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ASCII.jp働き方研究所 第1回

日本技芸の御手洗社長と日本の新しい働き方を考える

新連載「ASCII.jp働き方研究所」を立ち上げる理由

2015年01月27日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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新連載「ASCII.jp働き方研究所」はASCII.jpの大谷が経営者でもある日本技芸の御手洗大祐さんとタッグを組み、クラウドやモバイルの登場で変わりつつあるワークスタイルを現場目線で掘り下げていくものだ。今回は御手洗さんから連載開始の背景について寄稿いただいた。

もはや待ったなしとなった「生産性向上」と「働き方改革」

 2014年の6月に、「「日本再興戦略」改訂2014-未来への挑戦-」が閣議決定された。この閣議決定では、さまざまなメディアで既報のとおり、企業の生産性の向上や、女性の活躍促進と働き方改革が大きな課題として扱われている。

 みなさんの多くは「生産性向上」「女性の活躍促進と働き方改革」というテーマを聞くにつけ、ここ数十年幾度も取り組まれたテーマではないのか?とその政策の実現性について疑問を持たれるかもしれない。しかし、今の日本は改めてこうした方針を取らざるを得ないほど、事業環境が待ったなしの状況だと言える。

 2014年の3月に内閣府が発表した「労働力人口と今後の経済成長について」という資料によると、2013年に6577万人いたとされる労働力人口は、今とあまり状況が変わらなければ、17年後の2030年までに約14%減の5683万人まで落ち込むとされている。100人の職場で14人がいなくなって業務が成立するかどうかを想像すれば、問題の大きさが理解できるのではないだろうか。

 しかも重要なのは、同じ17年で高齢者と社会的な負担が増加していくため、総生産は維持どころか成長させていかなくてはならないという点だ。

 こうした環境から、労働力の確保は政府の重要課題となりつつあり、これまで労働市場で労働力と考えて来られなかった専業主婦層や高齢層の労働参画が検討されている。

ベストプラクティスは企業によって異なる

 だが、これまでも同じような取り組みがありながら、広範にこうした施策が普及しなかったのは、企業側が労働環境の変化に向けて、法制度上の課題やワークスペースの制約等により、非労働市場層を受け入れるための取り組みを十分に展開できなかったことに原因がある。

 しかし、現在では行政を中心として労務関連法制上の取り組みは進みつつあり、業務環境面でもITの進化とクラウド・モバイルの普及により、かつては難しいと思われていたワークスタイルも実現できるようになった。こうした中、今まで柔軟な労務環境の構築に向けて四苦八苦してきた多くの企業で、ワークスタイル変革、またそれを支えるワークスペース変革への取り組みが進みつつある。

 当社はそうしたワークスペース変革に取り組む企業のニーズに応えるべく、パブリッククラウドサービスに連携する形で利用可能な、主に共通業務系の業務アプリケーションサービスの提供を行なってきた。そして、そのサービスデザインを進めていくにあたり、さまざまな企業の業務について、ヒアリングや観察といった調査を続けてきている。その背景には、すべての企業において共通する最善の型というか、ベストプラクティスがあり、そうした企業共通のニーズを支えるITのサービスがあり得るのではないかという仮説があった。

 しかしながら諸々の調査を進めるにつれ、その企業に根付いた文化、また新しく作ろうとする文化は千差万別であり、その数だけ「ベスト」と言えるワークスタイルは存在するのだ、という結論に行き着いた。私たちのサービスも、設計思想についての見直しを行なって、現在ではさまざまな企業のベストプラクティスを支えられるサービスを目指している。

その会社にベストな働き方を今こそ考えてみよう

 一方で、多くの企業においてその企業のワークスタイルについて「ベスト」が存在していても、そのベストに行き着いていないケースが少なくない。これは、そもそも自社の文化についての洞察が足りないといった問題、そして文化を理解したうえでの業務環境の実装を誤っている問題の2点に起因する。前者は経営陣と社員、時には顧客を巻き込んで、会社の文化を描き出していくという人的な不断の努力が必要。一方、後者についてはさまざまなツールやそれを利用したケースをよく知ることが必要である。

 本連載では、さまざまな企業において「ベスト」のワークスタイルを目指す上で参考になると思われる、ワークスタイル変革に一定の成果を収めた個人や企業の先進的な取り組みを取材し、そうした企業においての成果とこれからの課題を浮き彫りにしていく。その中で、みなさんが自社の文化をどう把握し、どう根付かせていくのか、またそうした企業文化や実業務を支える環境をどう構築していくべきなのか、実践的な取り組み事例や具体的な課題を抽出していきたい。

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