パナソニックは、LED照明に関する取り組みについて説明した。
パナソニックのライティング事業は、2013年度の売上高が3225億円。そのうち、住宅用照明が約20%、非住宅用照明が約40%。そして、残りの約40%がランプ・デバイスとなっている。
パナソニック ライティング事業部R&Dセンター 光応用技術開発グループの請川信グループマネージャーは、「LED照明は、省エネ、長寿命、熱線紫外線レス、コンパクトといった特徴がある。
パナソニックでは、これらの特徴に加えて、小型回路や放熱設計技術、光学設計やレンズ材料技術、透明基板といったハードウェア技術と、光のスペクトル制御技術、光の色制御技術、光の時間制御技術、光の空間分布技術といった照明ソフト技術を組み合わせて、美光色、彩光色、アレンジ調色を実現。
光の質と空間価値の向上による需要拡大により、潜在的ストック需要を掘り起こし、設置されている器具のLED化率を引き上げていく」とする。
なかでも、光源のスペクトルを制御して対象物の見え方をコントロールする光のスペクトル制御技術は、美光色や彩光色の実現に重要な意味を持つという。
日本人女性にとって最も好ましい肌色
パナソニックでは、日本人女性にとって最も好ましい肌色の色度座標を心理評価値をもとに統計解析して、「PS」として指標化。PS値を高める設計を行なうことで美光色を実現している。
「好ましい肌の色の再現には、血液とメラニンの反射率が影響している。特に570〜580nmの波長域での波長成分を調整することが大切である」とする。
鮮やかさを定量化した独自指標の「FCI」
また彩光色の実現においても、鮮やかさを定量化した独自指標の「FCI」を用意。「生鮮食品や植物といった対象物の違いにより、好ましい鮮やかさが異なる。パナソニックでは、FCIにより最適な鮮やかさの導出と分光設計を可能にした」とする。
ここでも570〜580nmの波長成分を調整し、赤色光の発光波長をシフトすることで、食品や植物の色を好ましく再現できることを実証したという。
これらの技術は、本来の色味を引き立てる住宅用の「美ルック」(ミルック)、文字を見やすくする「文字くっきり読光色」、屋外用に暗い空間で明るく感じる「アカルミナ明光色」として応用されている。
時間や季節に応じた演出が可能になる「アレンジ調色LED照明」
さらに「アレンジ調色LED照明」では、時間や季節に応じた演出が可能になる照明で、自動車のショールームではクルマのボディは同じ色のまま、空間の光だけを変化させることができるという。
パナソニックでは、ここでも空間の明るさ感を示す「Feu」と、空間内のメリハリを可視化する「Modulation」という独自の指標を設け、それをもとに「明るく均一な空間」、「落ち着きの中にメリハリのある空間」といったように4つのタイプに分類。空間の印象をイメージ通りに仕上げる提案を行なっている。
集中力を向上させる「タスクアンビエント照明」
また、集中力を向上させるための「タスクアンビエント照明」の提案も行ない、適切な色温度と照度差によって作業者が集中しやすい空間とともに、「適所適照」による約40%の省エネ提案も可能になるという。同社では集中力を評価する独自ツールを用意。被験者からは「集中しやすい」「仕事がはかどる」「目が疲れない」という点で効果があったという。
さらに、色と空間分布の制御技術を用いることで、日中の覚醒度を高め、省エネも行なう「エコサーカディアン照明」も提案。午前中は色温度を高く設定し、午後には照度や色温度を下げることで、サーカディアンリズムをコントロールできるという。ここでも脳波やメラトニン分泌、深部体温といった生理評価、パフォーマンステストで効果が実証されているという。