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東北大など、シリセンの電子状態を解明

二次元ケイ素構造「シリセン」に超高速電子デバイスの可能性

2014年12月24日 15時26分更新

文● 行正和義

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グラフェンは炭素で、シリセンはケイ素でできた平面構造。原子の違いにより、グラフェンでは平面状なのに対してシリセンは凹凸(バックリング構造)を持つ 

 東北大学は12月22日、グラフェンを越えると期待されている新材料シリセンの電子状態の解明に世界で初めて成功したと発表した。

 これは東北大学原子分子材料科学研究機構、豊田中央研究所などによる研究グループの成果。炭素原子が平面に並んだ「グラフェン」の研究は各所で進められているが、グラフェンはその電子構造にバンドギャップ(電子が持つエネルギー状態に大きな差がある状態)を持たないため、半導体素子としての利用には制限がある。これに対し、シリセンはケイ素で構築されたグラフェン状構造で、エネルギーバンドギャップや電界効果などグラフェンにはない性質を持ち、電子デバイスの可能性があるとされている。

 しかし単離したシリセン原子シートを合成することが難しく、これまで実際にどのような電子状態であるか解明されていなかった。研究グループではシリセンの原子シート間にカルシウムを挿入した化合物CaSi2を合成し、光電子分光という手法で電子エネルギー状態を調べた。その結果、シリセンにはグラフェンと同様にディラック・コーン電子状態を持つことが明らかになった。

ディラック・コーン電子状態。横軸(kx/ky)は運動量、縦軸(E)はエネルギー。運動量ゼロとなる領域が存在する(普通の物質には存在しない)。 

 ディラック・コーン電子状態は電子の質量がゼロとなる領域が存在する特異な電子状態で、この電子状態を持つことからグラフェンには通常の物質にはない電子・電気特性を持つとされる。半導体のような電子デバイスを作ることができるシリセンにディラック・コーンが存在することにより、超高速電子を利用した新しい電子デバイスを製造できる可能性があるという。

 研究グループでは、カルシウムの代わりに別の元素を挿入するなどしてシリセンの電気特性を探り、半導体デバイスの新分野の開拓を目指す。

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