ドローンの技術的素性、登場できた背景、驚くべき進化の速度
それでは、このドローンになぜ我々が興味津々なのか、具体的にその理由をあげて説明することにしよう。
1.ドローンは“スマートフォン”から進化、次はどこなのか?
それは、ちょうど絶滅した恐竜がいまでは羽毛に覆われており、鳥へと進化したとされる説が有力視されるようになってきたようなことだ。ドローンの先祖は模型を含めてヘリではなく、さまざまなセンサーを備えた“スマートフォン”やバランスをとって歩く“二足歩行ロボット”である。我々は“機械の種”の進化を目の当たりにしている。今年1月にラスベガスで開催された見本市International CESでも、インテルやクアルコムなどデジタルの盟主たちがドローンのデモを行っている。
2.デジタルの“新大陸”の特産物がこれだ
1903年のライト兄弟による初飛行の成功は、それまでヨーロッパ中心だったテクノロジーの発信地が、新大陸に移ったことを象徴する時期のできごとだった。ドローンでは、中国とフランス、ドイツなど各国で作られているが。それは、“デジタルテクノロジー”という新大陸の産物というべきだ。誰でも数十ドルの専用コントローラなどの部品を買い、本体とプロペラを3Dプリンタで出力するなどしてとりあえず飛ぶものが作れる。製品化したいならKickstarterで資金を集めればよい。
3.ハードウェアの進化スピードがソフトウェアに近づいてきた
Linuxの推進団体Linux Foundationが、昨年10月、ドローンのためのオープンソースソフトウェア/ハードウェアのプロジェクト“Dronecode”を発表。コンピューターの歴史を振返ると、このオープンソース化がドローンの進化をさらに加速させる可能性も高い。このDronecodeには、日本でも読者の多い『フリー』や『メーカーズ』の著者クリス・アンダーソンが立ち上げた3D Robotics社というドローンメーカーも参画している。オープンソースによるモノ作りがどう機能するのかも興味深い。
4.“空間移動”あるいは人類は“中空”を自由に扱えるようになる
今年のバレンタイン時期に香港は九龍半島の脇のほうからビクトリア湾をまたいで、100万ドルの夜景で有名なビクトリアピークを迂回して香港島の裏側にあるレパレスベイまで、自動パイロットでチョコレートを運ぶ空撮映像をあげた人がいた。所要時間はわずか15分、フェリーやトラムやバスを使ったらとても1時間ではすまないコースである。客の注文前に出庫する特許まで取得しているAmazon.comなら執着しようというものだ。というよりも、低コストで“空”に位置づけられるのでプレーン型の無線基地局という話はあるが、リアルタイム・グーグルアースだって可能になる。
5.ドローンにはさまざまな形がある
商用利用ではすでに規制がある米国は産業活性化と9.11以降のセキュリティ問題との間で悩んでいる。今年2月14日にFAA(連邦航空局)は商用利用に関する規制案を発表したが、2.5kgの荷物を積んで時速100マイル(時速161km)まで出してOKなのに“目視飛行”に限るというチグハグな内容だった。まだ、ドローンの全体像というのが整理されていないというのが本当なのだろう。本当にヤバいのは、Harvard Robotics Lab.のコイン大の飛翔ロボットのようなものかもしれない。
危険性をはらむ道具は、何もドローンに限らない
3月に松山で大学や総務省四国総合通信局などの官、そして企業の専門家が集結した“情報セキュリティシンポジウム”に参加させてもらったが、時代は“サイバーセキュリティ”から“サイバーフィジカルセキュリティ”へと動いている。
組み込み機器の解析情報をあつめたサイトを見ると監視カメラをはじめハッキングに使える情報が大量に掲載されているそうだ。脆弱性のないシステムはないというのが専門家のスタンスなのだ。ドローンだけがヤバイのかというとまるでそんなことはない。
超小型ドローンで撮影した映像: