規模は追わず、ウェアラブルなどとんがったデバイスを
では、エプソン自らが主体性を持ってビジネスを展開するためにはどうするか。エプソンが選んだ道は、規模は追わないとする一方で、エプソンが得意とする尖った技術を追求し、それを自らの製品のなかに利用するという仕組みを構築することだった。
その取り組み成果のひとつともいえるのがウェアラブル機器だ。
リストバンド型のPULSENSEは、同社独自の「尖った」技術を持つセンサーを採用。多くのウェアラブル機器が、脈拍だけを計測するのに留まらず、血流まで計測できる。これによって、心臓の動きや血圧の状態までを、高い精度で知ることができるという。
「一般的な腕時計型ウェアラブル機器は、スマートフォンとの連動が中心。エプソンのウェアラブル機器はそれもできるが、狙っているのは、これまでは計測できないような生体データを、24時間、正確に計測できるということ。極限まで計測できるセンサー技術を活用することで、さまざまな病気を発見したり、症状改善のプログラムに生かすといったことができる」(碓井社長)
PULSENSE は、2015年の段階で、医療機器としての認可を取得できる予定であり、他のウェアラブル機器とは一線を画すものになる。
ウェアラブル機器の注目は、発売を直前に控えたApple Watchに集まっているのも事実だ。だが、それに対しても碓井社長は次のように語る。
「エプソンのウェアラブル機器は、徹底的に省エネを追求して、センサーの精度を高めて、尖った製品として提案できる。だから、Apple Watchのように、汎用的な技術をあちこちから集めて作ったものとは違う。Apple Watchのように、たくさんの機能を搭載して、これを使うと、バッテリー駆動時間が大きな問題になるはず。しかし、エプソンが目指しているのは、医療分野やスポーツ分野での利用において、生体情報をしっかりと収集すること。そのためには省エネ性能が重要となる。現時点でも、時計型のWristableGPSは、約30時間の駆動が可能だが、尖った技術によって、4日間かけた山登りでも利用できるといったことを目指したい」
Apple Watchの製品づくりとは、基本的な姿勢に違いがあることを訴える。
最近、碓井社長は、「産業インフラとして使われる製品を目指す」という言葉をよく使う。ウェアラブル機器で目指しているのは、コンシューマ利用に留まらない、まさに産業インフラを担う製品づくりだ。
このように尖った技術を生かし、自らが主体性を持つビジネスへの転換がエプソンの体質転換の肝にある。
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