独立行政法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は1月21日、全球雲システム解像モデル「NICAM」をスーパーコンピューター「京」で多数のシミュレーションを実施し、約2週間先の台風発生予測が可能であることを実証したと発表した。
これはJAMSTECと東京大学大気海洋研究所との共同研究の成果。全球雲システム解像モデルは地球全体での雲の発生や消滅、雲の中で雨や雪が生じて落下する挙動を物理計算する気象モデルで、超高解像度モデルは870m~3.5km メッシュを用いる。
研究チームは、2004年8月1日から8月31日までの気象データを元にしたNICAMの超解像モデルによるシミュレーションを、開始日を1日ずつずらした31本の予測を行った。その結果、弱くて短寿命だった台風11号と14号の再現は難しかったものの、他の6つの台風は約2週間前から再現することに成功した。
台風の発生は、北半球夏季季節内振動(インド洋でできた巨大積乱雲が東進する現象)と、マッデン・ジュリアン振動(インド洋で発生する大規模な周期的な雲の移動)が大きく関係している。今回の成果は北半球夏季季節内振動が顕著だった2004年8月という期間をシミュレートしたものであり、今後ほかの期間でも同程度な予測が可能かどうか検証する。また、シミュレーションの元となる初期値の精度を高めるために人工衛星による高精度観測結果をNICAMになじむ形で取り入れるなど、より高い精度での予測が可能かどうか研究を進めるという。
JAMSTECでは、より高精度なデータや、初期値が微妙に異なる並列多世界シミュレーション(アンサンブル予報)など、予測研究を進めるとしているが、データ数の増加やアンサンブル予報には莫大な計算量が必要となり、京を超える次世代のスーパーコンピューターが待ち望まれるとしている。