独立行政法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は1月29日、南海トラフに展開している水中マイクと地震波干渉を用いた分析で、沈み込み帯付近の海洋-地殻が常に振動していることを世界で初めて発見した。
地球自体、大気や海洋の擾乱によって常に振動していることは従来から知られている。これは常時振動と呼ばれ、「常時地球自由振動」(周期数百秒)と「脈動」(周期5~15秒)があるが、周期が長いため体感できるものではなく、これまで単発的に起きる地震とは関係ないものと考えられてきた。
JAMSTECの地震津波海域観測研究開発センターでは、南海トラフ付近の海底に高感度地震計などを設置して東海・東南海・南海地震の発生をいち早く把握できる警報システム「DONET」の運用や、地震連動性の調査観測を行っている。今回の研究では、ハイドロフォン(高感度水中マイク)や地震波干渉計を用い、この地域で起きている微小地震によって海中や地殻を伝わる波である音響レーリー波(卓越周期0.2~2秒程度)が生じていることが解析できた。
データ解析とシミュレーションの結果、南海トラフ付近で発生している小さな地震が音響レーリー波を励起しており、その波動が常に海中と海面下を振動させる常時振動を励起していると結論付けられた。これまで、常時振動を発生させる要因は海洋など流体のみと考えられていたが、地震もその要因となり得ることを明らかになったことになる。
地震観測・研究においてこれまでノイズとして見過ごされていた音響レーリー波が地震と関係付けられたことにより、音響レーリー波を用いた海底地殻構造の推定といった研究、地震観測の精度向上に役立ち、また常時振動を理解することに繋がると期待される。