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学校では教えてくれないIT業界 第6回

履歴書の右側を普通に埋めるだけで上位に入る

在学中にオススメしたい履歴書の右側を鍛えるキャリア形成

2015年03月09日 09時00分更新

文● 久松 剛(ネットマーケティング )

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 いよいよ新卒採用解禁を迎えました。前回のコラムでは学歴を問わず有能な人材はたくさん居て、学歴という尺度に縛られるがためにそうした人材と企業が接触できていない現状についてお話ししました。

 何らかの尺度で足切りをしているような企業の選考を除くと、履歴書の左側(経歴・学歴を列挙することによる団体名ベースの在籍経験)だけではなく、右側(自己PRやできること・やってきたこと、経験)を強くしていくことで選考担当者に響きやすくなります。

 大学生活というと基本的に授業・研究(ゼミ)・課外活動(アルバイト・ボランティアなど)の3つの要素より構成されます。履歴書の右側を鍛えていく上で何が有効なのか、+αの価値をどう出していくのかをお話していきます。

そもそも空欄を埋めるだけで上位3割になれる

 以前も紹介しましたように、求職者の殆どは一部の大企業や有名企業以外への応募については就職活動のフェーズに関わらず「ほぼ丸腰」でやってきます。履歴書の右側を普通に埋めるだけで上位3割になれます。さらに業界への適性などを選考担当者に想像させることができれば相当有利になります。

 これまでエンジニアの採用担当として新卒学部生・大学院生に接してきた印象をまとめると、はっきりと内定を出すことができるイメージが湧いた方々の特徴は以下の3点でした。

  1. 実務に近いスキル
  2. 論理的な思考力、勘所
  3. 一緒に働くイメージ

 3番目は相性と同義なので置いておくとして、最初の2点について大学時代に上げるためにはどうするべきでしょうか。

授業のみのプログラミング経験は主張する価値はない

 就職活動において主張しても響かないのが授業です。例えば情報系のプログラミング授業の場合、授業で得られる範囲のプログラミングスキルはごく一部の高難易度のものを除いてゲームで言うところのチュートリアル終了相当です。「授業を受けて卒業しました、以上。」だと授業テキストや本、Webサイトに載っているサンプルプログラムの丸写しとの差異が見えません。論理的にさまざまな要素を組み合わせ、理解し、使いこなせますと言い切るためには授業や課題の枠を出て、自分なりに+αの拡張を見せる必要があります。

 また、プログラミングに関わらず、研修をする余裕がある企業であれば、研修期間を終えるころにはプログラミング授業の受講経験の有無くらい容易に無かったことになってしまいます。

 授業の先にあることに取り組みましょう

年々遠ざかる大学研究室とビジネスの距離

 授業の上位に位置する存在として研究室(ゼミ)があります。別の回で改めてお話をしますが、往々にして(特に情報系の)大学研究室の進んでいる道と、IT系ビジネスの道は年を追うごとに遠くなっている傾向があります。(参考:学校では教えてくれない就職先選び)極端な場合は「もう来ない未来を創っている」ケースすら見られます。

 例外的に産学共同研究に取り組んでいる研究室は、長引く景気低迷の昨今にあって予算を捻出するだけの価値や名目が「産」、つまりビジネス業界で発生しているということを示します。

 加えて学術とビジネスの間で取り交わされた大義名分も理解しておくと、面接の際のアピールポイントとして強みにもなるでしょう。

プログラミングアルバイト・インターンは将来への助走であり保険

 12年間大学人をやっていたこともあり、単位は取って欲しいし研究もして欲しい、1日でも多く研究室に来てほしいというのは多くの教員の願望です。私もそう発言していた一人でした。しかしビジネス業界に身を置いた今、敢えて就職を見据えた際に学生時代の経験としてお勧めしたいのが実務に近いアルバイトやインターンです。

 渋い選択の例として、アルバイト情報誌などを探していると中小SIerなどがちらほらと見つかります。アルバイトプログラマが主力という企業も多々あります。こうしたところで実務としてのプログラミングを行い、テストや納品まで経験できると即戦力への道が開けていきます。何よりもIT系への適性が分かるという点からも強くお勧めしたいところです。

 もうひとつのメリットとして、転職を繰り返すとよく思われない職務経歴欄にあって、インターンやアルバイトなどは特別書く義務はないために様々な会社や業種を内側から見られるということがあります。

 一部の企業を除いてそのまま社員登用されるケースも少なくありません。特に中小企業の場合は社員になった際に通常の新卒や通常の中途とは違う、妙に発言権を持った存在になれる場合もあります。

 卒業できる範囲、教職員や先輩を泣かせない範囲での取り組みをお勧めします。

オススメしにくいアルバイト・インターン

 反対にオススメしにくいアルバイト・インターンというのもあります。

 例として新規事業コンテストを含むものがあります。就職テストの一環としてある場合の参加はやむを得ませんが、ブレインストーミング・企画・プレゼン・ハッカソンを経ていくと、学園祭実行委員に似た高揚感やその企業への一方的な信望にも似た希望が膨らみやすくなります。新しいことを仲間と提案し、それが認められる過程はかなりな快楽です。しかしそれとは裏腹に就職してからの実務からは遠く何もわからないという状況に繋がりがちです。

 また、表向きはプログラマ募集でも実質はHTMLタグ編集だったりデータ入力だったりする例も、履歴書の右側を鍛えるには弱いものとなります。同様に、エンジニア志望でありながらも漫然と他業種のアルバイトを続けるのも得策とは言えません。修士以降であれば尚更です。

 就職活動中の皆さんにとっては履歴書の見直しに、在学中や入学を控えた皆さんには今後の学生生活の計画に参考になれば幸いです。

筆者紹介──久松 剛


著者近影

 ネットマーケティング システム開発本部 サービス開発部 インフラチームマネージャ。慶應義塾大学政策メディア研究科博士。2000年より村井 純環境情報学部教授に師事。在学時の専門は次世代インターネット、リアルタイムストリーミングなど。IT革命・事業仕分経験後に2012年6月より現職。FacebookマッチングサービスOmiai、広告運用システムALLADiNなどのAWS・オンプレミスインフラエンジニア、リスクマネジメント、BCP、エンジニア採用などを担当。



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