ビジネスメールの役割を根本から見直し、コミュニケーション上の課題解消を目指す
社内の人間関係も解析!IBMが次世代メール「Verse」をデモ
2014年11月28日 09時00分更新
日本IBMは11月27日、来年(2015年)1月に提供を開始する新しい電子メールソリューション「IBM Verse(バース)」の国内発表を行った。同日の説明会では、関係の深い他の社員をピックアップする機能や優先度の高いメッセージを強調表示する機能など、Verseの特徴を紹介するデモが披露された。
Verseとは何か? メールボックス中心から“人/チーム中心”へ
Verseは、従業員の生産性を高めるためのインタフェースや機能、インテリジェンスを備えた、新しいコミュニケーションのツールだ。メール/チャット/カレンダー/アドレス帳などを統合する。Webベースのインタフェースのほか、iOS/Android向けのモバイルアプリも提供される。
ただし、あくまでも機能追加/強化のためのフロントエンドであり、既存のメールシステム(Notes/Domino)に新たなインタフェースの選択肢を増やした、という位置づけである。当然、従来のメールインタフェースを使ったり、Verseを使っていない相手とのメールをやり取りしたりすることも、これまでどおり可能だ。
説明会に出席した日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業本部長のヴィヴェック・マハジャン氏は、Verseの狙いはメールだけでなく“働き方そのものの変革”にあると説明する。
ソフトウェア事業本部の田崎慎氏は、Verseの狙いをより具体的に説明した。現在の企業では、従業員同士のコラボレーションを改善することで生産性向上を図ることが不可欠になっているが、各種コミュニケーションツールの乱立により「情報過多」という大きな課題が生じている。たとえば、あるアンケート調査では、メール/チャット/ソーシャルなどから流れ込む膨大な情報量に圧倒されて、「9割以上の企業従業員が『対処不可能だと感じることがある』と回答している」と同氏は語る。
「この課題をどう解決していくか、ツールに求められていることは3つあると考える。『業務のプライオリティを見極めること』、『“メールボックス中心”ではなく人やチームのコラボレーションを中心に考えること』、そして『すべてを一元管理できるコックピット型であること』だ」(田崎氏)
この3つの要件を見たすため、Verseでは(1)「重要なもの」をシステムが理解、サポートする、(2)メールやチャットなどを統合し、業務プロジェクトごとにワンルックで見られる、(3)デザインはチームでのオペレーションを前提とする、という3点を目指しているという。
個々のユーザーにとっての“優先度”を重視したデザイン
Verseの大きな特徴は、「ユーザー各個人にとっての優先度」を重要視したデザインだ。たとえば、これまでのメーラーのように時系列でメールを並べて見せるのではなく、優先度の高いメッセージを強調して見せる。また、アナリティクス技術をベースとして、過去のやり取りの履歴から業務上で関係の深い他のユーザーを解析し、すぐにやり取りできるような工夫もなされている。
デモでは、Verseのトップ画面に「自分が依頼されているタスク」「相手の処理待ちのタスク」「重要度の高いコンタクト相手」などが表示される様子が披露された。
コンタクト相手を選択すると、メッセージ送信の手段(メール、チャット、SNS)が選べるほか、その相手からのメッセージが一覧表示できる。デモでは、さらにそこから簡単に絞り込み検索(ファセット検索)をかけ、必要なメッセージを探す手順も紹介された。さらに、メールで届いたミーティングへの出席依頼を承諾することで、その予定がカレンダーに自動追加されるデモも紹介された。
Verseは現在ベータテスト版が提供されている。来年1月には価格などサービス詳細を発表するとともにSaaS版の提供を開始し、来年後半にはオンプレミス版でも提供を開始する予定だ。
さらに田崎氏は、Verseの今後の展望として、「IBM Watson」を用いた自然言語処理、アナリティクス機能の拡張などを挙げた。現在のところメール本文の解析による重要度の判断は行っていないが、利用者の許諾があれば、Watsonによるそうした機能の実現も考えられる。
「企業におけるメールには、コミュニケーションのボトルネックがある。Verseには、それを解消する価値がある」(マハジャン氏)