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デジタルビジネス成功のため、CIOはなにをすべきか?

ガートナーのCIOサーベイで浮き彫りになる日本のCIOの課題

2015年01月23日 09時00分更新

文● 大河原克行

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1月21日、ガートナー ジャパンは世界84カ国2810人のCIOを対象に実施した「2015年 CIOサーベイ」の結果について発表した。講演ではIT投資や注目するテクノロジー、CIOとしての課題まで幅広い提言が展開された。

CIOはデジタル化のリーダーシップを

 CIOサーベイは、ガートナーのCIO向けサービスを展開している「エグゼクティブプログラム」が毎年発表しているもので、あらゆる業種の企業、政府、公共機関に所属する世界各国のCIOメンバーを主な調査対象に、CIOが抱える次年度の課題についてヒアリングしている。今回の調査では、日本からは、61人のCIOが回答したという。

CIOサーベイの概要

 回答企業のIT支出総額は全世界で3970億ドル、日本では約133億ドルに達するという。調査結果では、「世界のCIOは、自社のデジタルビジネスを成功させるためには、自分たちのリーダーシップのスタイルを変える必要があると認識していることが明らかになった」という。

 ガートナー ジャパン リサーチ部門 日本統括バイスプレジデントの山野井聡氏は、「調査対象は大企業が中心であること、エグゼクティブプログラムへの参加企業が中心となっており、言い換えればITに対する課題意識が高い企業を対象にした調査結果だといえる。そのため、日本や世界のCIOの平均値と捉えることはできない」と前置きしながらも、「ここ3年ほど、デジタルというキーワードが重要視されている。2013年はデジタル化を『静かなる危機』と表現し、2014年は既存の情報システムとは違った視点で、デジタルリーダーシップが必要になることを示し、既存ITとデジタルの『2つの流儀』を持つIT組織編制が必要だ」とした。

ガートナー ジャパン リサーチ部門 日本統括バイスプレジデントの山野井聡氏

 今回の調査では、CIOがデジタル化におけるリーダーシップを発揮しなくてはならないことが浮き彫りになった。

 デジタル化が新たなタイプのリスクをビジネスにもたらしているとの回答は、世界で89%、日本で81%に達した。また、デジタル化の推進役は、CIOを対象にした調査ではCIO自らであるべきと考えている回答がもっとも多いが、日本では事業部門リーダーとする回答も多かった。世界のCIOの方がアグレッシブである。ここでは、CEOに同じ質問をすると、CIOやCMO、事業部門リーダーではなく、他の人が担うという結果が出ており、ここにも差が出ている」と総括した。

デジタライゼーションへの自覚

 また、2015年のIT予算は、世界で前年比1.0%増、日本では0.8%減。日本では回答者数ベースでは、「増やす」が36%を占め、「減らす」の19%を上回ったが、金額ベースでは、IT投資に対しては、依然として慎重な姿勢であることを浮き彫りにした。

パブリッククラウドやモバイルへの関心は高い

 CIOが2015年に重点投資を計画するテクノロジーは、日本および世界ともに、上位5位までの構成項目は同じで、日本では「クラウド」、「ERP」、「BI/アナリティクス」、「モバイル」、「IT基盤/データセンター」の順となった。「ガートナーが提示するNexus of Forcesを構成する4大テクノロジー(クラウド、モバイル、インフォメーション、ソーシャル)のうち、3つがランクインしている。ソーシャルが、ランキング外となっているが、これは設問が投資規模を含めた順位を尋ねたものになっているためであり、ソーシャルに対するCIOの関心は決して低くはない」(山野井バイスプレジデント)と分析した。

2015年への重点投資テクノロジ

 パブリッククラウドの活用については、「選択に含める」と回答した日本のCIOは、IaaS、SaaSともに、世界のCIOに比べて比率が高いことから、「日本の方が、パブリッククラウドに対する活用意欲が高い」とコメント。モバイルへの取り組みについては、「モバイルを前提としたインターフェイスとして体験価値を設計」、「モバイルインタフェースを重視するが前提ではない」とする回答率が、日本のCIOの方が高く、「モバイルファーストの姿勢は日本の方が進んでいる」とした。

 ロボティクス、3Dプリンター、モノのインターネット、考えるマシンといったスマートテクノロジーに対しても、日本のCIOが高い関心を寄せていることが浮き彫りになった。

デジタルリーダーになるための3つの逆転思考

 さらに、全世界では、「ITを戦略プロジェクト投資の一部に含めて単独で評価しない」としたCIOが60%を占めているのに対して、日本では79%が「ITを独立したプロジェクト投資として考え、単独で評価する」という仕組みであることが明らかになった。

ITプロジェクト投資への考え方

 「デジタル化に向けた取り組みにおいては、日本の企業に多い、ITだけを単独で評価する仕組みでは問題がある。また、CIOのコミュニケーション時間配分をみると、社内に多くの時間が割かれており、外部との接触が低い点も、デジタル化においては問題がある。日本のCIOは兼任が多く、外部に出られる時間が少ないことがその背景にある」(山野井バイスプレジデント)などとし、デジタル化に向けて、日本のCIOが持つ課題を指摘した。

 山野井バイスプレジデントは、「CIOがデジタルリーダーになるためには、3つの逆転思考が必要である。最初からデジタルありきでビジネスを考える『デジタルファースト』、ITの価値をコスト削減や効率化のみに求めず、ビジネスの価値に求める『IT=ビジネスの価値』、明確なビジョンのもとにワイガヤ組織を試みること、社外の顧客との対話による啓発機会を増やす『ビジョンを核とする談論風発組織』に取り組むべきだ」と提言した。

デジタルリーダーになるための3つの逆転思考

 また、ガートナー ジャパン エグゼクティブ プログラム部門グループ バイスプレジデント兼エグゼクティブ パートナーの長谷島眞時氏は、「ガートナーの予測では、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)は、6.6%だったものが、3倍の約20%になると想定したが、結果としては、そこまで伸びずに9%に留まった。これからの課題は、IT部門がそのものが対極にある考え方を持ち込む柔軟な対応や、多様化ができるかといった点である。この変化への取り組みは楽観的に捉えることはできない、これは難しいテーマである。」と指摘する。

ガートナー ジャパン エグゼクティブ プログラム部門グループ バイス プレジデント兼エグゼクティブ パートナー 長谷島眞時氏

 さらに、IT部門の評価を変えていくことも必要だという。「IT部門の評価指標は、去年よりも今年を安くするというコスト削減が中心。そうした投資の考え方では新たなことはできない。日本はとくにその傾向が強い。違う評価指標で見ていく必要がある。また、組織オリエンテッドの考え方は、誰かが後押してくれた時代の考え方。いまや、自ら切り開いていくCIOファーストとしての姿勢が求められる」などとした。

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