Apple Watch発表、有識者はこう見る
西田宗千佳氏――「Apple Watchは“好ましい”作り込みだが市場開拓の可能性は未知数」
2015年03月12日 12時00分更新
アップルが3月10日、「Apple Watch」を発表した。その見どころについて、フリージャーナリストの西田宗千佳氏にコメントをいただいたのでご紹介する。
現状もっともよくできたスマートウォッチのひとつ
正直、まだ、評価が難しい。
Apple Watchについては、こう言わざるを得ない。
できることについては、Apple Watchも、すでに登場しているAndroid Wearなどのライバルも大差ない。そのため「Apple Watchでなければならない要素とはなにか」がわかりにくい。また、多くのことが「スマホを取り出せばできる」ため、買うに至りづらい……という欠点についても、明確な答えが出ることはなかった。昨年9月の発表から変化はないように見える。
とはいうものの、その目指す方向性はだいぶ見えてきた。
同じ「通知」であるが、表示のなめらかさはAndroid Wearより上。スクロールなどの操作には「マジッククラウン」があり、タッチ操作についても「タッチ」と「プレス」の違いを判別できるため、操作の多様性は高い。振動感知についても「Taptic Engine」によって細やかな通知が出来る。ハードが高価な分、仕上げもいい。そのあたりの作り込みは他のスマートウォッチとの差別化点であり、新鮮な点だ。現状もっともよくできたスマートウォッチのひとつと言える。
だが、その良さを生かすには、Apple Watch用のアプリケーションが増える必要がある。それには、アプリベンダーに、他のスマートウォッチより市場性が豊かだ、と認めさせる必要がある。
アップルは、Apple Watchを安くしなかった。デジタルガジェットとしての価格であるの「Sports」モデルのみで、それ以外は「時計」に合わせた。その結果、買う人の数は減るかも知れない。一方、アップルの利益率は上がるし、購入した人々がアプリやサービスに支払う費用は多くなる傾向があるだろう。すなわち、ビジネスとしてはシュアになるし、他との差別化もわかりやすくなる。
そうした戦略がすべてうまく回るかどうか。古典的な鶏と卵の問題であり、突破できる時は意外なところからスルリと道が開けそうだ。少なくとも、今のままのライバル製品よりは有望と感じる。だが、スマートウォッチというやり方では扉がそもそも開かない可能性も、考えておいた方がいいだろう。
西田宗千佳(にしだ むねちか)
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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