このページの本文へ

「ヤフオク!」のトラウマになった黒歴史、運営者こっそり明かす:大江戸スタートアップアカデミー

2015年01月08日 19時00分更新

大江戸スタートアップ編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

2014年12月19日に開催された大江戸スタートアップアカデミー「フリル×BASE×ヤフオク! スマホ個人間取引徹底トーク!」より講演メモを特別公開。第一弾は無料化・リユースなど新戦略で注目を集める「ヤフオク!」を担当するヤフーの一条裕仁ユニットマネージャーが、ヤフオク!のトラウマとなったという「黒歴史」を明かした。

大江戸スタートアップセミナー 次回は1月30日(金)
「モーフィアス」「オキュラスリフト」VR業界最前線

 ソニーの「モーフィアス」(Morpheus)、フェイスブックが買収した「オキュラスリフト」(Oculus Rift)でIT業界をにぎわすバーチャルリアリティー(VR)デバイス。新たな市場に挑戦するゲーム開発者や専門家をお招きし、VR業界の最前線を伺います。スマホ市場が「VRシフト」するのはいつか?(詳細はこちら

 「ヤフオク!」としてリユース市場を意識した展開を強めている。リユース市場は2009年から2012年までの3年間で、毎年10%ほど成長し、1兆円から1.3兆円に伸びている。

 市場はネットとリアルがほぼ半々、ネットでも頻繁にリユースはされている。店舗でのリユースは拡大しており、ネットもどんどん利用者数が増えている。成長が著しいのはスマートフォン。ユニークユーザーを見ていると恐ろしくなるほどパソコンから離れており、スマートフォンがぐいぐい伸びている。

 リユース市場は1兆円規模で今も成長している。トータルで二次流通を生み出す人を増やしていくことで、母体となるリユース市場全体をリアル・ネットの両面で増やし、可能ならネットで売り買いする機会を増やす戦略をとっている。リユースの中でも「個人間取り引き」向けのプラットフォームをきっちり提供し、よりニッチなものでも売れる、買取店では値段がつかないモノでも売れるということでリユース市場を広めていきたい。


当時は絶対流行らないと思っていた

 まずヤフオク!の歴史を紹介する。ウェブの中でも長い歴史を持つサービスで、米国のヤフー・インクが検索以外で初期に始めたサービスの1つ。日本では1999年9月に開始したが、当初は「絶対流行るわけがない」と言い、国内でやろうとしなかった。

 本国のジェリー・ヤンCOO(当時)は「絶対にCtoC取引は流行る、やらないと後悔する」と言っていたが、「日本で流行るわけがない」という押し問答があった。「優先度が低くリソースがつかないなら米国でエンジニアを出すから作っておけ」とまで言うので作ってもらった。結果的には「ジェリー・ヤンありがとう」という状況。

 2001年にエンジニアとして入ったときもコードに書かれていたコメントは全て英語で、メンテが大変だよねと言いながらやっていたことをおぼえている。

 1年後にeBayが日本に入ってきたが、ヤフオク!のリードは大きくキャッチアップされず現在に至るという形。出品数と流通数はインターネットの広がりとともに爆発的に伸びた。いつ(eBayに)追いつかれるかに怯え、サーバーがパンクするかに怯え、常に鳴る電話に怯えながら過ごしてきた。ページもテキスト中心のシンプルなものから画像中心に変わった。トップページを含めてサイトを変化させてきた。


プロジェクトが完全に止まった「ヤフオク!」黒歴史

 もう1つは黒歴史。2010年から2012年にかけて成長が停滞してしまった。

 EC関連のサービスにテコ入れしようというので考えたのは、ヤフオク!とYahoo!ショッピングを統合しようというところ。アイデアそのものは悪くなかったと思う。Yahoo! JAPANに来ればワンストップでモノが買えるというのは正しかったが、統合プロジェクトそのものが巨大すぎて仕様がふくらみすぎたためモノが出なかった。

 「コア」と呼ばれたプロジェクトだったが、いまだに社内ではトラウマになっており、(新規案件の)仕様が多すぎると「それはコアらないですか?」と言われたりする。エンジニアの間では「コアダンプ」という言葉もあるので名前が悪かったんじゃないかと言われたりして(註:コアダンプはエラー発生時に出力するファイルのこと)。

 それでも若干の右肩下がりで済んだのはポテンシャルが大きかったためかと思う。


「無料化」「リユース」「スマホ」で攻めの体制へ

 プロジェクト中止の決定後、再始動しなければということで、2013年春に大きな変化があった。「福岡 Yahoo! JAPANドーム」の名称を「福岡 ヤフオク!ドーム」に変更し、みなさんには「ヤフオク!」と呼ばれていたので略称を正式名前に変更した。サービスのミッションも見直し、あらためてリユースであることを再確認した。

 その半年後、会社として大きな決断をした。Yahoo!ショッピングとともに、お客さんに対する摩擦をなくそうという目的のもと、各種手数料を無料化した。ヤフオク!では落札手数料の5%は引き続き残したが、5000円以上の落札に必要だったYahoo!プレミアム会員登録をなくしたのは大きかった。

 ようやくモノづくり体制が戻ってきたことでスマホアプリも強化した。

 当初はしょっぱい感じのアプリだったが、「これはヤバいね」というのでアプリ開発にリソースを集中させていろんな強化をしてきた。入れた機能で響くなと感じたのは、オークションで高値が更新されたとき、プッシュ通知からダイレクトに入札する機能。入札のコンバージョンに効く施策だった。


今後の課題はレコメンドの強化

 スマホも鍵だが、ヤフオクは商品数が多いので、探す人と探されているモノをマッチングするのが大事。レコメンドの強化もしっかりしていかないといけない。検索のアルゴリズムはもともとテキストマッチングだったが、最近は機械学習を入れて、クエリに対しておそらくこういう商品が求められているだろうという予測システムを強化した。よりCTR(クリックされる割合)が高いものを選んでいる。

 テレビCMなどのプロモーションも強化した。これまでプロモーションはあまりしてこなかったが、約7年ぶりに大きな宣伝をした。今までやっていなかった分、意外と数字に効いた。

 今では暗黒時代を抜け出して、落札額前年比約110%で成長できている。デバイス別のUUとしては、2014年9月くらいにはスマートフォンがパソコンを上回る状態になり、だいぶスマートフォン寄りのサービスになった。利用者数は約1000万人、常時出品数は約3800万点、取扱高は7300億円以上。


データベースの利活用がヤフー最大の強み

 これからはパーソナライゼーション・レコメンデーションを強化したい。データをもとに、気持ち悪がられないギリギリのバランスで、その人の興味に合っていそうなものをうまくミックスしたい。ヤフー全体として、メディアとして価値のあるレコメンデーションを提供したい。サービスの垣根を超え、コマースの情報もあり、ニュースの情報もありとミックスされたようにしていきたいと考えている。

 あとはいろんな商品の売買データがたまっている「リユースデータベース」がまだ活用できていないので、今後はリユース商品の適正価格を導くためにデータベースを使いたい。また販売チャネルも多様化させたい。ウェブでモノを売ることに抵抗がある人もまだ多い。リアルのチャネルも使い、簡単にリユースして、次の人に使ってもらえるようにすることで、リユース人口の拡大をしていきたい。


「三本の矢」で成長するヤフOFF!

 ミッションステートメントとしては2013年から「いつでもどこでも全ての人にリユースするワクワクを」ということを掲げている。重要になるのがリアルのチャネル。1つに、ブックオフコーポレーションと提携して開始した「ヤフOFF!」を通じた3つの取り組みがある。

 1つ目は、(商品が)より価値があると思う人に正しい値段で届くこと。そのボリュームを広げようとしている。ブックオフの店舗では周辺の商圏にしかリーチできず、そこに欲しい人がいなければ売れない商品も出てくる。ネットを使えば全国が商圏になるため、欲しい人に商品を届けやすくなる。

 2つ目はリアルのチャネルを増やすこと。ネットでモノを売ることに馴染みのない人もまだまだ多いため、リアルのチャネルでリーチしたい。渋谷のブックオフを「ヤフOFF! 渋谷店」としてリニューアルし、ヤフオク!の出品代行窓口を設けている。店舗に持っていけばヤフオク!で商品が販売できるという仕組みを実験的にやっている。

 そして「第三の矢」は(ヤフオク!とブックオフ)両者のシナジーを活かしてできることを、現在協議している段階。両者で面白いアプリが作れたらいいよね、という話なども出てきているところだ。


■関連サイト

カテゴリートップへ

ピックアップ