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「ハイパースケールのNW技術を一般企業でも」CTOが目標を語る

“ベアメタルSDN”の広範な普及を目指すビッグスイッチ

2015年02月09日 14時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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 「Big Cloud Fabric」などのSDN製品を展開するビッグスイッチネットワークス(Big Switch Networks)が、日本市場への本格参入を開始した。来日した米ビッグスイッチ CTO(最高技術責任者)のロブ・シャーウッド(Rob Sherwood)氏、日本法人社長の柳宇徹氏が、同社の特徴やターゲットを語った。

米ビッグスイッチネットワークス CTOのロブ・シャーウッド氏

「グーグルやアマゾンと同じネットワーク技術を一般企業に」

――まず、ビッグスイッチとはどのようなネットワークベンダーなのでしょうか。

シャーウッド:簡単に言えば、グーグルやフェイスブック、アマゾン、マイクロソフトといった、ハイパースケールデータセンターを擁する企業と同じネットワーク技術を、一般企業でも簡単に利用できる製品を開発、提供することを目的とした企業だ。

 このビジョンに基づき、スタンフォード大学のSDN研究チームを母体として2010年に設立された。現在の幹部は、シスコ、ジュニパーといった旧来のネットワークベンダー、AT&Tなどのサービスプロバイダー、そしてSDN研究の世界からの出身メンバーで構成されている。

ビッグスイッチのWebサイト。ハイパースケールのネットワーク技術を“ハイパーシンプルに”提供するのがビジョン

――“ハイパースケール企業”のネットワーク技術とは、具体的にはどういったものでしょうか。

シャーウッド:ハイパースケール企業は、いずれもネットワークベンダーではないが、現在のネットワーク技術の変化を牽引している。そこには大きく3つの特徴があると考えている。

 1つは、ベアメタルスイッチの採用だ。旧来の大手ベンダー製スイッチとは異なり、ベアメタルスイッチは安価で、顧客が選んだネットワークOSをインストールできる。なおかつ、採用しているのはどれもブロードコム製チップなので、性能的にも遜色ないものになっている。ちょうどx86サーバーと似たような状況だね。

 次は、コントローラーベースのネットワーク構成、つまりSDNだ。かつてのネットワークでは、構成を変更するたびにスイッチ1つ1つにログインし、設定を変えなければならなかった。これを、コントローラーから一元的に管理できるようにする。

 最後に、データセンターの「コア-ポッド」構成への変化に対応すること。かつては、データセンター全体を最初から満たすような構成でシステムが設計されていたが、現在では、小さな区画(ポッド)を必要に応じて追加していき、それを中央(コア)で集約するような設計になっている。ネットワーク構成も、コア-ポッド構成に対応できるよう変化している。

――そういったネットワーク技術を一般企業でも使えるようにしたい、それがビッグスイッチの目標だというわけですね。

シャーウッド:そう。ハイパースケール企業の場合、数百人ものエンジニアを抱えており、自社でネットワークOSや管理ツールを開発できる。だが、一般企業にはそんな開発リソースはない。そこで、ビッグスイッチが製品化して提供するというわけだ。

ベアメタルスイッチOS+SDNコントローラーの“ベアメタルSDN”

――現在、「Big Tap Monitoring Fabric」と「Big Cloud Fabric」という、2つの製品を提供していますね。それぞれどういう製品でしょうか。

シャーウッド:Big Tapは、既存のネットワーク構成を変更することなく追加できる、効率的なモニタリングソリューションだ。また、Big Cloud Fabricは、ベアメタルスイッチ向けOSとコントローラーソフトウェアで構成された、プロダクショングレードの(本番環境でも利用できる)SDNソリューションとなっている。

 Big Tapは1年半ほど前から提供を開始して、モバイルサービスプロバイダー、金融機関、学術系ネットワークなどで採用実績がある。もう1つのBig Cloud Fabricは、昨年9月末から正式提供を始めたばかりだが、それでもすでに米連邦政府や学術系で数百万ドルの売上を上げている。今後はほかの業界にも広がっていくだろう。

柳:日本法人は昨年後半に立ち上げたばかりだが、国内でも採用の状況は似ている。すでにBigTapは、モバイルサービスプロバイダーや金融機関で大規模に展開されている。また、Big Cloud Fabricも、ある金融機関で今月中にカットオーバーする予定だ。非常に短い期間で性能検証が行われ、すぐに気に入ってもらえた。

Big Cloud Fabricによるネットワーク構成例。今年半ばには仮想スイッチソフトウェアもリリース予定だ

――2011年にはOpenFlowベースのSDNコントローラーも発表していましたが(関連記事)、この製品とBig Cloud Fabricとの関係はあるのでしょうか。

シャーウッド:2011年にはOpenFlowコントローラーを発表したが、結果的にはうまくいかなかった。SDNアプリケーションとコントローラー、ネットワークハードウェアとOpenStackインタフェースという(異なるベンダーが提供する)4つの要素を、誰もうまく統合できなかったからだ。また、旧来のネットワークベンダーが、ハイクオリティなOpenFlow対応ハードウェアを出そうとしなかったのも理由だ。

 そこでビッグスイッチでは、2012年に大きな方針転換を図った。ベアメタルスイッチ向けのOS(Switch Light OS)と、SDNコントローラー、GUIの管理アプリケーションをまとめて提供するというものだ。これを製品化したのがBig Cloud Fabricである。

多少見づらいが、左が2011年段階で目指したアーキテクチャ、右がBig Cloud Fabricのアーキテクチャ。SDNアプリケーション/コントローラーとベアメタルスイッチOSをまとめて提供する

 ただし現在のBig Cloud Fabricでも、SDNコントローラーとOS間のやり取りにはOpenFlowを利用している。実環境で動作するように独自の機能拡張を行った“OpenFlow v1.3+”プロトコルで、拡張部分の標準化にもONF(Open Networking Foundation)で取り組んでいる。

(→次ページ、データセンター以外にもSDNソリューションを拡大したい

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