このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

「Mobility Defined Network」とは―上海カンファレンスレポート

RJ-45は旧世代のもの?アルバが考える新時代の企業Wi-Fi

2014年12月15日 06時00分更新

文● 高橋睦美

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 アクセスネットワークの主役は、ワイアード(有線)からワイヤレス(無線)へと確実に移行している――。12月9~12日、米アルバネットワークス(Aruba Networks)が中国・上海で開催したプライベートカンファレンス「Aruba ATOMOSPHERE 2014」において、同社幹部らは繰り返しこの事実を強調した。その変化をふまえ、アルバはどのような無線ネットワークを展開しようとしているのだろうか。

「RJ-45を知らない世代」#GenMobileの台頭でワイヤレスが主役に

 アルバは無線LANアクセスポイントとそのアクセスポイントを一元的に管理するコントローラに加え、管理ツールの「AirWave」、バックエンドの認証基盤となる「ClearPass」といった製品群を提供している。

 かつてIEEE 802.11b準拠の製品が登場したころ、無線LANは、有線イーサネットで構成された企業ネットワークを補完するものとして導入されていた。だが、現在では「Wi-Fiはイーサネットを『置き換えるもの』へと変化している」と、アルバの社長兼CEO、ドミニク・オー氏は基調講演の中で述べた。

アルバの社長兼CEO、ドミニク・オー氏

 背景には、この10年あまりで起こったワークスタイルの劇的な変化がある。デスクトップPCに代わってノートPCやスマートフォン、タブレットといったモバイル端末が普及し、いつでもどこでもインターネットやクラウドを利用して仕事ができる環境が整ってきた。その結果、現在では毎日同じ時間にオフィスに出社し、自分のデスクで仕事をする必要性すら薄れている。

 24時間いつでもどこでも仕事ができ、高い生産性を発揮するこの世代を、ドミニク氏はGenY(Generation Y)になぞらえて「#GenMobile」と表現する。そしてアルバでは、#GenMobileたちが必要とする、安全で安定した無線ネットワークを提供していくという。

 アルバのワールドワイドセールス担当バイスプレジデント、ジョン・ディルーロ氏も、インタビューの中で「ことさらビジョンとして掲げるまでもなく、エンタープライズにおいて、ワイヤレスはセカンダリネットワークからプライマリネットワークになっていくだろう」と述べた。「ワイヤレスしか知らない世代である#GenMobileは、RJ-45ジャックが何をするものかわからないかもしれない」(同氏)。

アクセスネットワークではワイヤレスが主役に(赤が有線、青が無線の割合を示す)

 RJ-45ジャック、つまり有線イーサネットポートを持たないデバイスが社内に増えると、これまでのようにVLANベースのネットワーク管理やセキュリティを適用するのは難しくなる。そこでアルバでは、「Stable(安定)」「Secure(安全)」「Smart(スマート)」「Simple(簡素)」という、4つのレイヤから構成される無線ネットワークアーキテクチャを提供するという。

より安定し、安全で、スマートな無線ネットワークを

 「Stable」な無線の提供に向けて、ドミニク氏は「より高速で、イーサネットよりも伝送距離の長い802.11acに対応した新しい製品群をリリース済みだ」と語った。これまで同様、アクセスポイントの管理機能やネットワーク可視化といった機能をともに提供することで、ギガビット無線LANを「点」ではなく、安定した「面」として利用できるようにしていくという。

 アルバ創業者でCTOを務めるケーティ・メルコート氏は、無線LANが高速化し、デバイスの密度が上がれば上がるほど「キャパシティ」が課題になると指摘。そこで「複数あるアクセスポイントの中から、最も接続状態のよいものを選んで接続する独自技術『ClientMatch』によって、健全な接続状態を維持する」と述べた。さらに、第二世代の802.11ac「802.11ac WAVE2」では、マルチユーザートランスミッションによって、キャパシティをさらに拡大できるとしている。同社では2015年半ばに802.11ac WAVE2対応製品を投入予定だ。

 「Secure」については、モバイルやBYODの普及により、資産を囲い込んで守る「境界型セキュリティ」の限界が見えている。しかも、企業ネットワークの利用者は社員だけとは限らない。ゲストや期間限定の契約社員など、さまざまなユーザーがアクセスしてくる可能性がある。こうした環境では「規制線を引いて、そこで守りを固めるセキュリティではなく、交通整理的なアクセスセキュリティが必要だ。パケットレベルで文脈を判断し、ダイナミックにポリシーを適用する仕組みが求められる」(ドミニク氏)。アルバでは、統合認証基盤の「ClearPass」を通じて、認証や認可、アクセス管理といった機能を提供し、こうした要件に対応していく。

 無線LANはその仕様の中に、認証や暗号化といった機能が組み込まれているが、アルバではサードパーティのセキュリティ製品と連携することで、いっそうのセキュリティ強化に取り組むとメルコート氏は述べた。具体的には「ClearPass Exchange」を通じて、Mobile Device Management(MDM)の「MobileIron」やパロアルトネットワークの次世代ファイアウォール製品、あるいはスプランクのSIEM製品など、幅広いセキュリティ製品との連携を実現するという。

 3つめの「Smart」の意味合いについて、ドミニク氏は次のように述べた。「『Normal Air』は安定的にパケットを処理する。『Smart Air』はただきちんとパケットを処理するだけでなく、そのパケットの中に何が入っているか、どんなコンテキストなのかを把握し、それに基づいてインタラクティブに処理を行う」。例えば、同じユーザー、同じデバイスの通信だとしても、ビジネスの重要な音声通話は、他のアプリケーションのデータより優先するよう重み付けしたり、キャパシティを優先して割り当てるといったイメージだ。

 アルバでは、このSmartというコンセプトを、エンタープライズネットワークにとどまらず、パブリックな無線ネットワークにも適用することで、新たな「価値」を生み出せると考えているという。ユーザーのオプトインが大前提になるが、ショッピングモールや空港などで、ユーザーの位置を元にナビゲーションを行ったり、デジタルマーケティングを展開したり、逆に事業者側でスタッフの配置を最適化するといったイメージだ。同社はこれを「Mobile Engagement」というソリューションとして展開していく。

(→次ページ、無線ネットワークをプログラマブルにする

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ