マイクロソフトのOffice戦略が、今年3月以降、大きく変化している。
ひとつが、クロスプラットフォーム戦略である。
OS X用を除けば、従来はWindowsプラットフォーム上だけで利用することを前提としていたOfficeだったが、今年に入ってからiPadやiPhoneで動作するiOS版を無償で公開。さらに、Android搭載スマホ版も同様に無償公開し、2015年第1四半期にはAndroidタブレットに対応したOfficeも公開することになる。
もうひとつがエコシステムの拡大戦略だ。
これまでOfficeのAPIの公開は行なっていたが、ここにきて、Salesforce.comやDropBoxといった競合ともいえる企業とOfficeに関する提携を相次いで発表している。
Salesforce.comとは、Salesforceとの統合を実現するPower BI for Office 365/Excelインテグレーションを含む共同ソリューションなどを発表。DropBoxとの提携では、Dropboxに保存したOfficeファイルを直接編集できるようにするといった内容だ。
これらの一連の施策が開始されたのは、今年2月にサティア・ナデラ氏がCEOに就任してからのことである。
それまでのCEOであったスティーブ・バルマー氏の講演での決まり文句が、「Windows,Windows,Windows」であり、まさにWindowsプラットフォームを中軸としたビジネスモデルとしていたのに対して、サティア・ナデラ氏が経営の軸に据えているのは、「Mobile First,Cloud First」。
モバイルビジネスとクラウドビジネスを加速するためには、Officeのクロスプラットフォームや、新たなエコシステムの確立に乗り出し、Windowsプラットフォームにはこだわらないという姿勢が、この言葉からも感じられる。
マイクロソフトは、なぜこの取り組みに乗り出したのか
では、なぜ、マイクロソフトは、「Mobile First,Cloud First」の考え方をもとに、Officeのクロスプラットフォーム戦略と、新たなエコシステムの取り組みに乗り出したのか。
米マイクロソフト Officeマーケティング担当コーポレートバイスプレジデントのジョン・ケース(John Case)氏は、「Officeの最大の課題は、より多くの人にOfficeを使ってもらうという環境ができあがっていなかった点にある。それを解決するために、このふたつの施策に取り組んでいる」と語る(関連リンク)。
スマートフォンやタブレットの広がりに伴い、Windowsプラットフォームは主流の座を失った。すべてのデバイスを対象にすると、Windowsプラットフォームの市場シェアはわずか14%。残りは、AndroidやiOSが占めているのだ。
クロスプラットフォーム戦略は、従来のPC利用者、あるいはサブスクリプション版の利用者だけをターゲットとしていたビジネスモデルから、より多くの人にOfficeを利用してもらい、Officeの利用者数そのものを拡大するところに狙いがある。
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