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アプリで稼ぐためのマネタイズ手法4つのパターン (1/2)

2015年03月26日 11時00分更新

文●池村 修/エキサイト

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この連載が本になりました!

「ランキングが上がらない」「開発費が回収できない」アプリを作って終わりにしない現場のノウハウを凝縮。 「DL数が伸びない」「DAUが増えない」「課金されない」スマホアプリビジネスの悩みを、ASO、広告運用、内部改善など、豊富な事例をもとに解説。iOS/Androidマーケの全体像がつかめる国内唯一のアプリマーケ実践本です。連載時から大幅に加筆修正し、最新情報を盛り込みました!

事例に学ぶスマホアプリマーケティングの鉄則87

価格:2,700円 (本体2,500円) /形態:B5変 (208ページ)
ISBN:978-4-04-866451-6

スマートフォンアプリのマーケティングノウハウを紹介する本連載。前回の記事では、アプリ間相互送客でお金をかけずにアプリを広める方法と事例を紹介しました。

第17回(最終回)では、アプリを継続的に運用していくために欠かせない、マネタイズ手法について紹介します。

アプリのマネタイズ方法は大きく2つ

この連載ではこれまでさまざまなマーケティング手法を駆使してアプリのダウンロードを増やす方法を紹介してきましたが、収益がなければビジネスの継続はできません。マーケティング施策によってダウンロード数を伸ばせたら、アプリのマネタイズ手法を本格的に検討しましょう。

スマートフォンアプリのマネタイズには、大きく分けて、有料アプリを販売してユーザーから料金を徴収する「課金モデル」と、アプリ内に広告枠を設置して収入を得る「広告モデル」の2つの手法があります。さらにもう少し細かく分けると、以下の4つのパターンに分類できます。

  1. 課金モデル
    • 有料アプリを販売する
    • アプリ内課金を実装する
    • キャリアの「使い放題サービス」に参加する
  2. 広告モデル
    • アプリ内に広告を掲載する

今回は、それぞれのマネタイズ手法の特徴と、実際に収益を上げるためのポイントを解説します。

認知度が勝負!有料アプリで収益を上げる

「有料アプリ」は、その名のとおり、アプリ配信時に販売価格を設定して配信し、ユーザーから料金を徴収するマネタイズ手法です。販売価格は、Google Playでは99円〜2万円、App Storeでは100円〜9万8800円の間で設定できます。いずれも、設定した価格の30%がグーグルやアップルの販売手数料として差し引かれて開発者に支払われます。

有料アプリは誰でもリリースできますが、無料アプリが席巻するアプリストアで実際に売上を上げ、マネタイズするのは簡単ではありません。エキサイトでは、スマートフォン黎明期に有料アプリを多数配信しましたが、アプリの魅力をユーザーに十分に訴求できず、十分な利益を上げるには至りませんでした。

有料アプリで一定の売上を上げているのは、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーといった誰もが知っている有名ゲームアプリや、睡眠をサポートするアプリのような根強いニーズのある実用アプリがほとんどです。

有料トップには誰もが知っているアプリが並ぶ

とはいえ、有料アプリでマネタイズする方法がまったくないわけではありません。有料アプリの売上を上げるためにエキサイトで試した施策を紹介します。

制限付きの無料版で体験して有料アプリへと誘導する

機能に制限を設ける、利用時間に制限を設けるなど、お試し用の無料アプリを開発し、気に入った人を制限のない有料版アプリへ誘導します。典型的なフリーミアムモデルで、エキサイトでは「音ケア」というヨガアプリで取り組みました。

無料版から有料アプリへ誘導する

無料版の「音ケアLITE」から有料版の「音ケア」へはある程度のユーザーが移動しましたが、残念ながら購入にはほとんど至らず、大きな収益にはなりませんでした。

有料アプリの大幅値下げセールを期間限定で実施

無料アプリから有料アプリへの誘導は可能だとわかったので、無料版の提供と合わせて有料アプリの価格を大幅に値下げするキャンペーンを実施し、全体の売上アップを狙ったのが次の施策です。

2012〜2013年の年末年始にアップルが実施した「iTunes 12 DAYS」に、エキサイトの有料アプリ「おとえほん」が選出されました。iTunes 12 DAYSは、12種類の有料アプリを1日限定の日替わりで無料にするキャンペーンです。

「iTunes 12 DAYS」当日のおとえほん

「おとえほん」にはシリーズとして複数の姉妹アプリがあります。このチャンスを利用し、普段は500円で販売しているアプリをiTunes 12 DAYSの当日のみ半額の250円で販売し、App Storeでの露出によって姉妹アプリのダウンロードを促進します。

おとえほんシリーズ

結果、無料配布の「おとえほん」が1日で32万ダウンロードされ、半額で販売した「おとえほん」シリーズも計7000ダウンロードを記録しました。たった1日で180万円近くの売上となり、知名度が低くマネタイズが難しい有料アプリでも、ダウンロード数を稼げれば売上を伸ばせるとわかりました(詳細はブログにて公開中)。

試してから課金する「アプリ内課金」

アプリ自体は無料で提供し、ある機能を使うときに課金を促す方法が「アプリ内課金」です。アプリ内課金も有料アプリと同様に開発者側で価格を設定でき、売上の30%が手数料として差し引かれます。現在、アプリの課金モデルの中では主流になっており、以下のようなパターンがあります。

ゲームアプリ:

  • プレイは無料で、アイテムを購入すると先に進みやすくなる
  • 途中までは無料で、「ポイント」を購入するとゲームを続行できる など

ゲーム以外:

  • コンテンツの一部は無料で、料金を支払と続きを読める
  • 基本機能は無料で、月額料金を支払うとすべての機能が利用できる など

アプリストアの売上トップ(トップセールス)を見ると、アプリ内課金で月商数十億円を売り上げるアプリがひしめき合っており、何もしなければマネタイズは困難です。エキサイトではアプリ内課金でマネタイズするために次のような施策に取り組みました。

売上トップはアプリ内課金が主流

有料アプリ同様、セールに効果あり

エキサイトのアプリ「寝たまんまヨガ」では、無料コンテンツの続きを99円で販売するとともに、アプリ内課金によって別コンテンツを追加購入できるようにしています。

有料アプリで実施した例に似ていますが、寝たまんまヨガがGoogle Playでフィーチャーされたタイミングで課金コンテンツを値下げし、売上を伸ばすことに成功しました。この方法では、ユーザーがコンテンツを追加購入すると期限なく利用できるので、利益が確保できる販売価格に設定することが大切です。

Push通知で永眠会員の掘り起こし

エキサイトと講談社が共同で提供しているコミックアプリ「Dモーニング」は、最新号の一部のマンガを無料で閲覧できます。続きを読んだり、継続して読んだりするには、月額500円支払い、有料会員に移行してもらう必要があります。いったん申し込むと、ユーザーが解除しない限り毎月課金されるため、安定した収益を上げることができます。

ただし、アプリの月額課金はまだまだ事例が少なく、多くのユーザーにとって習慣化していないため、有料会員への移行には大きなハードルがあります。そこで、Dモーニングでは、無料アプリのダウンロード数を稼ぎ、以下のような施策で有料会員への移行を促しています。

  • アプリ起動数が多い日や時間帯に、Push通知を送り、課金のメリットをアピール
  • 課金のメリットになる新しいコンテンツの追加時にアプリ内やPush通知で告知

これらの施策により、課金率を約20%上げることに成功しました。また、課金を促す施策は、同時に退会率を下げる効果も得られました。

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