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記者の耳 ちょっとそこらで聞いた話

借金2億5000万円から出発、男性下着の世界ブランド狙う=イデアインターナショナル橋本雅治元代表

2014年11月23日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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 家電のイデアレーベル、オーガニックコスメのテラクオーレ。イデアインターナショナルはオリジナル雑貨の製造・卸売・小売で年間約50億円の売上をあげている。創業者は橋本雅治氏。1995年に創設し、13年後に大阪証券取引所で上場を果たした。

 おしゃれなイメージとは裏腹に橋本氏の半生は壮絶だ。実はイデアインターナショナル以前に経営者になった経験が一度あるのだと、橋本氏は11月16日に東京都が開催したスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2014」会場で語った。

 「父親の借金2億5000万円の連帯保証人になり、不本意ながら28歳で経営者になった」


31歳で役員街道、クーデターで起業を決意

 コピー機の営業マンとして勤務していたキヤノン販売を中途退職、稼業のホテルが抱えた借金に追われた。オーナーとして資金繰りや経費節減にあたり、経営の建てなおしに奔走。最終的には債権者に和議を申し入れて借金のカタをつけたのち、スポンサーを見つけ、経営権を委譲した。

 ふたたびサラリーマンの道を歩もうとメーカーに中途入社。借金整理で鍛えた胆力で出世街道を歩み、31歳の若さで役員の座を獲得した。

 ところがあるとき、他の役員たちが取引先と組んで社長を追い出すクーデターを起こしてしまう。新たに就任した新社長に魅力を感じず、起業を決めたのは34歳のことだ。

 退職前に担当していたのは時計事業。大手時計メーカーのものづくりが面白くないと反発し、イデアで消費者の感性に訴える時計を開発したいと考えた。しかし、前職の関係者としては面白くない。批判を受け、業界に悪評を流されたこともあった。

 それでも橋本氏は平然と事業を成長させてきたという。

 「最近気づいたがちょっとマゾ。逆境好きで、自分から逆境を選んでる」


頭を使って資金調達にサラ金使う

 逆境に立ち、頭を使ったのは資金面。

 創業当時はベンチャーといえばIT企業がほとんどだった。ものづくりには資金が必要だが、ベンチャーキャピタルやインキュベーターの仕組みは現在ほど整っておらず、銀行から借りるほかなかった。付き合いのあった銀行を口説くだけでは足りず、ときには消費者金融も使ったという。

 「サラ金は低所得者層を狙い撃ちにしたビジネスモデル。しかし、今日借りた金を今日返せば金利がゼロ。うまく使えばサラ金も使える」とケロリと話す。

 もちろん今は政府の中小機構やクラウドファンディングのような資金調達の仕組みも整っているため消費者金融にまで手を出す必要はそうそうないかもしれないが。

 「上場まではぼくがやりたいと思うことをやってきた」と橋本氏。失敗と成功を秤にのせて、成功に針がふれればいいという経営をしていた。ところがひとたび上場すると「リスク、リスク、リスク」(橋本氏)の世界。上場企業の経営には向いていないと、今年9月末に社長を退任した。


競合ない男性下着でグローバル目指す

 退任後も橋本氏は歩みを停めない。すでに次の構想に向けて動きはじめている。

 なんと男性向けの下着メーカーだという。女性下着にはトリンプなど大手があるが、男性下着には競合がない。「(男性は)こだわりたいのに、そこに下着がなかっただけの話。今まで履いたことのないような下着を作ってトップブランドにする」と豪語する。

 「来年に男性向けの下着メーカーを作り、3年で世界トップブランドにする。新たなグローバルに挑戦していく」(橋本氏)

 橋本氏の起業にかけるバイタリティーに心底驚かされる。男性向け下着にしても、前例のない事業を世界で通用させるには相当の困難を伴いそうだ。本人が言うとおり経営者は「ちょっとマゾ」くらいがちょうどいいのかもしれない。


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