このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

スマホで始める「音楽アプリ部」 第72回

波形の3Dモデルを編集する機能もユニーク

500の音色が高品質! プロが憧れたドイツ製シンセのiPad版は納得の出来

2015年03月01日 12時00分更新

文● 藤村亮

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

波形編集や特殊コントローラーでの演奏も特徴のひとつ

 naveならではのユニークな機能としては、「Wave」画面から波形の3Dモデルを表示し、直接編集して音作りをできる点が挙げられます。

 波形のプリセットは82パターン。基本音色をサウンドプリセットから選んだ後に、波形プリセットをいろいろ切り替えて、好みのイメージに近づけていくと良いでしょう。画面下部のリボンコントローラーを使った演奏では、波形の正方向再生はもちろん、逆再生サウンドも楽しめます。

まるでゲームのような3Dマップ。360度回転させることもできます

 また「Mod&Keys」から鍵盤の変更も可能です。通常のキーボードに加え、「Blade」という特殊なデザインのコントローラーや、コルグのカオスパッドのようなXYコントローラーを選択することができ、naveの個性を感じます。

 Bladeはタップした指を上下方向にスライドすることで、音量やフィルターモジュレーションなどの調整が可能なコントローラー。実機のキーボードだとアフタータッチ※1のようなニュアンスをパッド上で再現できます。

※1 鍵盤に触れたあと、さらに押し込むことでモジュレーションのコントロールをつける機能

 XYコントローラーはAとBのパッドのXY軸それぞれにコントロールを割り振りできます。たとえばAにVOLUMEとPANをセットし、BにはFILTERとPITCHをセットすると、DJのスクラッチプレイも可能です。

キーボードとBladeの幅は3段階で調整でき、音階のプリセットも可能です

Naveは実用的で優れたシンセ

 エフェクターはPhaser、Flanger、Chorusの3モードのモノエフェクトが切り替えられる「Mod EFX」、L-Rそれぞれにタイム設定が可能な「Delay」、スペイシーな残響が楽しめる「Reverb」、3つの帯域で音質を調整できる3バンドの「Equalizer」、音の立ち上がりを揃えたりアタック音を強調する「Compressor」の5系統。

 同時に使用でき、音色そのものをいじらなくても十分にオリジナルな音色に作り替えられるほど、強い効果がかかります。パターンが豊富なアルペジエーターとエフェクターをうまく組み合わせることで、指一本でもトリッキーなフレーズを演出できるでしょう。

 Tape&Sysには4トラック分の録音データを再生できる、ミキサーモードがあります。リアルタイムレコーディングでフレーズを重ねていく使い方だと、画面のサイズとしても扱いづらい部分があります。ですが、ほかのアプリなどで作ったトラックデータなどを読み込んで再生する形なら、リズムトラックやノイズSEの再生用として使いようがありそうです。

もうひとクセをつけたい時にもフレーズの演出にも使える高性能なエフェクターが揃っています

Tape&Sysにはクオンタイズ機能やアンドゥ/リドゥなどがないので、リアルタイムレコーディングは少し神経を使います

 創立からすでに30年以上のバックボーンを持つ、メーカーならでは高いクオリティーのサウンドは、特別なエディットをしなくてもそのまま使えるレベルだと思います。大筋には「Wave」「Spectrum」のふたつのツマミの調整だけでもかなり幅広い音色が作れる、初心者にも優しいコントロール。さらに、細かい部分の作り込みにこだわりたいマニアの要求にも応える、操作性の懐の広さと奥行きには感服しました。

 BladeコントローラーやXYパッドなど、キーボード以外でのプレイ方法が充実しているのもうれしいところ。外部MIDIコントローラーがなくてもニュアンスの活きる演奏が楽しめます。

 3Dモデルのユニークさが目を引きますが、見た目の面白さだけでなく実用面で「優れたシンセ」であるという質感が感じられる、まさしく質実剛健のドイツのメーカーらしいアプリだと思いました。



藤村 亮(ふじむら りょう)

photo by Shin Kobayashi

 1981年生まれ、Ibanez製7弦ギターを手に世界を渡り歩くロックミュージシャン。2006年にバンド"AciD FLavoR"の7弦ギタリストとしてメジャーデビュー。2008年よりベルギーのインディーズレーベルと契約し、"Ryo Fujimura"としてソロ活動を開始。ヨーロッパ最大の日本文化イベント"JapanExpo"や各国のJ-Musicイベントにゲスト参加した。2012年からは活動の幅をメキシコにも広げ、3度のライブツアーを敢行。さらに、2013年11月にはヨーロッパツアーを終え、2014年1月1日から一日一曲アップロード企画「Daily Sound Scape」をSoundcloud上で開始。

ウェブサイト(英語)
Facebook
Twitter

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン