スーパーKEKBプロジェクトによる改修工事中のKEKを取材
世界屈指のなんだか物凄いものが工事中なので撮ってきた
配置変更や新型の投入が目立つ加速リング
加速器のほとんどは、凹凸レンズに光を通すようにして、ビームを調整させて衝突点に導いていくための電磁石を中心に構成されている。電磁石は新しく作られた物の他にBファクトリー実験以前のプロジェクトであるTRISTAN時の物も多く再利用されている。陽電子ビームが走るパイプは電子雲の発生を抑制するために、新型のアンテチェンバー付ビームパイプに置き換わっている。
また下記写真では派手な色ばかりの電磁石が並んでいるが、これは研究者が設定しているものだという。新設されたものを見ると、いままでなかった紫色の電磁石が多く配置されていた。
加速器は、写真のように電子と陽電子用のラインが延々と続く
電磁石は形状がいくつか存在する。スーパーKEKBでは電磁石の形状として、2極(SN一対)、4極(2対)、6極(3対)、8極(4対)等が有る。写真は6極
アンテチェンバー付ビームパイプに置き換えられている
衝突点付近の電磁石は総じて紫ベース
衝突点付近の様子
NECトーキン製
左が電子用リングの電磁石系。右が陽電子用リングで、電磁石とARES空洞がこの直線部にある。てくてくと歩いてもこの光景が続く
電磁石の間からはこんな感じ。左が陽電子用、右は電子用
加速リングの途中にあるARES空洞。色が異なるものが見られるが、メーカーが違うとのこと
勝手にビール樽っぽいとか思っているのだが、かっこいい物体である
陽電子用ビームパイプに手巻きされたソレノイドコイル。電子雲除去を目的とする。1万個ほどあるそうな
地下~5mで生成された電子/陽電子は地下十数mのKEKB加速器へ駆け下りる。写真は陽電子用入射ライン
自作PC、とくにPCケース付属でお馴染みのSanAce製12cmファン。ビームが通過するチェンバーは発熱する。KEKB時代には主には冷却水で冷却するが、スポット的な発熱の冷却に活躍していた
大電力を生み出すクライストロン
電子ビームと陽電子ビームを加速させるための大電力を生み出すクライストロン。施設としてみると、派手な機器はないが研究のために必要不可欠の存在だ。クライストロンは、構造的には巨大な真空管(高周波の倍増管)で、出力は1本あたり(連続波出力で最大)100~120万ワット。
スーパーKEKBでは当初30本で開始し、最終的には32本まで増やす予定。同様の連続波クライストロンは放射光施設でも用いられている。なお変換効率が飽和領域では60~70%と高く(実際は55~60%で稼働)、さらに長寿命なのも特徴である。
工場感溢れるクライストロン。手前にある上下赤の縁取りをした黄色の筒がクライストロンソケット(中に本体がある)。電源棟内に数本が林立している
クライストロンが設置されている奥のスペースには、クライストロン用電源、高周波を加速空洞へ導く導波管系更に冷却用の設備がある
クライストロン電源の制御盤(操作パネル)。電源は東芝/ニチコン製。駆動時は中央制御室からリモート操作
東芝製のクライストロンを確認できた
やっぱり工場にしか見えないのだが、とても重要な施設だ。赤/黄のソケット上部はクライストロンのコレクター部。ここで大量の発熱が生じるが、蒸発冷却で効率的に冷却している
冷却用?の横長パイプ
クライストロンと導波管系が所狭しと並んでいる。サーキュレーター(黄)や付随するダミーロードも冷却が必要で、そのための配管等もある