟性が高く、イレギュラーの事態が起きても対応できます。しかし、システム化すると柔軟性がなくなり、動きづらくなってしまう。事業規模に即したオペレーションを10年以上かけて構築してきましたので、この部分に企業価値が凝縮していると思います」と語った。

また、後払い決済事業の難しさは、与信の判断にある。与信のチェックを厳しくすれば、未回収リスクは減少するが、せっかく新規購入しようとした見込み客を失うことにもなりかねない。柴田社長は「弊社は間違いの与信NGを出さないことに真摯に取り組んできました。それがポリシーでもあります。何でも否定的に捉えてNGを出せば、未回収リスクは下げられますが、NGを出された購入者は2度とそのサイトを利用しなくなるかもしれません。見込み客を追放してしまうような行為なので、ここを間違えるのは致命的。ショップのお客様だけでなく、後払いを選択した自社のお客様も失ってしまいます。弊社はこの判断をどこよりもこだわっていると自負しています」と話した。

クレジットカードでの決済は本人が特定できているのに対し、後払い決済は会員登録もなく、素性がわかりにくい人とのやり取りとなる。詐欺のケースも実際にあり、見込み客とそうでない客の見極めは、後払い決済事業の成否に関わる。ここで失敗すると見込み客を失ったり、危険性を見抜けずに未回収になってしまう。後払い決済事業をゼロベースから立ち上げ、苦労してきた同社の経験と実績が、与信の見極めを確かなものにしている。

(つづく)

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<プロフィール>
■柴田紳(しばた しん)
(株)ネットプロテクションズ  代表取締役社長(CEO)
一橋大学を卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)に入社。ベンチャーキャピタルのITX(株)在籍時に事業再建を任され、(株)ネットプロテクションズに取締役として出向。2004年、同社の代表取締役に就任。

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