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「高いパフォーマンス」だけではないメリットを強調、より幅広い領域への適用拡大を狙う

発売から1年、EMC XtremIO幹部「われわれの期待すら超えた」

2014年12月10日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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 オールフラッシュアレイの「EMC XtremIO」が市場投入されてから、11月で1年が経過した(関連記事)。今回、XtremIOの共同創設者であり、現在はEMCのXtremIO事業部門でエンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるヤロン・セゲフ(Yaron Segev)氏の来日にあわせインタビューを行い、XtremIOに対する顧客の反応や導入事例、今後の方向性などを聞いた。

EMC XtremIO事業部門 エンジニアリング担当バイスプレジデントのヤロン・セゲフ氏

XtremIOの提供するメリットは「高いパフォーマンス」だけではない

――EMCとして満を持してのXtremIO製品投入から1年が経ちましたが、市場の反応はどうでしょうか。

XtremIO発売時(2013年11月)の資料より。XtremIOは「X-Brick」と呼ばれるコンポーネントで構成される。1台のX-Brickは、2つのコントローラーとSSD×25本のアレイで構成される

InfiniBand(RDMA通信)により最大4台のX-Brickをクラスタ化できる。X-Brickを追加することで、容量およびIOPSがリニアにスケールする

 XtremIOは現在、オールフラッシュアレイ市場で“ナンバー1”の製品となっている※注。IT業界全体を見ても有数の成長を遂げる製品であり、EMC内部でもXtremIO事業部門が最も成長の速い部門となっている。
(※注:IDCレポート「Worldwide All-Flash Array and Hybrid Flash Array 201-2018 Forecast and 1H14 Vendor Shares」に基づく、2014年上半期のオールフラッシュアレイ市場売上シェア)

 顧客からの評価も高い。2四半期連続で、「顧客満足度」がEMCの中で最も高い製品になった。高速なI/Oだけでなく、安定性が高く、ミッションクリティカル領域でも使える製品として成功している。XtremIOは、オールフラッシュアレイに対する顧客の期待を大きく上回ることができたのではないか。

 EMCにおいても売上、導入件数、顧客満足度など、通常ならば実現に長期間かかる目標を2四半期で達成できた。(既存のEMCストレージ顧客ではない)新規顧客も多く獲得している。つまり、われわれ自身の期待値すらも超えたわけだ。

――好スタートを切ったわけですね。顧客満足度が高い理由はどこにあると考えていますか。

 それは、XtremIOが大きな「変革」をもたらす製品だからだ。IT部門が、ストレージだけでなくITインフラ全体に抱えているさまざまな“痛み”を解決できる。

 言うまでもなく、まずは非常に高速なパフォーマンスだ。企業にとって高いパフォーマンスは必須の課題であり、XtremIOはその要求に応える。ただし、パフォーマンスは幾つもあるメリットの1つであり、必ずしも最重要のポイントというわけではない。

 たとえば、企業にとってはキャパシティプランニングも頭の痛い課題だ。ストレージの導入時に、3~5年先に必要となる容量を予想してみても、実際には過不足が生じるケースが多い。XtremIOならば、必要に応じてビルディングブロック(X-Brick)を追加していくだけで、容量とパフォーマンスをインラインで拡張できる。このとき、拡張してもレイテンシが変わらない「“真の”スケールアウトアーキテクチャ」を備えていることは強調しておきたい。

 また、ストレージのレスポンスが常に予測可能(predictive)であることもメリットだ。企業は、これまでアプリケーションごとに用意されてきたストレージ群を統合したいと考えている。XtremIOの場合、特定のアプリケーションのためにストレージをチューニングしなくても、その要件に応じたレスポンスが得られる。

 企業では、あらゆるデータが際限なく増え続けるという課題もある。これに対し、XtremIOでは先進的なデータ削減のデータサービス群を提供している。インライン重複排除、圧縮、リライタブル(再書き込み可能な)スナップショット、シンプロビジョニングなどの技術を組み合わせて提供することで、用途によるが2倍から10倍、20倍もの大きなデータ削減率を実現している。

XtremIOが「まったく新しい使い方」を実現する

――オールフラッシュアレイと言っても、得られるメリットは決して「高いパフォーマンス」だけではない、と。

 もちろんパフォーマンスだけを重視する顧客もいるが、多くはない。データ削減、コンソリデーション、アジリティ……、XtremIOについては、「まったく新しい使い方」ができる点を高く評価する顧客が多い。

 スピンドル(HDD)からフラッシュ(SSD)へのストレージの変化は、音楽やビデオにおける“アナログからデジタルへの変化”に似ているかもしれない。それらの世界では、単にメディア、記録技術が変わっただけでなく、今までに出来なかった使い方が実現しているだろう。

 オールフラッシュアレイを導入している企業でも、まだ全データの7~10%程度のデータにしかフラッシュを適用していないケースが大半だ。つまり、高いパフォーマンスが必要なデータ(アプリケーション)だけに適用しているわけだが、実はそれ以外の領域でも、ストレージ統合やデータ削減などのメリットがある。

 ある顧客のケースだが、これまで(HDDベースで)数本のストレージラックを使っていたものを、1ブリックの(6Uサイズの)XtremIOに統合できた。多くの企業でこれと同じように、ストレージスペースや電力、保守コストの削減ができると考えている。

 また別の顧客では、リライタブルスナップショット機能を活用することで、とても効率的に開発テスト環境を用意することができるようになった。XtremIO独自のこの機能を使えば、パフォーマンスに影響を与えることなく、数千のスナップショットを簡単に作成できる。たとえばDBのレプリカを幾つも作ることなく、本番環境で使われているDBと同じものを開発テスト環境で使うことができる。

(→次ページ、顧客にはむしろ「そんなに安いのか」と言われる

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