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最適な単価でリワードやリスト型広告の効果を高める方法

2015年02月27日 11時00分更新

文●池村 修/エキサイト

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この連載が本になりました!

「ランキングが上がらない」「開発費が回収できない」アプリを作って終わりにしない現場のノウハウを凝縮。 「DL数が伸びない」「DAUが増えない」「課金されない」スマホアプリビジネスの悩みを、ASO、広告運用、内部改善など、豊富な事例をもとに解説。iOS/Androidマーケの全体像がつかめる国内唯一のアプリマーケ実践本です。連載時から大幅に加筆修正し、最新情報を盛り込みました!

事例に学ぶスマホアプリマーケティングの鉄則87

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 スマートフォンアプリのマーケティングノウハウを紹介する本連載。第12〜14回では、「iAD」「Google AdWords」といったアドネットワークを使ったアプリのインストール促進について、エキサイトの事例を基に解説しました。今回は、アドネットワーク以外の広告施策として、「リワード広告」「リスト型広告」「記事広告」の活用方法を紹介します。

ランキングからの新規ユーザー獲得を狙う「リワード広告」

 リワード広告とは、アプリのインストールや会員登録などのあらかじめ指定したコンバージョンに達したときに広告費用が発生するCPI方式の広告のことです。コンバージョンに達したユーザーに対して広告媒体が「インセンティブ」(媒体内で使えるポイント等)を提供するのが特徴で、インセンティブ狙いのユーザーによる大量のダウンロードを一気に集められます。

 リワード広告は、いわゆる「ブースト」と呼ばれる、アプリストアのランキング急上昇を狙い、ユーザーの目に留まりやすい位置にランクインさせておくことを目的に使われることが多く、App Storeでは数時間後、Google Playは数日後にランキングの上昇効果を確認できます。

 リワード広告によって得られたユーザーの大半はポイントなどのインセンティブが目的ですので、ロイヤルユーザーになることは見込めず、あくまでもランキングを見たユーザーを獲得することが目的となります。

 アプリや出稿のタイミングにより異なるものの、成果報酬単価は1インストールあたり70〜80円程度が相場です。無料アプリランキング(端末ファーストビューに表示される)TOP5に入るためには約5万ダウンロードが必要なので、リワード広告だけで達成するにはおよそ350〜400万円の費用が必要になります。また、Google Playのランキングは、ダウンロード数だけでなくアンインストール数やアクティブ率なども加味されるため、上位表示を狙うにはより多くの広告費用が必要になります。

 そのため、アプリのリリース時や機能改修後のアップデート後など、タイミングを計って実施すると効果的です。

 ランキング操作目的のリワード広告はiOSではデベロッパガイド(3.10)で禁止され、アプリストアからアプリが突然削除されたり、デベロッパアカウントを抹消されたりするケースが報告されています。ランキング操作目的ではなくユーザーに有益なアプリの情報を届けるようにしましょう。エキサイトでは、LTVからリワード広告の効果を確認しています。

費用対効果を算出する

 リワード広告の費用対効果は、単純なダウンロード数ではなく、ランキング経由で増えた新規ユーザーのLTVで判断します。リワード広告媒体ごとのインストール後の起動率を把握するため、あらかじめ集計用のSDKをアプリに導入します。

 たとえば、リワード広告の出稿に500万円支払い、1ユーザーあたりの収益が100円/月、ランキングTOP5(2日間)の自然流入で1万5000ダウンロードされた場合は、以下のように考えます。


増加ユーザーによる収益=1万5000ダウンロード×100円=150万円/月
500万円/150万円=3.33月

 この例では、自然流入でダウンロードしたユーザーが4カ月以上アプリを利用すれば費用対効果が良い広告施策となります。LTVを把握しながら、投じる費用などの計画を立てましょう。

エキサイトで実施したリワード広告の効果

 「エキサイトニュース」では、過去にApp Storeの無料アプリランキング5位以内を目指し、リワード広告を実施しました。この事例を紹介します。

 実施当時のリワード広告は、1インストールあたり100~150円が相場で、約500~750万円の予算が必要でした。リワード広告を実施する前に、類似アプリがどのように推移するか、事前に同業他社や代理店にヒアリングしたところ、費用対効果にはかなりのばらつきがあることがわかりました。そこで、実際に自社アプリで出稿してみないとわからないと考え、試験的に実施することにしたのです。

 以下は、エキサイトニュース(iOS)のリワード広告の結果です。

  • 開始日:9月末の土曜日
  • 費用:200万円
  • リワード獲得件数:4万件

<結果>


自然流入獲得件数:約1万ダウンロード
ランキング[無料]10位/ニュースカテゴリランキング[無料]1位

リワード広告の結果

 自然流入獲得の1万ダウンロードのユーザーの定着率を調べ、費用200万円に対する効果を検証します。今回は、エキサイトニュースアプリより多くダウンロードされたアプリが存在していたことにより、ランキング10位以上に表示できませんでした。

 リワード獲得数と自然流入の割合が4:1という指標が分かったので、次回以降その指標から広告予算を算出し、自然流入から広告費用をできるだけ早く回収できるよう、アプリの継続率やユーザー単価の改善を実施することになりました。

 リワード広告の出稿では、競合アプリの出稿にかぶらず、ユーザーがApp Storeに流入しやすい時間帯を狙い、自社アプリが長くランキング上位に表示されるよう調整することが大切です。

複数のアプリから選んでもらう「リスト型広告(Wall広告)」

 リスト型広告(Wall広告)とは、インストールや会員登録などの事前に決めたコンバージョンに達したら広告費用が発生する広告です。ユーザーにインセンティブのようなメリットがないため、ブースト効果は期待できませんが、一定数の新規ユーザーの獲得は見込めます。インストールあたりの獲得単価はアプリやタイミングにより異なりますが、200〜400円前後となっています。

 広告掲載時に獲得件数に上限を設け、掲載後の予算消化のペースを確認し、消化が早ければさらに予算を投下するなどの対策をします。少額から出稿できるので、新規アプリとしてリリースする際にある程度ユーザー数を集めて、アプリがコンセプト通りに利用されているかを確認するのにも有効です。

 同じ媒体に長期間掲載していても、ユーザーが見飽きてしまい効果が下がりますので、消化具合をチェックしながら活用しましょう。

出稿アプリが一覧で並んだリワード広告媒体。アプリの説明を魅力的に掲載しタップを誘導

記事広告で新規ユーザーを獲得する

 リスト型広告と同様、新規ユーザーの獲得を狙えるのが記事広告です。レビューサイトやニュースサイトなどの媒体にアプリの紹介記事を有料で掲載し、ダウンロード数を稼ぎます。出稿時、獲得件数の上限(あるいは予算金額)を設けて発注します。その際、特定の媒体にのみ指定しても出稿できます。成果報酬単価は1インストールあたり200~400円が相場です。

 紹介された記事を読んで、アプリに理解を示したユーザーを獲得できるので、リワード広告よりも定着率が高くなることが多く、媒体とアプリの相性が良ければ、数日で数千ダウンロードの獲得、ストアランキングの上昇も見込めます。

アプリのレビュー記事からストアへ誘導する

テレビの露出でブーストを狙う

 ブースト効果でランキングの上位表示を狙えるのがテレビでの露出です。著名人がテレビでアプリを紹介すると、瞬間的にダウンロードが増え、アプリストアランキングの上位になり、自然流入のダウンロードも見込めます。施策にコツはなく、運が良いとしか言えませんが、やはり、ユーザーにとって、便利で使いやすく利益になりやすいアプリである必要があります。

 次回は、他社と協業し、双方のアプリを広める手法について紹介していきます。

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