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SACDとハイレゾ版の音質の違いをマスタリング・エンジニアに直撃

麻倉怜士が「ハイレゾ版 松田聖子」の音の魅力に迫る

2015年02月27日 09時00分更新

文● 荒井敏郎 編集部●ASCII.jp

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左からソニー・ミュージックスタジオ チーフエンジニアの鈴木浩二氏、麻倉怜士先生

 ASCII.jpにて連載中の「麻倉怜士のハイレゾ入門講座」では、ステレオサウンドが制作した松田聖子のSACDの音質について触れた。SACDで聴くことによってフレーズの違いや発声後の余韻など、松田聖子の歌のニュアンスがそのまま伝わってくる──というものだった。それは青春時代に実際に聴いていた記憶をより鮮烈によみがえらせるもので、松田聖子というボーカリストの素晴らしいテクニックまでもが見えてくると、その感動を表現していた。

 ところが、麻倉先生はその後に登場したハイレゾ版の音のよさにさらに驚いたというのだ。より細かく音が表現されていて、歌のビブラートの使い方などまで手に取るようにわかるレベルなのだとか。

 松田聖子ファンとしてこれまでも十二分に聴きこんできたはずの麻倉先生が、新たなボーカリストの魅力に気付き引き込まれた……。ボーカリストのパーソナルな部分まで表現できているというハイレゾ版はどのように生み出されたのか?

 そんな疑問を解決するため、今回は特別にSACD、ハイレゾの両方のマスタリング・エンジニアであるソニー・ミュージックスタジオ チーフエンジニアの鈴木浩二氏に話を伺い、取材時配信前の楽曲をいち早く試聴しながら制作背景やSACDとハイレゾ版の音質の違いなどを探った。

 両者の対談の中で語られる、「今」っぽい音や「今」の時代に合わせた音作り……。そこから、SACDとハイレゾ版の表現の差が見えてくる。

SACDを超える!? ハイレゾ版の楽曲の魅力

麻倉: こちらの記事でSACDの松田聖子さんの音について紹介させていただいたのですが、ハイレゾ版はSACDと比べてだいぶ音が違うなと感じ、両者の音作りについて聞いてみたいと思いました。よろしくお願いします。

鈴木: よろしくお願いします。

麻倉: 去年の12月にハイレゾ版の音源を貸していただき、私のイベントでSACDと聴き比べてみました。SACDは「声の艶がいい」という意見が多く、ハイレゾ版は「解像度が高い」とか「低音の切れがいい」「音の伸びがいい」という意見が主流でした。ハイレゾ版にはSACDとはまた違うよさがあるんだな、とわかりました。そこで両方のマスタリングを手がけている鈴木さんに、今回ハイレゾ版の音をどう変えたのか具体的に聞いてみたいと思いました。

ソニー・ミュージックスタジオで使用している、Studer製1/2インチのオープンリールテープレコーダー「A820」。アナログならではの温かみを持ちながらもソリッドな低域を実現。30年以上にわたってサウンド制作の現場で使われており、このテープレコーダーによって生み出された作品は多い

 SACDの場合は、Studer A820でアナログの音を出してそのままデジタル化しただけという話でしたが、今回の24bit/96kHzのハイレゾ版はどのようなプロセスで作られているんですか?

鈴木: SACDはイコライザーをまったく使わないアルバムもありましたが、ハイレゾ版はアルバムの統一感を保ちながら、1曲ずつの特徴が出るように作っています。

麻倉: 機材的にはA820から出して、アナログイコライザーを通して、そこから24bit/96kHzにデジタル化したのですか?

鈴木: そうですね。そこからさらに音量調整などの微調整をデジタル領域でもしています。比べると、音の明瞭度とか切れはシャープな方向にいってますね。SACDのよさはナチュラルな感じとか温かな感じだと思うのですが、ハイレゾ版は角がでるというかクリアーになるので、そっちを狙っています。制作者の意図があり、ハイレゾ版のほうは「今」のCDでの音作りというか現代のマスタリングのやり方に近い方法で、という意識がありました。


(次ページ「SACDとハイレゾではマスタリングのアプローチが異なる」へ続く)




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