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これはすごいと話題になったベンチャーで2014年を振り返る モーニングピッチ西山直隆・協力

2014年12月29日 07時00分更新

盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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 今年もさまざまなベンチャーが革新的なビジネスモデルを引っ提げ、業界の話題をさらっていった。アクセス上位の記事でいえば「腕時計業界にベンチャー革命『ユニクロ式』で価格破壊」「クレジットカード決済手数料、ついに0%へ PayPal激怒必至の決済ベンチャー『SPIKE』、登録5万件あっさり突破」など。

 毎週木曜の朝7時、東京で開催されているベンチャー企業の集まり「モーニングピッチ」には、累計400社以上のベンチャー企業が登壇し、大企業と協業するチャンスを探っている。同会の主催は監査法人トーマツグループのベンチャー支援企業であるトーマツベンチャーサポートと野村證券。

 モーニングピッチ運営役である同社の西山直隆氏によれば、今年注目を集めたベンチャーには2つのトレンドがあるという。1つは東大、もう1つはリアルだ。西山氏のコメントとともに見てみたい。


東大ベンチャーが熱かった

AgIC:インクジェットプリンターで電子回路をコピー用紙に印刷できる、導電性インクを開発。メーカーが試作品を素早く作れるようになるのが売り。

スケルトニクス:人間の力だけで動かせるロボットスーツ(装着型外骨格)を開発して話題を集めた。エンターテインメント分野でのロボット受託制作を収益源としている。

MUJIN:既存の産業用ロボットを高機能化する動作制御ソフトを開発。「バラ積み」と呼ばれるパーツを1つずつつまみあげるような動作を可能にした。

FOVE:眼球の動きを追える世界初のヘッドマウントディスプレイを開発。フェイスブックが買収したオキュラスが先行する分野に独自技術で勝負を挑む。

ミスト・テクノロジーズ:「アクセスが増えるほど快適になる」という常識を逆転させるコンテンツ配信技術を開発。端末同士をネットワークするP2P技術を応用した。

coromo:スマートフォンのホーム画面を丸ごと切り替えるアプリを開発。ホーム画面をプラットホームに見立て「デジタルカード」と同社が呼ぶコンテンツを開発・提供する。

Re:Sound Bottle:3秒間までの環境音を収録して、自動的にリミックスを作り出す電子楽器を開発。「音を詰めるボトル」がモチーフになっている。

西山氏のコメント:

 AgICにしてもFOVEにしても、KDDI「∞(ムゲン)ラボ」第6回サービス発表会で優勝されたミスト・テクノロジーズにしても、すべて東京大学関連のベンチャー。東大は産学連携本部が知財や特許をたくさん抱えており、インテレクチャルバックヤードというアクセラレーション組織もある。

 また「アントレプレナー道場」という、すでに10回近くやっているイベントもある。初級~上級があり、上級になると2~3ヵ月かけてチームでビジネスを考えるというもの。メンターに証券会社・コンサル・監査法人などが入る。良い事業が出来たらUTEC(東京大学エッジキャピタル)につながっていく。

 投資会社としてはイーストベンチャーズや、エンジェル投資家としてはAccess創業者の鎌田富久氏(トミー・ケイ)も関わっている。トミー・ケイのポートフォリオはAgIC、モフ、アクセルスペースなど。圧倒的な技術力があり言語に関係ないようなもの、どんどんアメリカで規模を広められるような企業が集まっている。


リアルとつながるIT企業が熱かった

アズママ:子供の送迎・託児を知り合い同士で依頼しあうプラットホームを開発している。子育て世代の女性層を狙う企業のマーケティング支援が収益源。

カジー:クラウドソーシングの仕組みを使い、既存競合の半額以下となる1時間2500円の家事代行サービスを運営している。

エニタイムズ:IKEA家具の組み立てやお墓の掃除といった簡単な仕事を中心としたクラウドソーシング型の家事代行サービスを運営している。

ファクトリエ:縫製工場と協業してファクトリーブランドの衣料品を作り、ネットで流通させるオンラインブランドを展開。消費者の工場見学なども。

グローバルエージェンツ:ビル丸ごと一軒をシェアハウスにする「ソーシャルアパートメント」といった不動産サービスを運営している。

キッチハイク:観光客と、旅行先で家庭料理を作ってくれる一般人とを結びつけるマッチングサイトを運営する。家庭料理における「Airbnb」。

オリィ研究所:人工知能も音声認識も使わず、電話のようにコミュニケーションをとる道具として使えるコミュニケーションロボット「OriHime」を開発する。

西山氏のコメント:

 クラウドソーシングは動画制作など特化型が増えてきた一方、リアルとのかけあわせ、ローカライゼーションが出てきている。ある意味で映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で見られる懐かしいご近所付き合いの代替機能が、インターネット技術で実現するような世界が来るのではないか。

 アズママ、カジー、エニタイムス。IKEAで買った家具が組み立てられないなど、ローカルの人が助け合う。今までのクラウドソーシングはイラストやライティングなどネット上で終わるものが多かった。それが効率的だったが、あえてリアルを持ちこむことで世界観が変わりはじめている。

 リアルのコミュニティーも重要な鍵。ファクトリエでは工場ツアーなどを通じ、リアルの生産者と消費者をつないでいる。消費者は「この工程にこんなに時間がかかるんだ」と実感し、生産者にもプライドが生まれる。しっかりモノの価値が伝わることで、新しい文化や価値が広がっていっている。

 グローバルエージェンツは今まで流行しているシェアハウスをビル一軒まるごとシェアしてしまう発想。でかいリビング、でかいキッチンがあり、週末に集まって映画を見たり料理をしたりする。従来のマンション内でそんなことは起きなかった。

 キッチハイクは旅好きな人たちが集まって創業した企業。旅先で地域の人が家庭料理を作ってくれて、手数料を受け取るビジネスモデルになっている。日本人にとって1000円のランチと言っても大したことがないが、東南アジアの現地の人にとってはとても大きい。

 リアルとつながるハードという意味ではオリィ研究所。ロボットの力で当たり前の生活を過ごしてもらう。お母さんが右を向けばロボットも分身として右を向く。そばにいるようにコミュニケーションをとっていける。


 こうして振り返ってみた2014年のトレンドは、技術力があるハードウェアベンチャーを中心に東京大学から次々と有力株が輩出されていること、またスマートフォンの普及によりインターネットが現実社会を変えつつあるというのが重要なポイントだった。

 2015年以降は、ロボットや小さな電子部品のようにインターネットにつながるハードウェア製品が増えていくことで、インターネット企業が「メディア・小売業」の殻を破り、いよいよ新たな産業へと進化していく予感がある。来年はどんな「未来」が待っているのか、今から楽しみだ。


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