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最新ユーザー事例探求 ― 第43回

クラウド型のメール配信サービスで高い拡張性を実現

確実なメール配信のためにチャットワークが採用したSendGrid

2015年04月13日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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企業向けのチャットサービスを提供するチャットワークは、トランザクションメールにクラウド型の「SendGrid」を導入した。メール配信がスケールしないという課題を解消するとともに、あらゆるユーザーにメールを確実に届けるという価値も得られたという。

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会社をまたいで誰でも使える「チャットワーク」

 「ビジネスが加速するクラウド会議室」を謳うチャットワークは、企業向けのチャットサービスを提供している。基本となる「グループチャット」のほか、「タスク管理」「ファイル共有」「ビデオ/音声会議」の4つをセットにして提供しており、ビジネスコミュニケーションの促進を図る。ChatWork 基盤開発部マネージャーの須藤裕嗣氏は、「チャットの会議から議事録を作り、そのままタスク管理までできます。タスクが終了すると全員に通知が行くので、やり忘れや漏れがなくなります」とサービスについて説明する。

ChatWork 基盤開発部マネージャー 須藤裕嗣氏

 クラウド型なのでサーバーは不要で、会員登録するだけで利用可能。Webブラウザのほか、iOS、Androidのアプリからも利用でき、社外とのコミュニケーションにも活用できる。当初は中小企業向けでスタートしたが、KDDIとの提携によりエンタープライズのユーザーも増えており、現在導入は5万7000社にのぼるという。

 チャットワークのサービスのポイントは「誰でも使いやすい」という点。機能を足さない、複雑な部品は使わないなど、とにかくシンプルさを追求している。須藤氏は、「仕事している人全員が使えるツールにしようとしています。一般企業のユーザーは多いですが、農家や病院の方も使っています」と語る。

 前職でチャットワークを使っていたというChatWork WEB開発部の尾﨑耕多氏は、「みんな忙しすぎて、社内のコミュニケーションが希薄になっていたし、口頭で話していることをきちんとログに残したいと思っていました」という理由でチャットワークを導入し、使いやすさに魅了されたという。

ChatWork WEB技術部 尾﨑耕多氏

1時間でメールを送りきれなくなってきた

 ビジネスが拡大する中、チャットワークで顕在化してきたのが、メール配信の負荷だった。チャットワークはログインしていないユーザー向けに未読を通知するメールの機能を持っている。しかし、ユーザー数の増加と共に、メール配信数も拡大し、大きな負荷がかかるようになっていた。

 須藤氏は、「ピークのときで1時間で3~4万件で1日では30~40万件くらい。他社のメールサービスを使っていたのですが、負荷が重くなっていました。スケールするためには、サーバーを足す必要があり、コストがかかることがわかりました」と振り返る。尾﨑氏も「1時間に1度くらいで配信するのですが、1時間で送りきれなくなったんです。未読メールが届いたのを見てチェックしたら、(配信が遅すぎて)未読をすでに読み終えた後という情けない状態」と語る。こうした課題を解決すべく、チャットワークが導入したのが、クラウド型メール配信サービスの「SendGrid」だ。

 グローバルで高い実績を誇るSendGridは、SMTPやWeb APIを介してメール配信を行なうサービス。Webサービス事業者はSendGridを介して、ユーザ登録通知、アラート、支払い確認、パスワードリマインダなどのトランザクションメール、メールマガジン、ニュースレターなどのマーケティングメールをユーザーに確実に配信できる。

 日本でSendGridの販売代理店を務めている構造計画研究所の事業開発部 SendGrid エバンジェリスト中井勘介氏は、「国内のメールサービスの多くはクラウド型と言いつつ、ユーザーにサーバーを提供するASP型。そのため、チャットワークのように配信数が増えると、どうしても限界に達してしまうんです」と指摘する。尾﨑氏も、「ビジネスがスケールしているときに、メール配信の開発に工数をとられたくない。だから、スケールできるサービスじゃないと導入できないと思っていました」と語る。

構造計画研究所 事業開発部 SendGrid エバンジェリスト中井勘介氏

そもそもメールは届かない?「送れば届く」という価値

 拡張性の高さに加え、SendGridの魅力となるのが、メールを確実にユーザーに届けられるという価値だ。

 実はメール配信は会員DBの宛先に対して単にメールを送信するだけで全員に届くわけではなく、さまざまな課題がある。たとえば、UserUknownのエラーなのに再送を繰り返してしまう場合は、ふるまいとしてはスパムメールと同じになるため、受信側のブラックリストに入る可能性がある。宛先がGmailの場合、送信が失敗すると、数時間は受け取りが拒否されるので、メールがバウンスしてしまうという。

 また、不正なメールのリレーを防ぐためのDKIMやSPFなどの送信者認証にも対応する必要があるほか、日本の場合、通信事業者が迷惑メール対策のフィルターを多段に用意しているため、すべてのユーザーに確実にメールを届けるのは意外と難しい。こうしたフィルターをかいくぐるため、送信側が毎回IPアドレスを変えて送信する事業者がいるほか、ユーザー自体がドメイン指定のフィルタをかけている例も多いため、確実なメール配信は一筋縄ではいかないのだ。

 中井氏は、「日本ではメールは送ったら届く、届いて当たり前と考えている人が多い。でも、実際はスパムメールが増えたおかげで、送信側でやらなければいけないことが増えているんです。その日だけ100万通送るとかは、いきなりは無理です」と指摘する。

「でも、実際は送信側でやらなければいけないことが増えているんです」(中井氏)

 SendGridでは、メール配信を確実に行なうため、バウンスメールの処理を機能として実装している。中井氏は「Amazon SES(Simple E-mail Service)でも大量のメール送信は可能なのですが、バウンスした場合の処理を自前で構築する必要があります。SendGridの場合は、バウンスしたら自動的にリストに入り、送信しない。メール配信はSendGridにお任せし、開発者は本業に専念できます」とアピールする。コスト面で見れば、Amazon SESの方が優れていることも多いが、バウンス処理などを作り込む工数や運用負荷を考えると、SendGridの方が優れているというわけだ。

 送信先に関しても、GmailやYahoo!メール、Outlook.comなど米国のサービスに関してはほぼ問題なく送信可能。各種、送信元認証にも対応しており、宛先のサーバーとの信頼関係を構築してからメールを送るため、正しくメールを配信できるという。また、オープンやクリックなどのユーザー行動をトラッキングできるため、マーケティングでの利用にも最適だという。さらに、当初不十分だったSendGrid公式ライブラリでのマルチバイト対応も構造計画研究所のフィードバックを元に改良されており、現在は安心して日本語メールを送れるという。

(次ページ、SendGridの独自機能で効率的にメールを配信)


 

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