デジタルアンプの長所を生かす思想
最近のウォークマンに一貫した設計方針のひとつには、デジタルアンプ「S-Master HX」の採用が挙げられる。
2013年9月発売の「ZX1」と「F880」シリーズにはじまり、2014年9月発売の「A」シリーズ、そして今回の「ZX2」と、S-Master HXによるフルデジタル処理が大きな特徴であり、一貫した設計ポリシーとなっている。
しかし、前回述べたように、デジタルアンプを採用したフルデジタル設計の場合、DACを搭載するという選択肢はなくなる。DAC次第でネイティブDSDなど再生フォーマットが変わるだけでなく、音質を判断する材料とする傾向もあるため、販売戦略上微妙な点があることは事実だ。
そのあたりを訊ねたところ、「アナログアンプならではの柔らかい音はあるが、デジタルアンプでなくては出せない音もある。そしてヘッドホンによる“モバイルハイレゾ”は、耳でどれだけ細かい音を再現できるかだ。そこで“音の細かさ”を再現する世界観を、ZX1と同じS-Master HXを使って広げようと考えた」(佐藤浩朗氏)と明快な答えが。
最初に回答があったとおり、S-Master HXありきで開発がスタートしたことはないが、S-Master HXだからこそ実現できる音世界があるというのだ。
DSD音源の再生時にPCM変換されることについては、「PCM変換されるといっても、ソニー独自のノウハウを生かしている。音の暖かみなどDSDならではの部分も再現できているのでは」(田中氏)とのこと。
「“DSDネイティブ”は生の音に近く、リスナーの好みの問題もある。スピードの速い音もあれば、まったりした音もある。だから選択肢を広げるべくDSDフィルタを設けた」(佐藤朝明氏)と、PCM変換ならではのアプローチもある。この点、やはり音質アプローチのひとつと解釈すべきなのだろう。
(次ページに続く、「音質向上のための重量増加」)
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