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日本のITを変える「AWS侍」に聞く 第11回

大阪を中心にコミュニティ活動に邁進!西日本のエンジニアを幸せに

売上と利益優先の比企さんがコミュニティにコミットする理由

2015年02月25日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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三都物語やJAWS FESTA、関西で数々のクラウドイベントを手がけるJAWS-UG大阪の比企宏之さん。1990年代後半から受託開発のプロジェクトで勝ち続け、長らく売上・利益至上主義を貫いてきた比企さんがコミュニティとクラウドにコミットする理由を探った。

本連載は、日本のITを変えようとしているAWSのユーザーコミュニティ「JAWS-UG」のメンバーやAWS関係者に、自身の経験やクラウドビジネスへの目覚めを聞き、新しいエンジニア像を描いていきます。連載内では、AWSの普及に尽力した個人に送られる「AWS SAMURAI」という認定制度にちなみ、基本侍の衣装に身を包み、取材に望んでもらっています。過去の記事目次はこちらになります。

10年間負けなしで売上と利益至上主義へ

 専門学校を卒業した比企さんが就職活動を始めたのは、バブルがはじけ、就職氷河期に突入した時期にさかのぼる。当時を比企さんは「ゲームの開発をしたいと思っていたけど、就活に来ているのが4大卒の人ばかりで全然引っかからなかった。まったく仕事がなくて、3ヶ月間くらい公園のベンチでどうしようかなと思った」と振り返る。

アイレット cloudpack事業部 サポートエンジニア 比企宏之さん

 その後、ようやく制御系システム開発の会社に就職できた比企さんは、インフラエンジニアを2年やった後、オフコンからオープンシステムへの移行プロジェクトを担当。「オフコンのプログラムこれから勉強しても先細りだが、クライアント/サーバー型システムはこれから商売になると思った。5次請けくらいだったけど、最先端だったVisual Basic使った開発でリーダーとしてやってくれと言われた」とのことで、リーダーとしてプロジェクトを担当。もう一人のメンバーと共に、会社のビジネスの半分くらいをオープン系に成長させたという。

 次に手がけたのがケータイの開発プロジェクト。「元請けのリーダーがいきなり目の前で『あかん、あとは比企さん頼む』って言って、倒れてしまったんです(笑)」とのことで、協力会社でありながら、ここでもプロジェクトを指揮することになった。不幸なことにプロジェクト自体は頓挫してしまったが、その後大ヒットしたケータイの開発にも携わり、頓挫のリベンジも完了した。

 その後、比企さんは競合会社のプロジェクトにも関わりながら、長らく端末開発のプロジェクトを渡り歩いてきた。こうした数々の厳しいプロジェクトでの開発経験で、比企さんには売上と利益の重要さが身についていた。「10年間、オープンシステムでもケータイでも、基本的に自分のプロジェクトはずーっと負け知らずだったし、絶対的に利益至上主義でした。だから商売に結びつかないオープンソースとか、コミュニティの価値がわかりませんでした」(比企さん)。

リーマンショックでみたエンジニアたちの廃業

 ある意味、「大阪人らしい」経済合理性を最優先する比企さんが、なぜコミュニティに関わるようになったのか? この背景には、2011年に起きたリーマンショックによるIT企業の衰退がある。

 当時の様子を比企さんは「東京もひどかったと思いますが、関西は本当に酷かった。仕事がなさすぎて、エンジニアが廃業する事態につながっていた」と振り返る。IT業界で食べていけないがために、かつて仕事を穫りあっていたライバルが次々と廃業。不毛な仕事の取り合いにもなり、社員の仕事も維持できなくなったと述懐する。

「リーマンショックのときは仕事がなさすぎて、エンジニアが廃業する事態につながっていた」

 事態を目の当たりにした比企さんは「エンジニアは単に会社に所属しているだけではダメだ」と痛感した。そして、自分の勝ち方だけに固執した自分、業界を見られていない部下に強い危機感を持ったという。「30代中盤まで本当に負け知らずだったので、人脈なんて軽視していた。でも、部下はそれをできるかは別問題。今から考えれば浅い。天狗だったんです」と振り返る。

 そこで比企さんが会社の部下に対して課したのが人脈作りだ。当時、ちょうど「Androidの会」などが持ち上がり、小さな会社でもユニークなアプリを開発し、誰でも気楽に使えるという地盤ができつつあった。そこで自身がまずAndroidのコミュニティに参加し、次に部下を連れて行った。時には無理矢理発表させることもあったという。

(次ページ、モバイルとクラウドの選択でクラウドを選んだ理由)


 

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