東急ハンズのクラウド導入を主導し、その実績を元にSIビジネスを展開するハンズラボを立ち上げた長谷川秀樹氏。2014年のIT業界でまさに時の人に躍り出た長谷川氏が登壇する1月21日のイベントでは2015年の“野望”が聞けるであろう。(インタビュアー TECH.ASCII.jp 大谷イビサ)
クラウドはすでに課題ではないという姿勢
2008年から進めてきた東急ハンズでの実績を元にエンタープライズ企業に対してクラウド導入を訴えてきた長谷川秀樹氏。2014年はとにかく数多くのメディアやイベントで八面六臂の活躍を見せ、まさに時の人になったと言える。
東急ハンズ執行役員・ITコマース部長というユーザー企業の顔を持ちながら、クラウドインテグレーターのハンズラボ代表取締役という肩書きを持ち、さらにエンタープライズ向けのAWSユーザーグループであるE-JAWSのコミティーメンバーである長谷川氏は、本人自体が話のタネ。東急ハンズが進めているクラウド移行やオムニチャネルのプロジェクトの話、エンタープライズ業界の課題やエンジニアの生き方などを、大阪弁で聴衆に熱く訴えかける。
長谷川氏の講演を聞いて、個人的に特に感銘を受けているのは、「クラウドの話はもう終わりにして、戦略的なIT活用へ移ろう」という部分。コスト面やプラットフォーム選びに終始しがちなクラウド選びではなく、本来実現したいビジネスバリューを得るためのITに議論を進めようというのは、オムニチャネルという全社戦略にITを活用している長谷川氏ならではの視点と言える。
長谷川氏にとってのクラウドは、コスト削減の道具とも、既存システムのリプレース先とも違う。「たとえば、今まで内向けにシステム開発していた情シスでも、クラウドサービス作って、外で売ればええんちゃいますか? たとえ営業下手でも、クラウドって限りなく営業要らんもんやから。せっかく市民権を得たクラウドという言葉に乗っかって、いろんなビジネスしたらええ思います」というのが長谷川氏の意見。東急ハンズでも最新のAWSのサービスを組み合わせて、基幹システムまでクラウド化に突き進む。
ハンズラボで手がけている他社向けシステムの構築も、オンプレミスのリプレースではなく、クラウドらしい作り方に変化してきたという。「最近はAWSの使い方も慣れてきた。手がけているポイントシステムも最初はEBS使ってたけど、次はS3にしたし、今度はDynamo+Lambdaにしようとしている」(長谷川氏)。実験や検証ではなく、リアルビジネスに対して新しいサービスをどんどん取り入れていくのがテーマだという。
ありもので最大限の効果を得る長谷川流
クラウドと対になるモバイル端末に関しても前のめりだ。「今やコンシューマー製品の方が安くて、優れている。メーカーの人は耐久性とかいうけど、1/1000の差は正直もうええ」(長谷川氏)とのことで、今年は従来使ってきた業務用PDAをリプレースし、全社にiPod touchを配布する予定だ。
両者に共通しているのは、フルマネージドのありものをうまく組み合わせ、低コストで高い効果を得ること。「iPod touch配ったら、仕事で使えるアプリコンテストを社内でやろう思ってます。たとえば、外国人の方が来て接客せなあかんときに使える翻訳アプリ。英語や中国語話せる従業員をわざわざ雇わなくても、アプリ使い倒せば問題解決できるかもしれない。ええ時代になったなあ思います」とのことで、自社開発にはまったくこだわない。
2014年はどうだったか?「そうやなあ」とたっぷり1分程度逡巡し、「去年は作っていることが多かったので、あまり成果出てないかもしれん」と振り返る長谷川氏。冒頭のような活躍を見ているオオタニからすると謙遜としか思えないが、そんな長谷川氏にとって2015年は「リリースの年」。いよいよ21日に迫ったイベントでは、長谷川流の新しいIT活用がかいま見られるはずだ。