リリースから10か月で200万ダウンロードを達成した、人気のカップル専用アプリ「Couples」。そのUIデザインを手がけたエウレカの亀谷長翔氏が、スタートアップデザイナーが集うイベント「design jam vol.1」で、ヒットを支えたUIデザインの秘訣を語った。
「電卓っぽい」「LINEと違う」——伝わらなかったデザインを改善
「デザインはサービス成長のための手段」と語る亀谷氏が、成功のポイントとして挙げたのが、「サービスの成長フェーズ別にデザインの判断軸を変えること」。Couplesの場合は、「リリース前」「リリース初期」「メジャーアップデート時」と3つにフェーズごとに判断軸を定めた。
フェーズ1の「リリース前」では、ペルソナを判断軸にした。開発途中のCouplesをもとに実施したグループインタビューで寄せられたのが、「(画面が)白くてつまらない」「電卓っぽい」「文字が見えない」といった辛辣な意見。「自分ではクールだと思っていたデザインが、実際には伝わらないことがわかった」(亀谷氏)。
そこで、グループインタビューの結果をもとに新たなペルソナを作成。世界観を再確認し、テーマカラーやアイコンのデザインなど、リリース1カ月前になってUIを全面的に見直したという。
「新規サービスを作るときは、他社サービスや流行を意識しすぎたり、自分の感覚に頼りがち。でもそれでは将来使ってくれる人を無視したデザインになってしまう。リリース前の時点では判断軸をペルソナに集中させることが重要だ」(亀谷氏)。
第2フェーズである「リリース初期」では、他社サービスを判断軸にした。細かい改善を積み重ねて完成度を高めていくにあたって、ユーザーが求めているレベルを明確にする必要があったためだ。
当時のCouplesには、「LINEと違って使いにくい」「スタンプが少ない」といったユーザーの声が寄せられ、「かなり辛い状況だった」(亀谷氏)。そこで、ユーザーが求める他社サービスのレベルを「LINE」と設定。「いきなりLINEを超えるのは難しい。まずは『並ぶ』ことを目指した」という。
具体的には、吹き出しの色や形、文字のサイズといった細部を他社サービスを研究して改善。加えて、より利便性を高める独自の機能や、Couplesの世界観に合ったUIを実装していった。
第3フェーズである「メジャーアップデート時」は、Couplesにとって成長期にあたる。このときのデザインの判断軸に設定したのが、ユーザーの声(VOC)だった。
大幅な改善のタイミングであるメジャーアップデートでは、「やりたいことがたくさんある状況」(亀谷氏)で、混乱しがちだ。そこで、ストアのレビューや問い合わせなどを分類し、挙げられている数の多さやサービスとの関連性から優先順位をつけて取り組んだ。
中でも象徴的だったのが、Couplesの売りの1つだった「スライドショー」に対するユーザーの声。トップ画面で2人の思い出の写真を流す機能で、「カップルがきゅんきゅんする、感動的な機能」(亀谷氏)と自信を持っていたという。
だが、寄せられたユーザーの声は「パケットを食いそう」「充電が減る」「恥ずかしくて外でアプリを開けない」など散々なもの。「いまとなっては考えればわかることだが、当時は言われないとわからなかった」(亀谷氏)。
そこで、スライドショーには停止ボタンをつけ、デフォルトでは停止状態にした。写真も選べるようにした結果、不満の声はなくなったという。
フェーズ3が終わった現在、亀谷氏らは新たなデザイン評価軸を設けて、さらなる改善に取り組んでいる。
「サービスの成長にコミットするために、デザイナーは成長の段階に応じてデザインの判断軸を変化させることが大事だ」(亀谷氏)。
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design jam vol.1は「経営×デザイン」をテーマに3月10日、都内で開催。このほか、Goodpatchの藤井幹大氏、ココナラの新明智氏らスタートアップ企業のトップデザイナーが登壇し、マネジメントやチームビルディグの取り組みを語った。
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