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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第293回

スーパーコンピューターの系譜 最後のSMPクラスターマシンASC Purple

2015年03月02日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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POWER5を8つ搭載した
IBM System P5 575

 さて、話をASC Purpleに移そう。ASC PurpleにはPOWER5プロセッサー(POWER5+ではない)を搭載したIBM System P5 575(関連リンク)というマシンが利用された。

 もともとPOWER5は、最大8プロセッサー(16コア)までが容易に構成できるように配慮されているが、ASC Purpleではこの8プロセッサー構成を1つのノードとし、8コアが利用された。

ASC Purpleは、8プロセッサー構成を1つのノードとし、これが最小構成となる。一種のハイパーキューブと言えなくもない

 System P5 575というマシンはクラスター構成専用の特殊なシステムという扱いであり、1.9GHz駆動のPOWER5チップを使いながら、CPUコアの片方を無効化するという独特な使われ方をされた。

 これにより共有2次/3次キャッシュおよびメモリーを片方のCPUコアで占有できるために性能が上がるという、なかなかに贅沢な構成である。ハードウェア的にも通常向けのIBM System P5 570とは異なる、独特の構成が利用された。

 通常向けのSystem P5 570の場合は1つのPOWER5チップとDIMMスロット×8、それとSMI-IIというDIMMバッファを搭載したDCM(Dual-chip Modules:CPUカードの名称)を2枚、1つの筐体に収めた形になる。

System P5 570のDCM。SMI-IIはDDR2 DIMMをチャネルあたり4枚装着するためのバッファチップ。メモリーそのものはDDR2-533の512MB DIMMが利用されたという説明がある

1台の筐体の内部構造。左下の2枚がPOWER5のプロセッサーカードとなる

 この2枚のカードは、3つ前の画像にある8プロセッサー構成で言うところの、縦方向の結線となる。横方向は、筐体間を専用ケーブルでつなぐことで実装されている。

プロセッサー間接続の専用ケーブルが複数用意されているのがわかる

 これに対しSystem P5 575では、8つのDCMと、DCM毎に8スロットのDIMM、電源ユニットと冷却ファンが2Uのシャーシに納められている。

ローレンス・リバモア国立研究所のASC Purple解説ページより抜粋。このページの説明では、DDRメモリーが装着されていることになっている

これも解説ページより。中央の黒い部分がPOWER5プロセッサーで、その前後をDIMMとSMI(SMI2)で挟む形になっている

 この2Uの中で16way SMP(ASC Purpleの場合は実際には8way)の接続が済んでいる形だ。ちなみにメモリーがDDRなのかDDR2なのか、実ははっきりしない。

 もともとPOWER5そのものはどちらでも可能であり、SMIを使えばDDR対応、SMI2を使えばDDR2対応になるのだが、ローレンス・リバモア国立研究所の解説ページ(関連リンク)にはDDR×8の構成と説明されている。

 一方ローレンス・リバモア国立研究所のTom Spelce氏が2006年のSCI COMP 12で発表した“Early Performance Results from the LLNL/NNSA Purple Computer”という論文では明確にDDR2 512MBと説明されているからだ。

 あるいは、初期システムはDDRベースで、後から追加した分はDDR2ベースというように混在していたのかもしれない。

→次のページヘ続く (目標の100TFLOPSに近い数値を達成

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